『ダブドリ Vol.12』インタビュー03 米須玲音(日本大学)
2021年10月8日刊行の『ダブドリ Vol.12』(株式会社ダブドリ)より、米須玲音選手のインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。インタビュアーは米須選手と同郷のWリーグ理事・中川聴乃さんです。
昨冬のウインターカップで東山高校は準優勝に終わったものの、米須はその類稀なパスセンスでファンを魅了。特別指定選手として川崎ブレイブサンダースに入団して再びファンを驚かせると、進学した日本大学では早々にスターターに抜擢され、関東学生トーナメント優勝に大きく貢献した。その興奮も冷めやらぬ7月中旬、同じ長崎県出身の中川聴乃がそのプレーの秘訣と知られざる素顔に迫った。
中川 関東大学バスケットボール選手権大会、すごかったね。
米須 まさか自分たちでも優勝するとは思わなかったし、その日は実感が湧かなかったですけど。
中川 15年ぶりだからね。実は日大のインカレ優勝が、私の代が4年生の時だったんですよ。篠山(竜青、川崎)君が3年生で、栗原(貴宏、福島ファイヤーボンズアシスタントコーチ)君の代。
大柴 米須選手は篠山さんの大学の頃なんか知らないですよね(笑)。
中川 離れすぎてるからね。
米須 でも、トーナメントで竜青さんが4年の時にベスト4だったんですよね。そう取材の人から言われて意識したっていうか、超えたいなっていう思いはありましたね。
中川 B.LEAGUEでも少しだけマッチアップしたとは思うんですけど、河村(勇輝、東海大)選手とウインターカップ以来久しぶりにしっかりと対戦して、どうでしたか?
米須 大学でこんな早くに対戦できるって思っていなくて。でも、しっかり決勝まで行くことができて、東海大学さんも決勝まで上がって、そこでマッチアップするってなった時に、自分はずっと負けてばっかりだったんで「勝ちたい」という思いが本当に強かったです。
ウインターカップの時は自分が得点というかオフェンスのところで勝とうとした部分があったんですけど、今回は川崎で学んだディフェンスに力を入れて、オフェンスのことはあまり考えずにとりあえず河村さんを止めようと考えて試合に臨みました。何本かナイスディフェンスができた部分があってチームに貢献できたかなと思いましたね。
中川 結構ディフェンスに力を入れて練習に取り組んでいると感じました。監督からの指示なのか、自分で取り組みたいと話したのか、どうだったんですか?
米須 自分でも取り組みたいと思っていたんですけど、チームとしてもディフェンスに力を入れようということで練習が始まって、本当にこの3ヶ月間はディフェンスしかやっていないというぐらいでした。自分も川崎でディフェンスを学んで好きになったというか、元々は苦手だったんですけど頑張ろうと思えるようになりました。
入学する前は自分の中で「日大はオフェンスチーム」という認識があったんですけど、今年からディフェンスチームになって、自分は川崎で学んだことが生かせるんじゃないかと思って練習してきたんです。いざこの大会に臨んでそのディフェンスが発揮されたかなと思いました。
中川 そもそも、どんなことから「ディフェンスは苦手だな」って思ったんですか?
米須 得点を取りたいとかアシストしたいっていう思いが強すぎて、ディフェンスで体力を消耗したくないと考えてしまいがちでした。高校の時もディフェンスは他の選手に任せっきりというか、任せて自分がオフェンスで流れを変えていくっていう発想だったんですけど、大学に入ってからは自分がディフェンスで流れを変えていくっていう意識になりました。周りの選手もオフェンスができる選手ばっかりなのでそこは任せて、大事な時になったら自分が攻めればいいかなと今は考えています。ディフェンスが好きになったというのはそれかなと思います。
中川 トーナメント決勝、私も見てたんですけど、マッチアップのところで振られずについていってたなって。高校の時もある程度守れてたんですけど、どちらかというとやっぱりオフェンスの中心だったから、「なんだ、守れるじゃん」ってちょっと思っちゃいました(笑)。
米須 そうですね(笑)。たぶんやらなかったというのも一つあるかなって思うんです。やればそこで体力消耗されるけど、止めることによって河村さんが得点を取れないと東海大学さんも流れに乗っていけない。前日の準決勝を見てたら河村さんが一番点数を取っていて、そこを自分が守らないと勝てないかなと思ったんで、本当にディフェンスだけに集中して試合に挑んだというのがありますね。
中川 高校2年生ウインターカップでのマッチアップから2年。河村君の伸びしろ、自分自身の伸びしろは、実際にマッチアップしてみてどう感じましたか?
米須 高校の時は本当に河村さんが一人で得点を取っているという印象だったんですけど、大学に入ってからは自分で点数も取りつつアシストもして、またディフェンスもするっていう、全体的にチームの周りの選手を生かせてるというのが本当にすごいです。高校の時は点数取るばっかりっていうのが、僕がマッチアップした時の印象だったんですけど、周りの生かし方というのが大学に入って河村さんは伸びたかなと感じました。
自分は河村さんも止めながら周りの選手を止めるというのは絶対できないと思っていました。そこで河村さんのアシストや得点を止めることができれば周りの選手は生かされてこないと考えて、自分がプレッシャーをかけて河村さんがやりたいようにやらせないというのを一つの目標にやってきました。試合の中でも何個かターンオーバーを誘ったというか、自分もここに出すだろうっていうところで河村さんも出してくるっていうのは前からずっとわかってたんで、そこを読みながらやってましたね。
中川 やっぱり相変わらずビデオを見て研究してるんですか?
米須 だいぶ研究してますね。特に河村さんはディフェンスの圧がすごくて、いつでもボールスティールを狙ってるっていうのがあったので。どういう時にスティールを狙ってくるかっていうのを、高校1年の時にウインターカップで初めて対戦してからずっと研究してきて、大学で生かせたかなと思いますね。
中川 米須君もそうなんですけど、河村君がすごく体が変わったなと思っていて、あれって実際プレーにしていても感じます?
米須 抜こうって思っても当たっていくと硬くて抜けないというか、はじき飛ばされはしないまでも守られてしまう。行ってもファウルをもらうことがあまりできないと思うんで、そこは駆け引きで勝っていかないといけないかな。少しのズレを見つけ出して、そこを抜いていくしかないとは考えましたね。
中川 米須君も川崎に入って、通用する部分と、なかなかプロの世界ではやりたくてもやれないプレーとかあったと思うんですけど、大学に入って3ヶ月でどのへんを大きく学びましたか?
米須 やっぱり簡単にシュートを打たせてもらえないですね。ピックを掛けてもらった時、ワンテンポ置いてでもシュートを打てていたところが、速いモーションで打たないと、後から来るディフェンスにチェックされてしまうことが大学に入って何回かありました。もう少しモーションを速くして、ピックした後に自分が打てる体勢を作っていかないといけないなと思って、今3ヶ月経ったんですけど速いモーションで打つことは心がけていて、そこはできてきてると思います。
中川 アシストは、小さい針の穴ぐらいの隙間を通すように狙って、B.LEAGUEでも通用してた部分だなって思ったんですけど。
大柴 (ニック)ファジーカスが「お前のパスセンスはB.LEAGUEナンバーワンだ」って言ってくれたそうですね。
米須 ニックが認めてくれたというのは本当に嬉しかったですし、もっと出してやろうという気になりました。アシストはプロの世界でも通用するということはわかって、大学でも生かせていけたところはあったかなと思いますね。
中川 ゴール下にスパーンって入るのなんか、見ててめちゃめちゃ気持ちいいですもんね。
大柴 気づいたらあのプレースタイルだったんですか?
米須 なんか見えるというか、出すときに「ここ空いてるな」って見えてます。あまり意識はしてないんですけど、ボールもらう前に「もらったらこう自分が動いて、こうしたら絶対あそこに通るだろうな」と予測をしながら出そうとはしてますね、いつも。
大柴 もらう前から始まってる!
中川 高校の時はジャンピ(ムトンボ・ジャン・ピエール)でしたけど、今回コンゴロー(デイビッド)選手と一緒にやってみてどうですか?
米須 タイプは違いますね。ジャンピはポストプレーではあまり1対1を仕掛ける選手ではなくて、ピックからの合わせ、自分がパスをここに出したいという思いをちゃんとわかってくれていたというのがあったんですけど、デイビッドに関しては体が強くてポストプレーの1対1がうまい代わりに、ピックして合わせるということはなかなかできない。最初は合わせることが難しかったんですけど、自分がこうするからここで取ってほしいって伝えたら、そういうふうに動いてくれて自分もアシストできるようになりました。まだできてない部分が結構多いんですけど、この間の試合ではなるべく自分のほうを見て「パスが来るだろう」って思いながらプレーをしてくれたんで、何個かいいパスは通せたかなと思います。
大柴 あまりオンボールのピックに来ないのは、練習からまだうまくいってないからということですかね?
米須 いや、練習のときはうまくいくんですけど、自分が中で攻めたいという思いがデイビッドは強くて、あまりピックに来ないんです。
大柴 そういうことなんですね。ヘッドコーチから指示は無いんですか?
米須 特にないですけど、ピックに頼りすぎないようにしろとは言われてます。だから、あまりピックに来ない。でも、もう少しピックを増やしていけば、相手がどう止めたらいいかわからなくなってくると思います。これからまたリーグ戦も始まってくるんで、そのピックの精度を上げていけばもう少し良くなるんじゃないかなと思います。
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このあとも、プレースタイルを形作ってきたものや、日大での練習環境について語っていただいています。パスが得意な米須選手が自分でもびっくりしたパスとは......?続きは本書をご覧ください。
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