『ダブドリ Vol.10』 インタビュー05 比留木謙司(トライフープ岡山 GM) & 仲西淳(ライジングゼファーフクオカ GM)
2021年1月22日刊行の『ダブドリ Vol.10』(株式会社ダブドリ)より、比留木謙司さん&仲西淳さんのインタビューの冒頭部分を無料公開いたします。進行役はダブドリ初登板⚾の上田まりえさんです。
多くのクラブでGMの顔や名前があまり知られていないBリーグ。そんな中にあって異彩を放つ若手GMのお二方に迫ります。
上田 そもそも「GMとは何ぞや?」という方も多いと思うんですよ。GMと言われて思い出すのがアメリカの映画などで、日本では「GMと言ったらこれ」みたいな共通のイメージは無いですよね。
仲西 時期によっても仕事の配分がだいぶ違ってくるんですけど、やっぱり一番大事なのはオフシーズンのチーム編成。
比留木 そこが一番華やかだし、みんなが考えるGM像はそこでしょうね。
上田 GMの方の名前がよく出るタイミングでもありますよね。
比留木 そうですね。それに僕らが責任を問われるところでもあります。やっぱり勝った、負けたがある世界ですからね。
上田 お二人それぞれ、GMとして具体的にどのようなことをやっているか、お聞きしたいのですが。
比留木 僕は、今は人材の採用および配置がほとんどですかね。先ほど、仲西さんがおっしゃられてたように……まあ淳でいいか。
上田 ハハハハハ。
仲西 仲西さんは気持ち悪い(笑)。
比留木 先ほど淳が言ってたように、選手編成。あとは社員の採用も僕がやっています。
上田 え、社員もですか。
仲西 すごいね。
上田 履歴書の段階からご覧になるんですか?
比留木 そうです。
仲西・上田 へえ!
上田 見るポイントを教えていただけますか。選手と、会社で働く仲間とでは違うと思うんですけど。
比留木 共通してる部分ありますよ。どれだけ仕事ができても、どれだけバスケットのスキルがあっても、人間性が良くないと100%採用はないところ。
上田 人間性とは、特にどの辺りを重視して見ているんですか。
比留木 まず仕事に対してのプライド。あとは僕らはスタートアップのクラブなんで、そこを理解した上で前に進む力を持っているどうか。岡山の場合はオフィスの中に豊富に人材がいるわけではないんです。あれがない、これがないってワアワア言ってる間にも、どんどんシーズンは進んでいく。僕の中では現場、チーム側よりもオフィスのほうが目まぐるしいという意識があります。体育館を抑えなきゃいけない、ボランティアさんをどうにかしなきゃいけない、行政との折衝をいつまでに終わらせないといけないと色々やることがある。ガタガタ言うなとは言わないけど、ガタガタ言いながら働いてくれる人じゃないと困ります。
上田 ハハハ。
上田 比留木さんは最初、選手とGM兼で岡山に入ってらっしゃいますよね。選手とGMを兼任していたとき、大変ではなかったですか。
比留木 正直難しかったです。
上田 比留木さんの中で何が難しかったのですか。
比留木 ヘッドコーチの扱いが難しかったです。選手としては、ヘッドコーチのやりたいことを理解して同じページの上に乗っかって進まないといけない。それはバスケットの完全な共通理解であって、異論を挟む余地がないと思います。例えば、1から100のスケールで60ぐらいの力しかない戦術を選手全員が一枚岩になって遂行するチームと、グレッグ・ポポビッチさん(サンアントニオ・スパーズを5度の優勝に導いた名将)が描いた戦術を日本の選手たちに落とし込んだけど、60パーセントしかそれを遂行できないチームであれば、絶対に前者の方が強いんです。
上田 そうなんですね。
比留木 だけどGMとしては、ヘッドコーチがやっていることに口は出すんですよ。僕は12年間やってきた中で、勝率のいいチームにも属してましたし、悪いチームにも属していました。年数でいえば、12年間の中で8年間ぐらいは、悪いチームのほうが多かった。だから、チームが崩れる予兆とか前兆が見えるんです。
上田 こうなってくるとちょっとやばいぞっていう。
比留木 言うこと聞かなくなるよとか、プレーがうまくいかなくなるよとかいうのがわかる。でも、選手としては本来は口を出したくないんです。ヘッドコーチに「イエッサー!」って言ってプレーしたいんです。
上田 でも、選手だけどGMなんですもんね。
仲西 バランスが難しいよね。
比留木 そこはちょっと難しかったです。選手兼GMはもうやりたくないな。
仲西 何か言葉を添えたりするの? 話してるときに「今あくまでも僕はGMとしての立場で言ってるから」とか。
比留木 言う。でも練習中はほとんど言わない。顔にも出さないように努力する。
上田 へえ。難しい。
比留木 せっかく『ダブドリ』なんで、爆弾を落としましょうかね。
上田 あら?
比留木 今の日本のバスケットって、正直B1とB2のトップいくつか、もしくは真ん中ぐらいまでいったら、その下のヘッドコーチは、素人みたいなもんだと思ってるんですよ。
上田 ほう、ほう、ほう。
比留木 素人って言い方はよくないな。力量がまだそのレベルに達してない、スタンダードがすごく低いと思ってる。
上田 それはやはりアメリカに行くなどといった経験があるからそういうふうに感じるということですか。
比留木 というより、彼らの経験不足が一番ですね。やっぱりヘッドコーチって、リーダーシップを出すのもそうだし、僕自身コーチになってみて思いますけど、引き出しの多さっていうのがすごくダイレクトに跳ね返ってくる。ゲームにも跳ね返ってくるし、選手のリスペクトにも跳ね返ってくる。引き出しが少ないと選手は「何だあいつ、こういうときに答え持ってないじゃん」と思う。だけどマーケットに余っているのは経験が圧倒的に足りないコーチなんですよ。B3だとそういうコーチしか採れない。
仲西 うん。
比留木 例えばうちにペップ(ジョゼップ・クラロス。現ライジングゼファーフクオカHC)がいたら、僕はそんなに言わないでしょう。彼が今まで培ってきたものであったり、彼が日本で成し遂げてきたことに対して、リスペクトを払えるから。でもB3で今雇えるコーチとなると、ちょっと方向付けは必要かなと思ったり。でもこんなこと言っちゃうと、もう二度とうちにヘッドコーチが来なくなっちゃう。岡山に行ったらあいつに口出されるみたいな(笑)。
上田 自ら営業妨害(笑)。
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この後も、チームの育て方や選手契約の難しさ等について語ってくださっています。続きは本書をご覧ください。
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