【日本代表壮行会に潜入】トークでは女子の圧勝ムードも、あの男が待ったをかける!
先日の強化試合を取材して改めて思ったのが、
男子日本代表のスポークスマンって、ホーバスさんだよな。
ということだ。コート上でも会見でも「主役は選手」という状況が健全な気はするが、仕方ない。ホーバスHCはユーモアとサービス精神を兼ね備えている。自然と質問が集中するから、北海道ではわざわざ司会の方がホーバスHCへの質問を打ち切り、選手への質問を募集したぐらいだ。
選手に目を移すと、おそらく協会的に前面に押し出しているのはキャプテンの富樫勇樹と、これからしばらく代表の顔になりそうな河村勇輝の2人だろう。この2人はバランスがいい。富樫はベテランだけにトークが軽妙で、ジョークを交えつつも締めるところは締める。一方の河村は基本的に置きにいくようなコメントが多い。ジョークで攻めたりはしないものの、真面目な記事を書くにはちょうどいいコメントをくれる。
ホーバスHCと富樫勇樹に河村勇輝。もしくはそのどちらかと河村勇輝だと非常に収まりがいい。
じゃあ喋れる2人がいない時はどうなのよ?
……そんな疑問を胸に、私は壮行会へ向かった。
バスケットボール選手は当然のことながらバスケットボールのプロであって、トークのプロではない。壮行会の会場はオープンな場所で人だかりもできていただけに、入場時の選手たちは若干緊張の面持ちを浮かべていた。しかも、最初は試合の振り返りやファンの声援についてなど堅めのテーマだったこともあり、トークセッションはなんだか厳かな雰囲気で始まった。
この空気を打ち破ったのは宮崎早織だった。
副島「宮崎選手、2回目のオリンピックですが、気持ちの面で変化はありますか?」
宮崎「めちゃめちゃあります。東京オリンピックの時は正直お客さんというか、若かったのもあるので選手たちをベンチで応援するという立場だったんですけど、3年経って主力で試合に出るようになると、今からでも吐きそうなぐらい緊張しますね」
副島「ちょっとおトイレの導線だけ確認してもらっていいですかね。今から行くかも知れないので」
さすが女子日本代表の切り込み隊長、SNSでも存在感を出しまくっている宮崎だ。自分の言葉で語れるし、ツッコミどころも用意してくれる。
しかし、その後続いた男子選手は河村勇輝、富永啓生共に当たり障りのないトークでインパクトを残せない。やはりホーバスHCか富樫主将がいないとダメなのか。そんな不安が頭を過る中、奮闘したのが金近廉だった。
まずはオリンピック経験者・高田真希から男子への「今はしっかりハードワークして、本番は楽しんでほしい」というアドバイスを踏まえて。
副島「金近選手は大きい舞台で楽しめる方ですか?」
金近「いや、ちょっと、楽しめないと思います(困った顔で)」
副島(爆笑)
さらに、隣に座る高田真希のすごいところを聞かれると、バスケ的な話を一通り褒めた後、
「さっきのリアクションみたいに、バスケだけじゃなくてバラエティとかにも出られてますし、そこは河村選手にも見習って欲しいなと思います」
と先輩いじり。これにテレビでも大活躍の高田が呼応する。(金近は)河村選手と言っていたが金近自身の言動に注目したい、と宣言した上で金近のこれまでの活躍を称えると、
「(金近は)ジェントルマンなんですよ。さっきエレベーターで降りてきたんですけど、ちゃんとレディファーストしてくれました。ボタンを押さずに手で(扉を)押さえてくれて、めっちゃ通りやすかったです」
とエピソードを披露した。
プロ選手にとって、トークセッションは本分ではない。それは重々承知している。しかし、こうしたイベントのちょっとした言動がメディア、特にテレビ局や新聞などのマスメディアに拾われることで、注目度は上がっていくものだ。オリンピックを控えるこの時期はどのスポーツにとっても大事だし、殊に数年前までマイナーだった立場からメジャーへ駆け上がらんとするバスケにとっては、非常に重要な機会だと言えよう。
それを知ってか知らずか、しっかりと爪痕を残したこの日の金近廉は天晴である。選考争いでは崖っぷちのかねちーだが、韓国戦での彼の活躍を期待したくなる壮行会だった。
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