「その遵法性はすでに考えた」2024年6月20日の日記
・探偵小説を読んでいると、頻繁に「密室」に遭遇する。密室とは外界と行き来する手段が絶たれた空間を指し、ここで明らかな他殺体が見つかったりすればミステリーの始まりである。古今東西の作家が密室を使った殺人アイデアをひねり出してきた。
・密室トリックで最もスタンダードなのは、おそらく糸を使った細工である。犯人が被害者を殺害したあとに扉を閉める。この時点では内鍵はかかっておらず、密室ではない。しかし、犯人があらかじめ仕掛けておいた輪っか状の糸を引っ張るとドアの出っ張りに引っかかり、内鍵がロック状態になるのだ。
・現実にも可能なトリックではあるが、あまりにも古典的で、これをメインのトリックとして使う作家はもはやいない。とはいえ探偵は、ありうる可能性の一つ一つを潰していって、最後にひとつだけ残る可能性にたどり着く。もし「糸を使ったトリックが可能である」となれば、推理が一本道ではなくなってしまう。
ここから先は
1,735字
/
1画像
スキを押すとランダムな褒め言葉や絵が表示されます。