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「カルト村の祭りを見に来ただけなのに」2020年2月21日の日記

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・朝。もはやこれは朝の範疇なので、超短めにしてしまおう。


・先程レイトショーで『カルト村の祭りを見に来ただけなのに』こと『ミッドサマー』を観てきた。『へレディタリー/継承』に引き続いて、アリ・アスター監督による渾身の傑作だった。

・私の映画の評価基準には「異様な風景を作れているか」というのがあって、少しくらいシナリオがまずくても見たことない変な景色が見られたらそれだけで100点つけたくなるんだけど、その基準だけでいえば12000点くらいになってしまう。

・公開されたばかりなので内容についてはなんとも触れられないけれども、前評判通り、かなりえげつない内容。グロテスク描写は直接的だし、性的な描写もある。そういうのが苦手な人は観れないと思う。あと精神が不安定な状態で観ると引きずるかもしれない。

・ただ、たとえば死体ひとつ映すにしても、ほかのホラー映画とはぜんぜん映し方が違うので、抱く印象も全く異なる。無残な姿を映すなら普通は「出た!」みたいな効果音やカットのつなぎで観客をビビらせるところ、アリ・アスター監督の撮るショッキングなシーンは、前のシーンと地続きに「そこにあるもの」として撮っている。それはさながら、歩いていたら見つけた赤い塊が、轢かれた鳩だったと気づいたときのような感覚を呼び起こす。叫び声を上げたくなるような怖さではない。

・つまり観客に考えさせるのが爆裂うまいのだ。どのシーンの怖さにも、観客が能動的にそれを発見してしまったと思わせるテクニックが使われている。体験は、与えられたものよりは自分で手にとったもののほうがより強い印象として残る。それが「トラウマ映画」とか言われる理由なのかなと思った。プロット自体は意外と単純で、展開が二転三転して観客を驚かすような話ではないのだが、むしろ先がある程度見えるからこそ「嫌だなぁ」という、予感を働かせる機能がフル回転する。常に物語の2歩先と20歩先が見ている感じ。そのあいだの暗闇を勝手に想像して、嫌な気持ちになってしまう。次回作も楽しみだ……。

・正直、ホラー要素が皆無の恋愛映画とか撮っても相当イヤなもの作れると思う。

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