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自由連想法による文章練習【14】

 ガガンボではない小さい蛾のようなやつに左目とメガネのあいだをバタバタされて目覚めたのはもうけっこう前の話で もちろんつけっぱなしだった電気とぼくがその後どうなったかはだからもうまったく思い出せず ぼくはきのう妻とはじめてお日様にいった そしてほとんど阿佐ヶ谷の北原荘以来にグレンフィディックを飲んで感動し 帰りにバッタリ会った淳と8月15日以降に奥入瀬渓流にいく約束をした 野球は弘前が負け 酔いつぶれて「せっかくグルメ」を見逃し 黒くなったバジルはやっぱりぜんぶ捨ててしまうことにした 中田からの電話はたぶん今日もこず 寝て起きてまた寝て起きた後 家賃の支払いを思い出し フジワラではなくトーエーにいく予定をそのまま貫き 歩き出したらあまりにも体が重かった というか嘔吐の可能性が無きにしもあらずな状態のまま洗濯物をたたみ 大宮への電話はべつに明日でもかまわなかったがしたところ 通話料が200円もかかってしまい 付け合せの野菜はカリフラワーがなければブロッコリーではなくズッキーニにすることにし 髪は一応ちゃんとセットすることにした 髭もティッシュ1枚分だけ抜くことにし また少し晴れてきたのがなかなか嬉しかった 風はほどよく弱く 新町の八百屋にまで行こうかとも一瞬思い 念のため折りたたみ傘をもって外にでたらいっそう晴れてきて 胃もたれ中の胃にもろに日差しが直撃したことはむしろ気持ちよかった 上空の雲は光っていて 水が出ていない噴水とその後ろには虫取り網をもったサヤくらいの4,5人の女の子たちがいた チューリップの跡地にはマーガレットが敷き詰められ カラスの子供が完全に独り立ちするにはまだあともう少しかかりそうな感じだった ぼくの下北沢の家は2つあって その最初の1つを契約した日は大雨で 風呂は小川先生や泉雄介に借りたりした 新宿もあいかわらず暑そうで 1年を通して総じて住みやすいといえる場所がもはやどこにもないとすればむしろまた阿佐ヶ谷か北沢周辺に住みたいとも思っていて 松がどうなったかはもうまったくわからず 唐組の芝居をむしょうに観たくなり だから勝又とはたぶんではなくもう二度と会わないことをいま一度確認した 寝台列車の鏡のなかの自分に我ながら惚れ惚れし 「われに百難を与えよ!」的に高揚した翌朝の新宿はもうすでにかなり暑く その東京のはじまりから17年後にぼくは東京を出て妻と二人で仙台に引っ越した 東京での17年間ぼくはほとんど毎日1日2回以上飯を食っていたが今は1日1回で といっても料理をしながらちょっと多めのツマミ食いはほぼ必ずするとはいえ 体重は10代の頃より5キロ以上も少なく 昼間は書き物や昼寝をするなりとにかくいられるだけ家にいようと思った 暑いとはいえ扇風機をつけるまでではギリギリなく 扇風機をもう1つと除湿機があればこれ以上でもなんとかいけそうな気がした 刺激についていえばむしろもっと少なく要は地味を目指したほうが生活はきっともっと楽しくなるはずで たとえば今のぼくを救ってくれている1番が毎日の拭き掃除だとさえいるかもしれず 20年前のぼくにはそのことがもちろんまったくわからなかった 首に氷を巻きさえすればまだ十分集中力を保てると思ったとおりにほぼなったとはいえ 今のぼくが書くために必要としているのは集中力というわけでもなく 仮にアクアパッツアが失敗したとしてもだからあまりへこまないようにしようと思った 結局のところぼくは頼られていて そもそも誰かに頼れる性格でもなく ぼくのイバラの道は少なくとも一区切りはついており 明日は冷やし中華とヒジキと鶏大根的な感じにしようと思いながら 空腹がもたらす体調の良さにあらためて気づいた だから夜のぶんのプランクとストレッチもやってしまおうと思い とりあえず体重をはかったら67.8キロで Tシャツは深緑のガラガラセブンを着ていくことにした お目当ての真鯛がトーエーになく 昨日中に買っておくべきだったとはいえ いったん家に戻るつもりだった予定を端折れたのは嬉しかった そしてそのまま堤川を進むカヌーと同じ八甲田山にむかって自転車を走らせたぼくはやがて道に迷い たまたま見つけた真っ赤なトタン壁の家にけっこう本気で住みたい気がした 一方で純平の2回目の家を見つけることはできず 目印になってくれたセブンに感謝しながら クオカードがまだまるまる3千円分残っていたのを思い出し そのクオカードがちゃんと財布に入っているかを確認するためにわざわざ自転車をとめ そのあと妻に会うまで自転車のチェーンが約5回もはずれた といっても中三の手前でちょうどよく妻と鉢合わせ しかも妻が電話で話していたより深刻な状況のようには少なくともぼくには思えず だからぼくは妻にあまり余計な心配はするなといった しかしいざやってみるとまあまあ疲れたそのせいで母に珈琲をつくるのが面倒くさくなり そのかわり買った80円くらいの珈琲を母はふつうに美味しいといった そしてそのお返しとして洗剤とファブリーズの詰め替え用と揖保乃糸とマカダミアナッツの9粒しかはいっていないらしいチョコレートを買ってもらい 「そういうことだからお母さんもいつ死ぬかわからないから」といった母に「気をつけて帰れ」と3回いった 母によると父は酒が飲めない日もありもういつ死んでも本当におかしくないようで ときどき母に謝ったりもするらしく 寝不足の母を不安げに見送ったぼくは やはり一刻もはやく父が死ぬよりほかに打開策はないとあらためて強く思った というかいい加減殺してしまいたいとさえも相変わらず思い しかしたぶん本当にもうすぐ死んでくれるだろうの予想がそのとおりだいたい三カ月以内くらいにそうなってくれることをいつも以上に強く願った といっても前澤さんから1億円くらいももらえればこれほど強く父の死を願う必要はなく その可能性がゼロとはいえないと思う自分がとても懐かしかった しかし最近のぼくは世界が楽園に近づきつつある気が本気でしていて 楽園の完全とひきかえに世界が滅びることも一部で思い とにかくぼくは前澤さんのことをぼくのような人間だからこそむしろ擁護したくなる存在のような気がして ぼくの井の中の蛙的劇がこのまま死ぬまで終わらないかそうでないかはだいたい五分五分くらいだろうと適当に予想した それからぼくはベケットの217ページをひらき そこにあった息子との会話を予定以上に読み進んだものの相変わらず内容はぜんぜん頭にはいってこず「口が臭いぞ」でクスッとした その後息子は自転車を買ったか自転車に乗ったかしたようで ぼくはしかしすでに目が回ってしまい 妻のきなこサブレだったかそんな名前のセブンのスイーツをつい食べてしまったリスクほどそれがあまり美味くなかったことを思い出してしまい ただそのヤケクソ的な勢いにまかせて少なくともストレッチはやってしまえそうだった そう ぼくはそしてストレッチをしてふたたびカリモクにもどり シメジとカイワレとピンクグレープと炭酸水もやっぱり買うことにした 髪をセットするかは微妙というかセットしなくていいに越したことはなく それにしても蒸し暑く 前髪をほんの少し切り 鼻のあたまの脂をゴミ箱からひろったキレイめのティッシュで拭いたこの今の自分を誰かが覗き見しているとしたら 今はだから剛力ちゃんがもっとも適当だろうと思った 

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