スポーツクラブは、スタジアム一体型経営を行うべきか。-東京ドームの収益をみて考える-
スポーツは人を集客できるコンテンツです。ならば、集客の敷居を下げ、周辺ビジネスでマネタイズを図るという自然な発想が生まれます。
しかしながら従来、チームクラブのオーナー企業がスタジアムの所有権と権利から生まれる収益を獲得できる立場になく、マネタイズの方策は進んでいませんでした。ゆえに、スタジアムという初期投資ビジネスに資金投下されず、魅力あるスタジアムが生まれない、という構造的な問題を抱えていました。
スタジアムの収益構造とはそもそもどんなものかに興味を持ち、その王様である東京ドームの収益性を調査することにいたしました。
(株式会社東京ドーム決算発表より引用)
ざっくり、東京ドームシティ事業について
株式会社東京ドームシティは、意外にも多角的な経営です。東京ドームに併設する「LaQua(ラクーア)」や「東京ドームホテル」が東京ドームが経営主体であることは一定程度知られてはいますが、そのほかにも「熱海後楽園ホテル」や「東京ドームホテル札幌」などの各地域のホテル事業や不動産業にも進出しています。
全体像は大体こんな感じです。
(同社の有価証券報告書より引用)
その売上高構成比を見ますと、連結売上高830億円中、実に650億円だけで東京ドームシティ事業で占められているのです。ちょうど約80%で、ショップ事業や不動産業なども展開していますが、実態としては後楽園駅前に占められる東京ドーム周辺のおける事業体で650億円もの金額を叩き出している驚異的な事業会社とも評価できます。
続いて、東京ドームシティ事業のうち、東京ドームはどの程度の収益性を有しているのでしょうか。以下の図が、東京ドーム単体での売上高となっています。固定費用がかかっているため、ハコモノ事業の場合「稼働率」がKPIとなりますが、稼働率は85%を超えて、大体145億円を叩き出しています。
365日の稼働率が88%ですと、大体320日程度が稼働されており、その内当然ながら読売ジャイアンツの試合で92日が埋まっております。この92日が、スポーツビジネスにおいていかにスタジアム運営が大変かがわかります。
稼働率85%程度を目指すのであれば、プロ野球球団のホームスタジアムとなっていたとしても、残り230日程度をホームスタジアム以外の需要で稼働させなければならないのです。これがサッカーの場合、20日程度しかホームゲームがありません。残り300日の稼働をどのように運営するかが難しい問題となるのです。
ちなみに東京ドームの年間売上145億円は高いのでしょうか?
例えば、有名なところでいけば、日本ハムファイターズとコンサドーレ札幌のホームスタジアムの「札幌ドーム」は41億円で、稼働日数は134日(準備期間を含めると260日くらい)程度です。いかに、東京ドームの稼働日数が驚異的かがわかります。
サッカーのみのスタジアムですと、日韓W杯で有名な「埼玉スタジアム2002」で稼働日数はわずか50日程度、売上は6億円程度で、費用が9億円程度で最終赤字になっています。いかにハコモノが莫大な初期投資をかけても回収できないかがわかる数字です。ちなみにサッカースタジアムは、ほぼ赤字と言っていいでしょう(味の素スタジアムとか黒字のところも一部ありますが・・・)。
東京ドームの稼働率が異常に高いことがわかったところで、なぜこんなに稼働率が高いのかを分析していきましょう。そして、稼働率が高ければ、集客でき、飲食業やホテル業、アミューズメント業でも収益を稼ぐことができます。その実態を分析してみましょう。
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・東京ドームの稼働率の秘訣
読売巨人軍のペナントレース以外では●●で稼働している
東京ドームの利用料は、1日●●円
なぜ他のスタジアムでは再現性がないのか?
・東京ドームシティ全体での収益性は?
東京ドームで集客し、飲食/ホテルではどの程度収益を上げているか
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・スポーツクラブはスタジアム運営を一体経営すべきか
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