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スタートアップフェーズの営業戦略について/PeopleXの営業資料の変遷を公開

スタートアップフェーズの営業に向き合って学び深かったので、スタートアップ営業戦略について備忘しておく。

スタートアップフェーズの営業戦略と一般的な営業戦略との違い

スタートアップの営業戦略は基本的に「売上を立てること」ではなく、「顧客から学びを得ること」です。馬田先生の「セールスアニマルになろう」がバイブルですので引用の範囲内で引用させていただきます。

セールスアニマルになろうより引用

一般的な営業戦略は、売上目標が設定され、その目標を達成するためのチャネルリソースの意思決定が中心です。目標達成するための商談数、そのための投資プラン、投資金額決定後のアロケーションといった具合。

ただスタートアップの時期にはこれらの仮説ベースの売上を達成するために動いても効果的ではなく、

・顧客理解(課題、予算、セグメント、部署)
・製品理解(プライシング、新機能、新規事業開発の参入分野)
・売り方の理解(商談資料、製品サイトのリニューアル、パートナー)

あたりを早めにPDCAを回すことが重要です。今目の前の売上目標を達成するためにはスタートアップ企業に販売することが最も短期目標は達成しやすいものですが、スケーラビリティの検証を行わなければ、今後の投資戦略は効果的にはなりません。

スケーラビリティが重要なので、初期はできるだけリファラル営業を行わないようにしています。創業者との関係値がよく販売受注はできても、他の営業により再現性がなくスケーラブルな営業ができないので、いかに再現性ある営業ノウハウが獲得できるかが重要です。

だからといって起業家が営業しないことは避けて、必ず創業者が最も営業すべきです。それは起業家自身が営業商談の中から、開発、プライシング、チャネル、販売方法を高速で学習、修正、検証、再学習を回していく必要があります。

セールスアニマルになろうより引用

この学習プロセスこそがスタートアップの営業戦略で最も重要な戦略になっています。そのためPeopleXでも毎週のように営業資料のアップデートを繰り返し、最適な販売方法の模索を繰り返しています。

PeopleX社営業資料のアップデート

初代営業資料(2024年4月)

PeopleXの初代営業資料はこちらでした(今思えば、よくこんな資料で営業していたな)。

デザインもまだダサい(恥ずかしい)


この段階でも期待値で受注はできていたのですが、正式リリース前の紙芝居段階での営業資料でしたので人事部の課題から製品ラインナップを伝達して、購買意思決定をしていただくような設計でした。

そして料金プランはこんなプランニングであり、機能ラインナップを示し、購買意欲を測定していました。

初代の営業資料の課題としては人事部のマクロ的な課題は理解できるも、個社により人事の課題は異なるので、大枠の共感は呼びつつも、具体的な課題解決のイメージが湧きにくく、受注率が下がる傾向にあると判断しました。

実際リリース前の紙芝居段階で20社程受注できていたのでスタートアップの割には販売できていたとは思いますが、具体の課題を解きに行こうとエンプロイーサクセスってなんやねん?を明確化しようと考えました。

2代目営業資料(2024年7月)

まずタグラインを変えました。エンプロイーオンボーディングという具体の課題を当てるために「入社時・異動時・昇格時の即戦力化」というタグラインに変更しました。

そしてエンプロイーサクセスの定義も定め、我々の製品のコアコンピタンスを明確化することにしました。

この時点でも正式リリースの8月前の商談資料でしたが、社内の優秀なマーケターにより創業理念の1つでもあるエンプロイーサクセスの定義化、伝わるメッセージをソリッドにしてPeopleWorkが生み出す価値を明確化していくことにしました。

またブランドポリシーをPeopleXの緑基調と、PeopleWorkの紺貴重で分けながら、製品はナショナルブランドを目指して白基調とするようなブランドポリシーに明確化しました。製品はブランドに帰着するので、ブランドポリシーはスタートアップには珍しいくらいに投資しています。

PeopleXとPeopleWorkのブランドポリシーを明確化

この営業資料もまた課題が見つかり変更することにしました。我々の保有する志高いエンプロイーサクセスへの意思を、少しオンボーディングアプリに寄せすぎて狭い課題解決に見える課題感を有しました。

経営的に言えばARPPUが低くなり、顧客目線で言えば(本来オンボーディングに課題がない企業なんてないが)オンボーディングに課題がないと思われている企業には刺さりにくいと顧客反応を感じ取り、課題はソリッドながらより広い課題を解決できるタグラインに変更しようと考えるに至りました。

この段階でも1つ目のプロダクトを購買いただいた顧客の70%弱が2つ目のプロダクトも購買いただくといった(SaaS経営を熟知した方なら驚異的だと理解していただけると思うが)驚異的な数値を叩き出しており、売上が既に既存顧客のアップセルから生み出せているような仕掛けができていました。

ただ、もっと高い山を登るためにも営業資料をフルリニューアルすることにしました。

3代目営業資料(2024年10月)

これが最新版の営業資料です。全ページ自分自身で作成しています。

まずタグラインを「社員誰でも活躍化。」と大胆に変更しました。我々が有するコアコンピタンスをこの言葉の方が直接的に脳に刺さる文言だと判断しました。

どのような人材でも能力発揮することができる会社を創る。再現性持ってどんな社員でも活躍化できる会社を創れる製品がPeopleWorkであると、自信を持って言えるからです。

そして10月現在ではその活用事例が多面的になってきました。まだ正式リリースして2ヶ月ちょい、オンボーディングソリューションをリリースして2週間ほどですので当然ながらエンタープライズ企業の活用事例はリードタイムの関係でこれからですが、これから公開できる活用事例は驚くほどの規模の自治体や企業が控えています。

だからこそ我々は誰もが活躍できるメソッドを有していると自信を持って言えるようになりました。そしてそのメソッドを「Will to Can」メソッドと名付けて横展開していく事を商品性としています。

このWill to Canメソッドは概念だけではなくワークブックやテンプレート、そしてワークショップキットを既に作成済で、様々な企業でのジャーニー設計を横展開するほどまでに昇華しています。

またプライシングも見直しを始めています。これが最新版のプライシングとなっています。

明確にエンタープライズプランを策定し、ノウハウを含めた総合的な活躍人材を生み出す全体的な設計も含めて価値を購買いただく運用にしています。既にアップセルも生まれており、手応えを掴んでいます。

再現性ある検証プロセス

このような創業者自身による顧客との対話に基づいた改善プロセスを高速で回していくことがスタートアップフェーズの営業戦略です。しかしながら売上創出のスケーラビリティを保つために、検証自体は創業者自身のみで営業しないことも重要視しています。

PeopleXのような拡張性ある組織を目指している企業は創業者自身のみで営業しては検証ができません。創業者はリファラルやビジョン営業で高い受注率を誇ることができますが、それではいつまで経っても拡張することはできません。

そのためPeopleXでは様々なチャネル検証もしています。アウトバウンド営業での受注率、パートナー経由での受注率、ホワイトペーパー経由での受注率、セミナー経由での受注率など、自分以外のチャネルでの営業生産性を客観的に判断して商談資料別の受注反応を冷静に見極めています。

PeopleWorkの認定パートナー制度

結果、既にパートナー企業による受注が生まれています。自分自身と全く関係のないパートナー企業が、自分自身と全く関係ないお客様に数百万円規模の購買の意思決定がなされている。これは再現性があると判断としています。これがマーケティング上の成功と位置付けています。

これこそが「スケールしないことをしよう」に他なりません。

スケールしないことをしよう 👊より引用

再現性が持てればスケール戦略に移る営業戦略が重要ですが、スタートアップフェーズではいかにスケールしないことに起業家自身が向き合えるかです。

スケールしないことを検証し、検証が出れば、スケールしていく。但し他のセグメントの検証はまだ済んでいないので、またスケールしないことに検証し、またスケールさせていく。その連続です。スケールしない仕事と、スケールする仕事を1時間毎に意識を変えていく。

これがスタートアップの営業戦略。

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橘 大地
お読みいただきありがとうございます( ´ ▽ ` )ノ