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共存共栄

万物を創造した神々が終結し、千年に一度の総会が開かれている。
今まで自分たちが創り出したものが適正に運航しているかどうかを検討し、その中で必要なものは残し、不必要なものは消滅或いは絶滅させることを決定するための会議だった。
宇宙環境全般、惑星内の自然現象にについては計画通り順調に推移しており、このまま現状維持を通すことで全員の一致をみた。
「ところで、君の担当エリアの惑星の生物はどうなってるのかね?」
委員会の神ががその担当神に尋ねた。
「どうやら、また色々なことをやり始めているようです」
担当の神は答えた。

千年に一度では短すぎて面倒だという声もあり、万年周期に一度でもいいんじゃないか?というような声もでているのだが、とりあえずは恒例の周期は守られている。
そもそも千年という周期は、議題に上がったある生物のために設定されているようなもので、この件に関係のない神々は、こんな瑣末なもののためにわざわざはるばる時をかけて宇宙各地から終結することを面倒がるものも少なくなかった。神でも宇宙空間を移動するにはそれなりの時間を要したのだ。

こんな面倒で手間のかかる生きものなど消滅させた方がいいのではないのか!と議長に直訴までする神もちらほら見受けられた。
「……、何度か警告したのだが奴らの暴走は治まらのんか……。色々手を変え品を変え、様子を見ていたのだがどうやら態度が改まらないようだな。というか学習能力が全く欠如してる。最初から完璧に作るよりも学習することで成長しもらいたかったのだが、それが全く機能しておらんな…。創った我々にも責任がないとは言えんが、失敗作だったな。もはや完全に我々を冒とくしておる、と言ってもいいようだ。どうやらここら辺で何某かの処分を講じなければならん時が来たようだな…」
温厚と評され、どちらかというとその生物を贔屓にみていてくれてた議長神は、怒りとも落胆とも諦めともつかないため息をつきながら言った。
以降、長い間その生物の処遇につて全神々が侃侃諤諤と議論を交わした。
「全体からすれば瑣末なことだが、秩序を乱すものは断固として処分しなければならない。今まで、何とか自ら気づいてくれることを願い放置しておいたが、もはやこれ以上は許せん。その生物を絶滅させることにほぼ全員の賛成を得たようだ。今度は完全にだ。やり方は君に任せる」
議長神は担当神に向かってそう告げた。
「承知いたしました。今すぐ取り掛かります」
担当神は議長神に対して恭しくお辞儀を済ませると、人類全てを絶滅させるべく作業に取り掛かろうとした。

「待て!」
と、今まで沈黙を守っていたある神が、その消滅させるための行動に移ろうとしている神を制した。
「何故止めるのだ?!既にあなた以外の全員の一致をみていることに、どうすることもできんそ!」
周囲に居並ぶ神々たちから非難の声が上がった。
「あなた方は何も分かってない!奴らを完全に消滅させてしまったらどうなると思うのだ?」
ある神が議長はじめ、全神々に向かって尋ねた。
「どうなるかって…、宇宙の塵にも及ばん下等で面倒ばかりかかる存在が消えれば我々の手間も省け済々するだけさ」
「本当にそうですか?でも、我々はその下等な生物の頭という中に存在してるんじゃないでしょうかね!」
その発言にどの神も、近くにいる神の顔をお互いただ黙って見つめ合うしかなかった。


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