Demeeの短編ノート

少年時代、星新一や筒井康隆をむさぼり読んだ記憶があります。 空想の世界に浸っていられる…

Demeeの短編ノート

少年時代、星新一や筒井康隆をむさぼり読んだ記憶があります。 空想の世界に浸っていられる時間はアッという間に過ぎてしまいましが、あの時味わった感覚は今でも忘れられません。今度は、自分で楽しみながら夢想し、書いてみます。下手の横付きですが、皆様も楽しんでいただければ幸いです。

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    日常の出来事や感慨、ふと感じたことをエッセイとして綴ったものをまとめています。

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共存共栄

万物を創造した神々が終結し、千年に一度の総会が開かれている。 今まで自分たちが創り出したものが適正に運航しているかどうかを検討し、その中で必要なものは残し、不必要なものは消滅或いは絶滅させることを決定するための会議だった。 宇宙環境全般、惑星内の自然現象にについては計画通り順調に推移しており、このまま現状維持を通すことで全員の一致をみた。 「ところで、君の担当エリアの惑星の生物はどうなってるのかね?」 委員会の神ががその担当神に尋ねた。 「どうやら、また色々なことをやり始めて

    • 執着心

      チベットの僧侶が修行のために、或いは法要のために描く砂の色曼荼羅。 それは細かい粒子の色砂を下絵の上に置いてゆくことで描かれる。 立体的に浮き出た幾何学模様は、精緻な美の極みである。 色砂を入れた細い金属の管を擦り、微妙な振動で砂の量を調整しながら、数日間から数週間、ただひたすらに下絵の上に砂を重ねる(置く)ことだけに没入する。或いは、直接指につまみ指をひねりながらコントロールするやり方もある。 あるとき、風が吹く。砂曼荼羅は、一瞬のうちにその美しい姿を消し去る。風が吹かな

      • アイちゃんのいる世界

        アイちゃんは、毎朝5時には起床する。 身支度を整え窓を開けると、小鳥のさえずりと共に清々しい朝の空気が部屋に入ってくる。今日も沢山やることがある…、アイちゃんはその工程を一度頭の中で思い描いた。 アイちゃんが一番最初にやるべきことは、神棚の水を替えそっと目を閉じ手を合わせることだ。今まではお姉ちゃんがやっていたのだが、最近はアイちゃんの役目となっている。 ポストには既に朝刊が届いている。それをポストから抜くと、パパがいつも座るソファのサイドテーブルに置いた。外が少し寒かった

        • 宇宙任務

          船内の隊員たちの胸は躍っていた。カウンタ-に表示される残日数を見ると、三か月前に地球圏内に突入し地球到着まであと一ヵ月と迫った日だった。 今まで太陽系には存在しない、様々なサンプルやデーターを収集することができた。ある化石を調査した結果、地球外生命の存在についても確信的証拠を押さえることができた。 隊員たちは当初の目的以上の成果を得ることができた、というミッションの完遂に心から酔いしれていた。 地球圏内とは、地球を中心とした月と火星を含む5000万キロ四方のエリアのことであ

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          窓の修理屋

          M氏は窓の修理屋だ。 大きい窓に小さい窓。四角だったり丸かったり、新しかったり古かったり、出っ張ったりへこんだりしている窓。乱暴に扱われ壊れてしまった窓。夏の太陽の容赦ない熱に焼かれたり、冬の寒さに凍てついてしまったりと、その風雪を長年耐え抜いてきた窓。M氏は今まで様々な種類の窓を診てきたのだった。 依頼があればどんなに酷い状態の窓であっても完璧に修理してきた。 窓を修理する職人はたくさんいたが、M氏ほど完璧に仕上げる職人はなかなかいなかった。 M氏には不思議なところがあった

          夜の滑走路

          僕はフライトはあまり好きではないのだが、無数の光に彩られた夜の空港施設とそこを離発着する飛行機を眺めるのは好きだ。 夜の空港とは、当然ロマンチックな場所でもある。 僕にとっては、そこは諸々の煩わしさから開放してくれる場所となっていた。あのバカでかい、それも夜空に浮かぶ飛行機を間近で眺めていると、心のモヤモヤもいつしか薄れる。 東京の環状七号線を平和島・大井方面にひた走る。 環七大井埠頭の交差点を右折し、湾岸道路に入る。 浜島辺りに来ると、羽田空港施設の明かりが暗い空に浮かび

          占い - 運命

          未希はこのところの自分に降りかかる不運の連続を嘆いていた。 仕事が終わると遊びにも行かずショッピングもせず同僚と飲みにも行かず、ただ家を目指して歩みを進めるだけだった。 帰宅するとすぐに自分の部屋に閉じこもり、一体どこで歯車が狂ってしまったのかと不運の原因を考え続け、ただ悶々として過ごすだけだった。 しかしいくら考えても、こういうことについて原因なんて分かるはずもなかった。たとえそれが分かったとしても、不運の連鎖の解決策などすぐに見つかるわけではないことも未希には分かってい

          酒飲みが上手な先輩

          大学時代の先輩に、酒を飲むのがとても上手い人がいた。酒を飲むのが上手いって...、何だかおかしな表現だと思うかもしれない。しかし僕の中ではその言葉が一番ピッタリとくる人だった。 周囲を和ませる...、それもあるがそんな単純なことではない。ジョークや豊富な話題でその場を盛り上げるようなムードメーカー的存在でもなかった。あることを熱くなって議論するようなタイプでもない。先輩はどちらかというと、節太の手に持ったグラスを黙って傾けている方が多かった。だからと言って一人ニヒルに決め込

          酒飲みが上手な先輩

          ペンダント - 宇宙から来た少年

          乱立するビル群が影絵のように地平線に沿って張り付ていた。小高い丘の上に立ち並ぶ住宅街から眺める光景はいつも幻想的だった。 太陽は完全に沈み切っていた。しかしその名残のせいで、影絵の輪郭はまだオレンジ色の層に覆われていたが、上層へ行くほどに淡い水色からダークブルーへとグラデーションを強めていた。 グラデーションの境目で少し赤みを帯びた金星の輝きが増してきた。 太陽が見えなくなると急激に冷え込んでくるのが分かった。 少年はリュックに入っていたフィールドブランケットを取り出し、マン

          ペンダント - 宇宙から来た少年

          マサル君

          「マサル、っていうんだ。そいつの名前」 「覚えてるんですか?」 「ああ、忘れられんね…」 ジャスのBGMの音量があまり届かないバーカウンターの片隅で、マスターを相手に人生も半ばを過ぎた中年男が、このところ、その人生も少し狂いかけていることに対して一人ごちていた。 まだそんなに呑んでいるわけでもないが…。今日はペースが速い。そして、男の呂律がすでに怪しくなっていることをマスターは感じていた。 「もう一杯、同じもの!」 男は少しつっけんどんに、空になったグラスを突き出した。 「

          メリーゴーランド

          Y氏は遊園地の施設係員である。 客が乗り物に乗るときの誘導をしたり、チケットを切ったり、お客の列を整理したりする。彼の担当はメリーゴーランドだった。 メリーゴーランドはY氏一人でほぼ全ての作業を賄えた。 最近はメリーゴーランド目当てに来てくれる客はめっきり減った。 Y氏が若いときは、メリーゴーランドは遊園地の花形の一つだった。 今や最新式のジェットコースターやアトラクションつきのウォータースライダーやら、スリルを味わえるものにとってかわられている。 Y氏は過去に、一時違う乗

          メリーゴーランド

          ミミとララ - ある融合の物語

          ミミとララは双子だった。 そしてミミとララは……。 いくら双子とはいえ成長する過程においていつしか個性が芽生え、お互いの特徴も微妙に違ってくるはずでなんとなく区別がつくものだが、二人はあまりにも酷似していた。 体形はもちろん、髪の色も質も、目の色も、爪の形も、好きな食べ物も細部に渡って全てが一緒だった。厄介だったのは、二人が服を選ぶとき、同じタイミングで同じものを着る。 髪型も二人でいつも同じに揃えてくる。どちらかが伸ばし続けたり、どちらかが途中でカットしたりすることもなか

          ミミとララ - ある融合の物語

          霧の中で泳ぐ魚

          霧が晴れると、魚たちは忽然とどかに消えてしまった。 それまでは悠然と泳いでいたにも関わらず、姿を消してしまったのだ…。泳いでいた場所に駆けつけてみても、魚が地面に落ちて跳ねているわけでもなかった。その場所に水辺なんて必要なかったのだ。 そこに水辺があろうとなかろうと、魚が空中を泳いでいることに何かの因果関係を見出せるわけでもないのだ。 霧の中で泳いでいる魚をもう一度見てみたい一心で、明日香は森の中をかれこれ二時間は歩き続けている。 今日で8日連続、毎朝こうやって森の中へ出向

          霧の中で泳ぐ魚