
生きる世界、それが違う人とも出会う。
川枝くん(仮名)という職員が会社にいて、彼のことが本当に分からない。
マジで。どうしたらいいのかな。
彼とは5年前くらいから同じ職場で働いているのだけど、文明の違う人類、メソポタミアと黄河人が奇跡的に会ったのかな?ってくらい彼のすべてが見えてこない。お米かパンのどっちを食べる?ってレベルじゃなくて、「そちらはもうパンは発明されてます?」「へーすごいですね。こっちはまだイースト菌が見つかっていないんですよ」ってところから確認していかないけない気がしています。
わかってくれます?
たぶんよくある話しっすよね。
社会ってとこは、「世界は広いなー」と思うようなタイプがけっこういて、いきなり話をしないといけなかったりする。
会話は成立するし、表面上は普通にやり取りできているけど、(なんか、あの人はよくわからないなー)と。話そんな人がいる。
ときには一緒に仕事をしないといけなくて、よく戸惑う。心配性なぼくは川枝くんは本当にバックレてしまわないか、外に出ているとき「ちゃんとできているかなー?」と心配をしてしまう。
何を考えているかわからない。だから怖い。
川枝くんはいつも仕事中にフラフラと歩き回って、まわりから「お気楽でいいよねー」と皮肉を言われている。だけど本人はそれに気づいていなくて、(不真面目なオレかっこいいー)とむしろ思っていそうで。かといってやる気がないのかと思えば、「ここぼくが出勤しますよ」と気を使ってくれたり。だからこそ彼が分からない。
悪いやつじゃないのだろーな。最近は気づけているけれど。
そんな彼と最近話した。それは一応、ぼくの部下で、周りからの不満が多かったので。そしてぼくも真面目にもう少し仕事をしてもらわないと…と思って、先週の月曜日「川枝くんちょっといいかな?」と呼びました。
「ごめんね、川枝くんにはもちろん川枝くんにしかない良さあるけど、今はそれが悪い方に働いていると思う。」と話しをました。
「もうちょっとやることはやらないと。せっかく誰かの助けになれる朗らかな柔らかい性格なのに、やることをやらないから悪く目立っているよ。気遣ってシフトを変えてくれたでしょ。」
「…」
そこから具体的になにをすべきか、ぼくの思っていることを伝えました。本音が聞けるかな?期待をしたけど終始無反応で。
「…」
「何か思うことはある?」
「いや?」
と肩をすくめて終わり。
しかしそれを終えて、その後の彼の姿を見ていて、まあ伝えたいことは伝わったしいいかなー?っと思いました。さらに斜に構えたけれど、以前と違ってすこしは真面目に働いてくれているし。
そして、ゲラゲラとおじさんたちと話しをしている姿を見るとこれ以上は彼と話をしても無意味だろうなと思った。
この職場が嫌いではないのだろうし。もし、「こっからさらに思考のプロセスの擦り合わせをしよう!」なんて言ったら、お互いに無理をしすぎて歪みが生まれる気がした。
「イースト菌?それってすごいっすね」。
と、彼には彼の考え方があって、悪い人じゃないのだから。
こっちにパンを作る文化がないのなら、それでいい。ほんのちょっと思えたのでした。
っつーか、よく考えてみたら、今回の件。上司から呼び出されて説教を受けた彼の方が大変だよね。なんかいろいろ言われたし。
とても頑張っていると思う。ほんと。
終わり。