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あいこが続いていたら さっさと帰っていく友達 なんで? 悔しくてて 手を引っ込めた 小学三年生の秋 by少年 じゃんけんで負けてないはずなのに悔しかった。それが初めての男泣き。 いつかは彼も中年になる
道路向こうの信号機が赤色で 手元でスマートフォンを見た いろんな広告が流れていくなかで 日本人が金メダル もう信号が変わりそうなとき ぼくは走ってみた by中年 中年でも燃える心がある。池江さんはすごい、感動した。
とある日 「すごいね」って 言われたりした 深夜のコインランドリーで それは 縁もゆかりもなかったこと 一人で 長い待ち時間を 退屈していたら 鞄に紐が入っていたから なんの気無しにあや取りをしていた そしたら 通りすがりの女子高生がわざわざ 「すごいですね」って言いにきて ちょっと不思議だったけど すこし話をした それだけのこと たったそれだけの夜 byまりえ 彼氏と喧嘩をした夜に、コインランドリーで洗濯を待っていたら、見知らぬ女
生れたとき 「ほぎゃー」と言ったらしく 記憶にはないけど ぐしゃぐしゃな顔で 泣き叫んでいたらしい だけど今は アパート暮らしで 立派な大人 きみと喋っているとき ふと 黙ってしまうのは 生まれつきのクセだから だから 気にしないで byふみや 大学三年生のときに恋人ができたけど、二人きりでいるとよく沈黙した。なぜ生まれたのか、など哲学的に考えるのが好きな人である。 意外とこういう男性と結婚をすると幸せになれる。
昨日のレシートが 出しっぱなしになっていて 朝日を 白く反射 目をこすりながら 身支度を始める byノア 夜の店で働いている女性。ある日、後悔をしたが、その日のレシートを捨てて、また一日を始める。 レシートって昨日の記憶が残されている気がする。
お風呂上がり ビールを 飲む 指のささくれが気になって 木材を運ぶときに傷ついた その 小さな傷は 赤い byロドリゲス スペインの労働家。小さな象徴にいろんな記憶が蘇ってくる。 豆知識:広島では傷跡のことをキッポと呼ぶ。
トランジットの空港で たまたま目覚めたら そこで 知らなかった 不意打ちの朝陽で ロビーは 真っ透明いっぱいの 明かりで byネルサン 人生で一番きれいだった風景は、案外誰かにとっては日常だったりする。
残業続きの日に 早めに切り上げられて 電車で帰っていたら 窓ガラスに 夕暮れを見て 遠い喪失感を覚えるのは きっと 歳のせい たぶん だから 手を開いてみる byただのおじさん 電車のなかでゆっくり開いているおじさんがいたけど、怖がらないでいよう。
暑い日なのに 近寄ってくる 年下の彼が ちょっと嫌い byジョナサン 好きの裏返しにそう思っているのか、本当に嫌いになっているのか。自分でもよく分からない。 女心とかではなく、男性もそういうときってある。
三軒茶屋駅から アパートまで あと電柱二つ そんな所で 夕焼けがきれいだから 地球の裏側を考えている by山田 太郎 婚約者と一緒に歩きながら、将来を考えて、結婚できないかもしれないと考えた。
どうぞ お先に行ってくださいませ たまたま ぼくが近所へ立ち寄ったとき 家主の死に目にめぐり合わせられた 看取りの苦労だなんて 聞きたくないのに ただの時間がすぎて それは不運 どうぞ お先に行かせてくださいな たまたまの たまたま 階段を上ったその先 百円札が落ちていた いきなり臨時収入があって 贅沢できる幸運 幸運と 不運 天秤にかけてみれば そしたらば ぼくの人生はちょっと 不運に であろうそれは 誰か幸運があるから たまたまの たまたま 誰かの人生はきっとどちら
何も気にしないでいられたら 物語を書くだけで ただ散歩をして 太陽が眩しければ 手をかかげる そんな人生でいられたら そんな人生にしよう by無名詩人 スペインの無名の作家。作品は世に残っていないが、この独り言のように呟いた詩だけが、店員によって書き残され、今もスペインの田舎のトイレに貼られているらしい。
生きているということ いま生きているということ それは と 頭で再生されだした 夕暮れ 駅前では人が行き交い 路上で演説が始まる だけど 側溝に落ちているガムこそが ぼくにとっての現実 by鈴木弁蔵 1970年生まれ。詩を読むことが好きで、谷川俊太郎さんに憧れている。そんな彼のふとした休日のこと。アメとムチ、そしてガム。 ガム、それこそが現実的なものだ。雨でも無知でもない。ガム。それである。
もしまた会えたなら 運命と呼ぼう 気持ちを 鼓舞しながら 向かう 駅前のイルミネーション うん百人もの人影が 粉雪に紛れ そして晴れてゆく だんだんと 何もない駅で byロイズ ロシアの青年。1640年のシベリア駅前の点灯式で、一人で立ち尽くした。 とある国の美しい光景。