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よなよな62 よなよな路地

ばな子

口に入れるもの

私の育った時代はとてもいい時代だったと思うのは、もちろんある意味てきとうだった分だけ大きな事故や人の怖さもあったと思うのですが、街が子どもの先生でした。
街で遊んでいるだけで、ありとあらゆる人間模様を比較的安全な世界で学ぶことができたのです。賢くて美人でお金持ちの女の子たちのたどった、どことなく似たような進路とか、その中でもご両親が自由な考えだった変わった子たちは今でも毛色の違う人生を歩んでいるとか。賢くて異常に美人でお金持ちじゃなかったら、このくらいの年齢に男で稼ぎ出すんだな、とか。
そういうことが、観察していたら最初からみんなわかるんです。この人、こうなっていくんだろうなあ、って。
お金持ちの人たちの親の反応もみんないっしょで、「礼儀正しくないし、身なりもあんまりきちんとしていない。育ちは悪そうだ。でも評論家の娘さんだから、学術系有名人の枠として娘の友だちでいてもらえるのはちょっとおいしいから、がまんしよう」でした。それが手にとるようにわかるので、面白かったです。傷つきもせず、はあ、この界隈ではそうなんだ、って感じで。
いじめられっ子についても今と違ってのどかなものだったので、そういう人のひとりの家に放課後にふつうに遊びに行くと、机のすぐ脇の窓辺にクラス全員の名簿が貼ってあって、デスノートかよっていう感じで、各自に○△×がついてたり。ちなみに私は△だったので、「△だね」って言ったら、すごく困ってました。そういうのを机のわきに貼っちゃう性格だからいじめられたのでは。
近所の商店の人たちのあり方や、どこに重きを置いて商売をしているか、どこは汚い商売で、どこが尊敬されてる地道さを持ってるか、とか。
いちばん最初に性的なイタズラされそうになったのは、有名なお医者さんの息子だったりとか。あと、政治家の娘さんのあまりにも鍵っ子で孤独な日々とか。
どういう人が最後まで責任を取り、どういう人が気分のままにふるまうか、その中にもかっこいい人とかっこわるい人がいるのはなんでなのか、ずっと観察してました。
その観察結果は一生の宝となりました。
というのも、大人になってもそのときに見た人たちと同じ顔つき、考え方の人たちで世の中はできていて、なにも違わないんだ、ということがわかったからです。
よしもと〜!聞いてくれよ〜!って言いながら、走ってくる女子たち。そういう子たちがいちばん好きだし平和でした。ヤンキーも生徒会長もバスケ部のスターもいたけど、そういう人たちはみな同じように笑顔がきれいで、さっぱりしていて、派閥もグループもなにも関係なかったです。

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よなよな、人生について意味なく語り合うばな子とまみ子。 全然違うタイプだからこそ、野生児まみ子の言うことを聞くとばな子こと小説家吉本ばなな…