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排泄記録を自動化するセンサーをパナソニックが開発、介護施設業務の負担軽減に

パナソニック ホールディングスとパナソニック くらしアプライアンス社は、排泄記録を自動化する「排泄センサー」を開発した。2023年3月より、介護業務支援サービス「LIFELENS(ライフレンズ)」のオプションとしての提供を始める。パナソニックが、介護現場が抱える課題にテクノロジーを活用して取り組むプロジェクト「Smart Aging」と併せて紹介する

介護現場の課題に向けてセンシング/AI/IoTなどテクノロジーを活用した「Smart Aging」

超高齢社会や介護現場が抱える課題に向けて、パナソニックがセンシング/AI/IoTなどさまざまなテクノロジーを用いて新たな介護の在り方として取り組んでいるのが「Smart Aging」である。そのソリューションの一つであるライフレンズは、介護施設などでの入居者の見守りや巡視業務を支援するサービスだ。

ライフレンズは、ベッドに装着するシートセンサーと室内をモニタリングする映像センサーから成る。安否状況や在床状況、睡眠状態などをパソコンやスマートフォンから確認できるほか、入居者の個別のケアの検討に役立つレポート機能や、エアコンを操作できる機能もある。他社機器との連携もできるデータ統合プラットフォームとなっているのが特徴ともなっている。

高齢者向けの介護施設の現場では人手不足が課題となっており、夜間勤務を1人で行うことも少なくないと聞く。こういった問題に対して、ライフレンズには、ひと部屋ごとに入居者の様子を確認していた巡視業務の効率化や、目視では測定できなかったデータ活用で安全面での検討や対策が可能になるといったメリットがありそうだ。従来の訪室による状況確認は105分かかっていたが、ライフレンズ導入によって10分となり、約91%の巡視時間削減につながったという測定結果も出ているそうだ※。

※パナソニックYouTubeチャンネル「Channel Panasonic」 LIFELENS紹介動画より

LIFELENS紹介動画:パナソニックの見守り介護ロボット「LIFELENS(ライフレンズ)」

施設入居者と介護職員、両者のストレスを軽減

パナソニック ホールディングスとパナソニック くらしアプライアンス社が2023年1月に発表した「排泄センサー」は、ライフレンズと連携させることで排泄情報の一元管理が可能となるという。具体的には、センサー技術とAI技術の活用によって排泄を検知し、トイレ入退室時刻、着座している時間、排便・排尿回数、便量、便形状などの情報を自動的に記録する。クラウドを介したソフトウエアアップデートによる機能進化にも対応予定となっている。

排泄センサー

3月からの提供開始に先駆けて、ライフレンズを導入するベネッセスタイルケアの介護付き有料老人ホーム「グランダ四谷」では排泄センサーの先行導入を行っており、導入事例が公開されている。その中でホーム長が「入居者によっては認知症があり、口頭で行う排便や排尿の状況確認では正しい情報なのかが分からない場合も多い。そこで、便器の目視や臭いなどで確認し推測していたが、量が分からないなど、対応に限界があった」といった導入前の業務の様子を説明している。記録一つとってみても介護施設での大変さがうかがえる一節だ。

特に、排泄に関しての口頭での確認はデリケートな事案であり、入居者にとって心身の負担に感じるといった側面もある。排泄センサーの活用は、職員の業務負担軽減と併せて、入居者のQOL向上にもつながると期待される。

なお、パナソニックではライフレンズのデモ・検証を行う施設を東京・品川にオープンしている。事前問い合わせの上で見学が可能だ。見学受付日時は、土曜日・日曜日・祝日・ゴールデンウイーク・夏季休暇・年末年始を除く9:00~17:30。詳細の確認と申し込みは、以下のウェブページから行える。

高齢者が元気に居続けるためのテクノロジーを磨き、将来のグローバル課題に届けていきたい

最後にパナソニックホールディングスでスマートエイジングプロジェクトリーダーを務める山岡勝氏が、同社内インタビューで語っている「Smart Aging」への思いを紹介しておこう。

テクノロジー、データーの利活用により介護の質、ケアの質向上を通じて、要介護高齢者のQOL向上に貢献したい。そして、高齢者が元気に居続けるためのテクノロジーを磨き将来のグローバルの課題に対してお届けしていきたい。

https://tech.panasonic.com/jp/lifelens/about.html

同社のテクノロジーを軸とした高齢者社会へ向けての取り組みと、さらなる「Smart Aging」の展開が期待される。

文:遠竹智寿子
フリーランスライター/インプレス・サステナブルラボ 研究員

トップ画像:iPhotostock.com/SENRYU
編集:タテグミ

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