第10話 精神と時の部屋
これは僕の料理に関する物語だ。
僕は役員室に呼ばれた。
その方は僕の上の上の上にあたる上司、
このお仕事に就いた時からお世話になっていて
普段はなかなか会えない存在だけど
僕の事を気にかけてくれていた人だった。
その役員室に入ると、その人は立っていた。
そして僕に気づくや否や
振り返り
満面の笑顔で
"どうしたんや"と言ってくれた。
ドン底まで落ちた僕を温かい言葉で
諭してくれた。
"お前は心の骨が骨折したと思えよ。
骨はなかなかくっつかへんやろ?
時間かかるねん。
じっくりかけて治したらええからな"
普段は弱みを一切見せない方だったが
自身の経験を交えて、"俺も一緒やし
お前も大丈夫やからな"と諭してくれた。
"今日からお前は休むことになるけど、
使える権利をフルで使え、
MAX休んで大丈夫や。"
"その間、家に閉じ籠るなよ、
お前の好きなダンスやったり、
友達にも会えよ。
1人で抱え込むなよ
俺の携帯教えるし、なんかあったら、
心のホットラインやと思ってかけてこいよ。
お前にはお父さんの仕事という
素晴らしい仕事があるやんけ"
その方は以前お店に来てくれて
感動したと伝えてくれた。
"お前はお父さんの仕事も一つの選択肢やと
思ってこれからの休み期間はよく考えろよ。
こっちも戻ってきたかったら、
お前に合う会社を探してやるし、
ゆっくり自分に合うことを考えてみぃや"
まさかそんな言葉が返ってくるなんて
思わなかった。
今まで避けていた父親の仕事を
真剣に向き合えるキッカケを与えてくれた。
とても嬉しかった。
心が救われた。
その方は僕に
勇気ある言葉をたくさん浴びさせてくれて、
最後は
"よっしゃ行ってこい
元気なったらまたランチでもいこな!"
と送り出してくれた。
ここから僕は社会と離れ、
2年間の長い長い精神と時の部屋タイムに
突入する事となる。