弊社のテクニカルディレクターがOpenVINO™を使ってみた話
1.はじめに
IMG SRC STUDIOのseiyaです。
テクニカルディレクターとして、社内外問わず「こういうことしたいんだよねー」という声に対して、どうすれば実現できるのかをデジタル、時にはアナログの手法を用いてご提案するといった業務を行っています。
近年ではテクノロジーの進化により、クリエイティブな表現手法が大きく変わりつつあります。特に、高性能なPC端末がクリエイティブ活動において重要な役割を担っており、テクニカルディレクターとしても機材選定は大切な業務の一つになっています。
そんな中、ご縁があって、D2C IDが「インテルBlue Carpet Project」のパートナー企業として参加させていただくことになりました。このプロジェクトでは、さまざまなプラットフォームで、さまざまな創作ジャンルで挑戦し続けるクリエイターを支援するもので、私も高性能PCをご提供いただくことになりました。
2. インテル製のPCを使ったプロトタイプ制作
せっかく高性能なPCを手に入れたので、使っていかないともったいない!ということで社内で実施していたハッカソンにて、ここぞとばかり使ってみました。
実際に作成したプロトタイプを2つ程ご紹介します。
「Biotalk」
透明液晶ディスプレイを使った、生物のコンディションや演出を表示するプロトタイプです。この時は、画像解析の部分でインテル製PC及び「OpenVINO™」(*1)というAIツールキットを使用したAI推論を行いました。
制作風景はこちらの記事からご覧になれます。
「KOTOBARA」
手紙をシュレッダーに入れると、言葉をアーカイブとしてデータ化し、バラバラにビジュアライズするプロトタイプです。捨てにくい手紙にアナログとデジタルを融合し、新しい価値を与えることで、ネガティブなものをポジティブなものに昇華させるといったテーマで開発しました。ここでは文字認識部分でインテル製PC及びOpenVINO™を使用しました。
3.私が感じたOpenVINO™を使用するメリット
2つのプロトタイプで使用したOpenVINO™ですが、使用するメリットはいくつかあります。私が特にメリットと感じたのは、「PCの性能を最大限活用できる」という点と、「素早いモックアップ作成が可能」という点です。
OpenVINO™の推論エンジンはインテル製のCPUやGPU、VPU、FPGAなどのパフォーマンスを最大限に活用できるとされており(*1)、推論エンジンと各種リソースの有効活用のためのアルゴリズムを理解していなくても、最適なアーキテクチャで構成されているというのは、私の様なAI技術を使用する側の人間にとっては大変魅力的だと感じてます。
また、OpenVINO™ツールキットの一部である「Open Model Zoo」(*2)と呼ばれる学習済みのモデルファイルを使用することで素早いモック作成が可能になります。プログラミングも短いコードで推論プログラムが作成できる様にデザインされており、AI開発の入口としても良いのではないかと思っています。さらにオリジナルモデルに関してもOpenVINO™の推論エンジン用に最適化するための変換モジュールも用意されており、オリジナルモデルの学習の際にもPCスペックの恩恵を感じられました。
4.文化庁メディア芸術祭でのワークショップ
そんなこんなで、インテル製PCとOpenVINO™をちょくちょく触っていたら、2022年の文化庁メディア芸術祭にてワークショップをしませんか?というお話をいただき、「AIを活用したAR制作ワークショップ」を実施することになりました。
ワークショップの内容としては、OpenVINO™のインストールから画像認識、またそれをARアプリに実装するところまでをワークショップとして開催しました。参加者の大半は非エンジニアでインストールからハンズオンしながら、AI開発の手軽さを体験していただけたかと思っています。
5.まとめ
今回の記事ではインテル製PCとOpenVINO™の良さを中心に書きましたが、実際のプロジェクトで使用するPCやAI技術は要件によって様々です。テクニカルディレクターとして常に最適なシステム構成及びプロジェクト進行を考えるべきであるため、システムの必要要件、予算、拡張性、保守性、開発メンバーのスキルセットなどを総合的に判断して選定する必要があります。
そういった考えの上で、本当に忖度なく言いますが、AI推論が必要なコンテンツ開発でインテル製PCとOpenVINO™の選択肢は全然ありだと考えています。前述した様に、Open Model Zooに商用可能なAIモデルが既にあり、実装ハードルも低く、インテル製PCとの相性が良く、推論スピードも最適化されている、これだけで選択肢として挙げる価値があると思っています。もちろん他のシステムとの連携のしやすさや、特殊なAIモデルを使うなどのケースだと別の選択肢になりますが、使える武器を1つ持っているという安心感はありますね。
今後もテクノロジーの進化に注目しながら、新たな表現方法を追求していこうと思います。
*1「OpenVINO™」:https://www.intel.co.jp/content/www/jp/ja/internet-of-things/openvino-toolkit.html
*2「Open Model Zoo」:https://github.com/openvinotoolkit/open_model_zoo
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