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【イベントレポ 後編】ブロックチェーン用語を日本語にしてみる

先日行われた「特別企画 ブロックチェーン用語を日本語にしてみる」の全文書き起こしを行いました。スピーカーについてはこちらの「イベント概要」をご覧ください。

前編はこちら

今回は後編として、議題4「ステーキング」議題5「ブロックチェーン」の内容をご紹介します。

議題4「ステーキング」

次の議題は「ステーキング」です。投票に入る前に、「ステーキング」について、イーサセキュリティ 加門さんに解説いただきます。

加門:ステーキングの対になる言葉はマイニングです。
マイニングとステーキングは本当に双子のような存在で両方ともブロックチェーンの新しいブロックを作るためのもの、そしてそのブロックを作ったら報酬がもらえるという仕組みの2つの性質を持ってます。

今回集まったワードは報酬の方が結構フォーカスされているので、ステーキングの技術的なところの補足をします。マイニングはハッシュパワー(電気量/CPUの速度)が速いものほどコインがたくさんもらえる、新しいブロックを生成されやすい特徴がありますが、ステーキングは持っている枚数や保有数に応じて報酬がもらえるもので、株式の配当に近いです。そういった技術的な違いがあることを踏まえて、答えが報酬系が多かったように感じました。

ステーキング報酬だと技術的な面の見え方もあるかな、と思います。
各通貨バラバラの方法が使われているのでトークンと同じように千差万別ですが良い言い換えがあると良いな、と思っています。

それでは、事前アンケートで出たワードを種類別にまとめたものをご覧ください。提案されたステーキングの用語を分けると「配当」系、「資産」系、報酬」系に分けることができます。

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では、仮想NISHI賞の発表に移りたいと思います。「議題2:ステーブルコイン」はどのようなワードなのでしょうか。仮想NISHIさん、お願いします。

仮想NISHI:はい。仮想NISHI賞「ステーキング」は「焼肉王」ということで、非定期氏さん/ポップンジャップンさんのものに決まりました。

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仮想NISHI:これは、ステーキキングと間違えているのかな?という感じですが「焼肉王」これ以上の言葉が見つかりませんでした。

原沢(司会):それでは投票にうつりましょう。投票時間は5分間です。その間はゲストと審査員のフリートークタイムとさせていただきます。

【フリートーク】
仮想NISHI:これはマネックス、コインチェックの松島さんにお聞きしたいです。ステーキングの用語についてどうでしょうか。

松島:そうですね、CoinCheckでは今年1月に国内交換業者として初めてLisk(LSK)のステーキングサービスを始めて、現在は対応通貨の追加に向けて動いています。
ステーキングについては加門もおっしゃっていましたけどプロトコルのガバナンスの話になるのかな?と思っていましたが、今回出てきた候補は大半が「報酬」で、確かに報酬に目を向けると「株式配当」「預託金利」という発想になると思うのですが、ハードフォークの時がそうだったように、一般の心理的にお金に目がいっているのかな?という印象を受けて、興味深く見ています。

仮想NISHI:では、法律上の観点から小塚先生何かご意見ありますか?

小塚:なかなか難しいと思います。
どちらかというとステークをする行為、要するに「関与」していくというものなのかと思っていたんですが、お聞きしていると仕組みのようなものなのかな?という気もしています。
システム自体に寄与するところ、利益に対して報酬を与えるという部分インセンティブ的な構造は税法で言うと確かに配当が近い、利息や配当も当てはまるのかな?と思います。所有に対する報酬となると経済学的には利子とか配当が近いと思っています。

仮想NISHI:ここに関して森さんはどのようにお考えでしょうか?

森:小塚先生が仰っていたように、配当の観点が近いと思っています。
まずマイニングの作業があり、それを保持する作業に当たるのがステーキングですよね。専門は民法ですが民商法の観点から考えると、商法の中でも特に会社法でいうところの株式会社に近い部分があると思います。

仮想NISHI:法律的に考えて「配当」と言う言葉は使っても問題ないんでしょうか?株式の専門用語かな、と思うのですが。

森:直接的な意味で配当と言ってしまうのは問題があると思います。株式会社の配当と混合してしまうので、特殊配当や特殊報酬という概念で捉えていただき、ただの配当ではないという点だけ考慮していただければと思います。

仮想NISHI:難しいところですね。山本さんはどれがわかり易いと感じましたか?

山本:最近、暗号資産初心者向けの方にXtheta ChannelというYouTubeを配信しているのですが、ステーキングを一般の人に理解してもらうのはとても難しいと思ってます。マイニングとステーキングを分けてわかりやすく伝えていけたら良いな、と思います。

仮想NISHI:ありがとうございます。では、田上さんお願いいたします。

田上:教育サービスを運営している身から説明をさせていただきたいと思います。ステーキングというのは明確に配当や報酬ではないと思っています。ステーキングをした後のものが配当や報酬となるので、ステーキング=配当、報酬ではないです。

これらが何のために存在するかというとコンセンサスアルゴリズムのネットワークのセキュリティ性を高めるためのもので、マイニングと同様にProof of Steakにおける分散性を高めるためのものがステーキングなので、これは報酬ではないかな、と思っています。なので、「セキュリティ〜」とつくものがいいかなと思いました。

アメリカのProof Of Stake Allianceというステーキングに関する自主規制団体があるのですが、今年の5月に「配当・利益・利回り」と言った金融用語を使用しないという方針を出していて、投資に関するアドバイスもステーキングに関してはしないというガイダンスを出しているので、日本にも今後この流れが来るのかなと思います。

---フリートーク・投票終了---

議題5「ブロックチェーン」

次の議題は「ブロックチェーン」です。投票に入る前に、「ブロックチェーン」について、ビットフライヤーブロックチェーン 金光さんに解説いただきます。

金光:今更ブロックチェーンについて説明するのは手に負えないので
bitFlyer共同創業者、miyabi開発者のCTO小宮山さんにお願いします。

小宮山:まさに、ここに参加している皆さんにブロックチェーンについて何を言おうかと思ったのですが、ひとつ勘違いしやすいところをお話しできればと思います。
それは「分散」というキーワードについてです。
おそらくブロックチェーン=分散というのはイメージするところだと思います。麻生大臣もその分散というキーワードにWinnyを想起して、怪しさを感じたのかなと思います。実際、ブロックチェーンはサーバーが分散しているという意味では分散していますが、そこは本質ではないです。
サーバーがたくさんいてどのようにコンセンサスアルゴリズムをとるのかというのは確かにブロックチェーンの主要な構成要素ですが、わたしが強調したいのはもうひとつの分散についてです。
それは全員がバラバラに「秘密鍵を持っている」ということです。

つまり、デジタル的なシステムなのに特定IDがないんです。各個人がマイナーも含め勝手に秘密鍵を持っていて、誰一人として全部の秘密鍵を知ることはできない。
そう言った意味で完全に権限が分散しているというのがブロックチェーンがブロックチェーンたる所以であり、他の技術とは異なる部分だと思います。

ブロックチェーンの分散は、権限が分散しているということであり、ある意味では究極の民主主義と思っています。国家であろうと何であろうとその権限を犯すことができないからです。そういった側面が次世代を築く礎になるんじゃないかと思い「miyabi」を含めて開発をしています。

それでは、事前アンケートで出たワードを種類別にまとめたものをご覧ください。提案されたブロックチェーンの用語を分けると「台帳」系、「技術」系、「データベース」系、「記録」系に分けることができます。

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では、仮想NISHI賞の発表に移りたいと思います。「議題5:ブロックチェーン」はどのようなワードなのでしょうか。仮想NISHIさん、お願いします。

仮想NISHI:はい。仮想NISHI賞「ブロックチェーン」は「サトシネット」ということで、まえあしさんのものに決まりました。

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仮想NISHI:悠久の時を経た彼の意思を感じました。もしもビットコインを最初に作ったサトシナカモトさんが、今もいたなら「ブロックチェーン」のことをサトシネットと付けたのではないかな、と思い選びました。

原沢(司会):それでは投票にうつりましょう。投票時間は5分間です。その間はゲストと審査員のフリートークタイムとさせていただきます。

【フリートーク】
仮想NISHI:DLTエンジニアのますあーさんブロックチェーンについてどう思いますか?

ますあー:ブロックチェーンの1番いいところは「止まらないところ」だと思います。動き出して、勝手に止まらない。何かを設計した時も、誰かが不正な攻撃を仕掛けたとしても皆が参加している限りは止まらない。

それがビットコインでいうと計算力を担保として、改ざんもされないしマイニングがあるから止まることもない。一方、止まらないというところがシステム的にありがたいと同時に、個人がサーバーで各自が処理しているので仕組み上どうしても検索性が低くなってしまうという相反する要素があると思っています。ただ、やはり最大の価値は「動き続ける」というところにあると思います。

仮想NISHI:小塚先生はどのような見解をお持ちでしょうか。

小塚:そうですね、民主的であるという部分は非常に重要だと思います。
個人がそれぞれに秘密鍵を持っていることで、今後は個人情報をみんなそれぞれが貯めていくという時代になっていくと思います。なのでブロックチェーンの現状の技術的なところではなく、民主的な情報を貯めて利用することを可能にしてプラットフォームを作る技術であるという部分、今後の役割や機能を考えるとプラットフォームという言葉を入れたいなと思っています。税法的な観点で言うと、申告書や帳簿もブロックチェーン上に載って行って、証明していくことができるような夢のある技術、より良い個人情報管理のプラットフォームだということを強調してあげたいと思います。

仮想NISHI:田上さんは初学者にブロックチェーンを伝えるときにどのように伝えていますか?

田上:そうですね、ブロックチェーンて何ですか?と言う問いはインターネットって何ですか?と言っているのと一緒かなと思っています。
我々がこれだけブロックチェーンに惹きつけられているのは、三者三様の表現ができるからかなとも思っていて、結論としてはそれぞれあっていいんじゃないかな?と思います。サトシネットはとてもいいと思います。

仮想NISHI:ありがとうございます。最後に森さんお願いします。

森:ブロックチェーン技術に「分散」が強調されていますが、今まである電子マネーは会社に対する前払いで発生するあとでその対価を得られる債権債務関係でありますが、それに対してブロックチェーンを用いたものは現状、債権債務関係でもなく民法85条で言うところの「物」でもない部分が問題となっているのでそこがうまく解決できるといいな、と思っています。

---フリートーク・投票終了---

仮想NISHI:ここで本日の特別審査員である音喜多議員からご挨拶をいただきます。よろしくお願いいたします。

音喜多参議院議員:大変貴重なディスカッションでした。特に最後の「ブロックチェーン」には興味があり、おそらく審査員の中で一人だけ「非中央集権型堅牢情報技術」に投票させていただきました。

これは本質をついていると思っていて、中央集権を打ち破る技術ブロックチェーンだと思っていてその部分に惹かれています。今の権力の源泉となっている中央集権ではなく、次世代的な自立分散型の社会を作っていくための肝になると思っています。ぜひ、本質をついたネーミングや考え方、捉え方を持った言葉に決まって欲しいと思っています。

本日はありがとございました。

結果発表

今回の「ブロックチェーン用語を日本語にしてみる」にて議論した5つのキーワードの中で見事対象となったワードをご紹介します。

暗号資産=デジタルコイン
@KanemitsuMidori

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ステーブルコイン=法定通貨連動型電貨
@mono_i_love

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トークン=スマート証標
@taka4198aq

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ステーキング=デジタル預託
junya kato

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ブロックチェーン=対改ざん性分散型記録簿
@KanemitsuMidori

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以上、「特別企画 ブロックチェーン用語を日本語にしてみる」後編をお送りしました。

前編TOPICS
議題1「暗号資産」
議題2「ステーブルコイン」
議題3「トークン」


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