壬生義士伝
2000年に浅田次郎が発表、
2002年に文春文庫で刊行、
2003年に滝田洋二郎監督で映画化された。
どの順番で僕が出遭ったか、
はっきりと覚えてはいない。
先に書いたが、僕にとって、
浅田次郎は「鉄道員」で、
「蒼穹の昴」ではなかった。
浅田次郎初めての時代小説だった。
新選組の作品はいろいろ読んでいたが、
司馬遼太郎と池波正太郎しか、
どうしても受け入れられなかった。
だが、この作品だけは違った。
たぶん、映画が先だったと思う。
吉村貫一郎を演じた、中井貴一の演技に瞠目した。
久石譲の音楽も、もちろんよかった。
以降、新選組3部作を執筆する。
「輪違屋糸里」
「一刀斎夢録」
である。
どれも視点がいい。
売れるからと闇雲に書いたりはしない。
書きたいものを書いている。
北方謙三と同様、ハードボイルドな時代小説家が、
司馬、池波、藤沢亡き後、
2000年代の旗手となった感がある。
歴史好きの僕は30代になり、
時代劇や時代小説が、面白いと思えてきた。
藤沢周平や永井路子も読むようになった。
有名な武将や志士じゃない、
創作だからこそ心に目を向けられる。
どんな行為にも、心がある。
心が身体を動かし、その行為が胸を打つのだ。
人の心は、弱くて、強い。
日本の歴史と自然の中で、輝きを放つ。
時代が変わっても、人間の本質は変わらない。