同じ空間にいるだけで
中学校の学校祭があった。
本部役員の娘は、何週間も前から色々準備をしていた。
「ねぇ お母さんミセスのライラックって曲、知っている?」
「聴いたことはあるよ」
「MVを何度も確認しておいて欲しいんだけど」
「なんで?」
「これを真似してうちの中学バージョンの動画を撮って流すことにしたの。元ネタを知っていたほうが面白いと思って」
学校祭では、合唱コンクールも行われるので、娘は電子キーボードを弾きながらリビングで歌の練習もしていた。
息子もスマホ片手にリビングで歌っていることが多い。
なぜか少し古めのこんな曲とか。
二年前も歌っていた。
帰宅した夫がリビングの戸を開けると、3曲が同時に流れている状態である。
「うちは、毎日誰か歌っている🎤なぁ」
夫は、こういう時もウルサイ!!とは言わない。
「全員いるなんて珍しいね」
「おっ!そういえばお父さんもこないだ 昭和平成に流行った曲〜を録画したなぁ。流すか」
えっ?
この状況でテレビつけるの?
テレビ画面には、聖子ちゃんや明菜ちゃんが映し出された。
もはやチョコ家のリビングは、カオス状態である。
相変わらずバラバラ家族。
母さんは、途中でミセスから聖子ちゃんに浮気しちゃったけれどね。
子供が成長するにつれ、家族全員がリビングに揃う時間が少なくなってきた。
単身赴任が多かった夫にとっては、同じ空間に家族が揃っているだけでも嬉しいのかもしれない。
とはいえ、
この数十分後には、夫だけになってしまったのだが。