梅雨前に思い出す気象病
介護をしていた数年前の話。
めまいがするので病院に連れっていって欲しいと、義母に頼まれた。
耳鼻科に行き、色々と検査をしたのだが、異常は見当たらなかった。
高齢者は、自分の体の不調をうまく伝えることが難しい。
傷のように見てわかるのであれば、こちらも助け舟を出しやすいのだが。
「めまいは、いつ起こることが多いですか?」
「天井がくるくる回っていますか?」
「ふわふわした感じですか?」
「それは、いつもどのくらいで回復しますか?」
次々に質問が飛んでくる。
この時、すでに認知症を発症し始めていた義母にとっては、素早く正確に答えることは難しい。
診察前に看護師さんに伝えておくべきだったと反省する嫁。
義母に気づかれないように看護師さんに耳打ちして伝える。
看護師さんがメモで医師に伝えてくれた。
そこからの質問は、ゆっくりとしたペースに。
「検査の結果、異常は見当たりません。気圧の変化などで、体調不良をおこす高齢者の方が、けっこういるんですよ。お薬出しておきますね」
半ば年齢のせいにされたことに義母は腹を立てていたが、なんとか診察を終えることができた。
結局、めまいの薬だけをもらって帰ってきた。
これで治らなければ、大きな病院の紹介状を書くので来てくださいと。
総合病院にまた行くことになるかもしれない。
それを考えただけで、嫁のテンションダウン。
薬が効いてくれ〜と心の中で祈る。
嫁の祈りが通じたのか、その薬が効いたようで翌日には、めまいもなくなったらしい。
しばらくして、『気象病』という言葉に出会った。
それを義母に伝えると、
「そう、それよ!わたしは、気象病だったのよ」
と、勝手に納得。
「気象病を治すには、自律神経のバランスを整えることが大切みたいですよ」
「早寝早起き、適度な運動や睡眠など規則正しい生活を送るのが大切らしいですよ」
と付け加えたのだが、嫁の言葉は全て聞き流され、
「病名がわかって良かったわ。それにしても先生は、どうしてわからなかったのかしら」
と医者への不満を爆発させていた。
「わたし、気象病だったわ〜」
と
お義姉さんにも電話で報告をしたようだ。
「ねぇ〜嬉しそうに電話をかけてきたんだけど」
お義姉さんから連絡がきた。
はて?(朝ドラ風に)
嬉しそうとは?
不調の原因がわかり、モヤモヤが減って嬉しかった(病名自己判断)のか?
単に体調が回復したことが嬉しかった(と思いたい)のか?
嫁のチョコから聞いたというのが、テレビでやっていたに変換されていたのは、ご愛嬌ということで。
義母の体調不良が、本当に気象病だったのかはわからない。
なぜなら
雨の多い梅雨の時期も、気圧の変化が起こりやすい台風が近づいてきた時も、その後、めまいの症状は全くあらわれなかったから。
翌日には、朝6時から元気にグランドゴルフをやっていたのである。
これ以降、耳鼻科に通院することはなかった。