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思いこみ
平日、4時間だけのパートを6月から始めている。
わたしの勤務時間は13時まで。
先週のある日。
12時45分にピンポ~ンと事務所のチャイムが鳴った。
チャイムが1回だと事務所で、2回だと先生の自宅の来客と鳴る回数で区別されるシステム。
1回だけだったので、宅配便だと思いインターホンに向かって歩き出した瞬間に、ガチャ!と鍵が開く音がした。
先生は、流しで歯磨き中。
ん?
誰?
部屋の扉を開けて玄関に目を向けると
「こんにちは~」
と知らない女性が入ってきた。
相手もわたしを見て
驚いたような表情を浮かべた。
なんと声をかければいいのかと思った瞬間
後ろから先生が
「松本さん!」(仮名)
「あれ?どうしたの?」と。
「えっ?仕事に来たのですが」と女性。
「今12時45分だよ」
「え?13時45分ではないんですか?」
思わず、わたしも自分の腕時計を確認。
12時45分で間違いはない。
「一時間早く来たということですか?じゃ~帰ってまた来ます」
「いやいや、せっかく来たんだから。13時から始めて一時間早く帰ってもいいですよ」
「近いし帰ってまた来ます」
「もうすぐ13時になるので、わたし帰りますから。どうぞ」とわたしも松本さんを引き留めた。
そこで、二人が初めて顔を合わせたことに先生が気がつき
「二人が会うのは初めてだったね。こちら午前中に仕事をしてくれているチョコさん、こちら午後からの松本さん」
こんな形で、午後からの人に会えるとは思っていなかった。
「では、また後で来ます」
挨拶が終わると、松本さんは帰っていった。
「わざわざ帰らずに仕事をしてくれてもよかったのにね」と先生。
「帰ってまた来るのも大変ですよね」
なんて雑談をしているうちに業務終了。
帰りに運転をしながら、鍵を開けて入ってきたのにどうして午後からの人だと思わなかったのだろうと考えていた。
松本さんの顔も年齢も知らないが、伝票の字や数字は知っている。
伝票に書かれてある字は、いわゆる丸文字。
数字も何年も経理をやっている人が書く数字ではない。
20代後半から30代前半の子育て中ママさんだと文字や数字から勝手に想像していたのだ。
玄関から入ってきた女性は、自分より歳上に見えたので、午後からの人とは思わなかったのだろう。
自分の思いこみとはいえ、あの丸文字から70歳女性が書いたと当てられる人っているのかな。
こういう考えが、偏見と言われるのだろうな。
自分の基準で、勝手に決めつけていることってまだまだありそう。
事務所内で自分が一番歳下だったということ。
これは、思いこみではなく事実。
このことに一番驚いた日だった。