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空き家を放置すると空家法の対象に

年々空き家が増え続けているという。空き家は、倒壊、景観悪化など様々な悪影響が生じ、大きなトラブルにつながりかねない。あらたな対策として「管理不全空家」などの制度が導入された。


|「空き家」とは

「空き家」とは、ひと言でいうと「管理されていない家」という。
空き家は、所有している本人だけの問題ではなく、管理せずにそのまま放置すると近隣にも大きな影響を与える存在となる。

|「特定家屋」とは

そのまま放置すれば倒壊などの危険性が高く、近隣に悪影響を及ぼす空き家を「特定空家」に認定し、市区町村による指導や勧告、解体などの強制執行を行うことができることを定めた「空家等対策の推進に関する特別措置法」(通称「空家法」)に基づき対応してきたところである。

|「特定空家」の要件

空家法では、次の状態に当てはまると市区町村から「特定空家」と認定される。

① そのまま放置すれば倒壊など著しく保安上危険となるおそれのある状態
② そのまま放置すれば著しく衛生上有害となるおそれのある状態
③ 適切な管理が行われていないことにより著しく景観を損なっている状態
④ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態

|特定空家に対する措置

「特定空家」と認められると、市区町村は所有者に適切に管理をするように「助言」「指導」を行い、それでも改善が見られない場合は「勧告」「命令」を行うことになる。

所有者が命令に従わない場合、50万円以下の過料に処される場合があるほか、行政による強制撤去等の対応が行われる場合もある。

|管理不全空家

一層の空き家対策を推進するため、令和5年(2023年)に空家法改正が行われ、「管理不全空家」という新しい措置が設けられた。

これは、周囲に著しい悪影響を及ぼす特定空家になる前の段階から空き家の適切な管理が図られるようにするため、市区町村が「管理不全空家」に認定することができるとしたもの。

その内容としては、管理指針に基づく管理を行うことを空き家の所有者等指導・勧告できるようになった。
空家法の改正により、空き家対策が強化されたのだ。

|「空家等管理活用支援法人制度」の新設

これまでは、空き家の所有者が空き家の活用や管理の方法などに係る情報を入手したり、相談したりできる環境が十分でないことが課題であった。

そこで市区町村は、空き家の活用や管理に積極的に取り組むNPO法人や社団法人などを「空家等管理活用支援法人」に指定できるようになった。

指定された法人は、所有者からの空き家の活用や管理方法についての相談への対応や、所有者と活用希望者のマッチングなどを行い、空き家の活用を促進する。

|「空家等活用促進区域制度」の新設

市区町村が重点的に空き家の活用を図るエリアを「空家等活用促進区域」に設定できる制度が新設された。

この区域内では、市区町村は空き家の所有者に対して、市区町村が定める指針に沿った空き家の活用を要請できるようになった。
また、建築基準法の規制などがネックになっているケースがみられることから、必要に応じて用途規制前面道路の幅員規制の合理化ができるようになった。

|行政による強制撤去等の円滑化

緊急的に除却(解体)などが必要な特定空家に対して、命令等の手続きを経ずに行政による強制撤去等(代執行)をすることが可能となった。
例えば、台風など自然災害による危険が迫っているときなどに、迅速な安全確保ができるようになったのだ。

|所有者の責務の強化

空家法改正により、所有者の責務も強化され、「適切な管理の努力義務」に加えて、「国、地方自治体の施策に協力する努力義務」が課されることになった。

空き家は放置される期間が長くなればなるほど、老朽化や損傷が進み、売買や賃貸などが難しくなる。
空き家を所有していて将来使用する予定のない人は、早めに「売る」「貸す」「解体する」などの方針を決めて、適切に対応することが大切。

|空き家放置のリスク

空き家を放置することによりリスクが発生することになる。
代表的なのは
○ 固定資産税の増加
○ 資産価値の低下

である。

空き家を放置し続けると、「特定空家」に指定されることになるが、特定空家に指定された場合、建物の価値はなくなる(資産価値の低下)ため住宅用地特例が受けられなくなるのだ。
そのことにより、特例で減額されていた固定資産税1/6が、適用外となるため固定資産税が高くなるのだ。

|おわりに

実際問題として、都市部の空家は売却等が可能かもしれないが、田舎の家屋や土地は利用価値がなく売却等は不可能に近い。

そのため相続放棄しようとしても、その手続きに多くの時間と経費を必要とするのだ。
田舎の空き家は、売れない、解体にかなりの費用を要することなどから空家法に対応したくても対応できないという歯がゆさもあるのだ。

空き家問題は、お一人様や子どものいない家族が多くなっていることから、将来相続人のいない(親族など法律上は存在するかもしれないが・・)家屋等が増えていくと予想されるので、空家法だけではなくもっと実態に即した斬新な制度が求めらることになるであろう。

参考:



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