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消費者契約法の概要

平成28年、30年、令和4年の通常国会・臨時国会の改正で、取消し・無効の範囲が拡大しています。有効に活用しないと・・ね。


|消費者契約法

消費者契約法は、事業者と消費者の関係において、不当な勧誘による契約の取消しと不当な契約条項の無効等を規定している。

|諸費者契約法の改正

平成18年の法改正により消費者団体訴訟制度が導入され、翌年6月より運用されており、平成20年の法改正では、消費者団体訴訟制度の対象が景品表示法と特定商取引法に、平成25年の法改正では、食品表示法に拡大された。

その後、平成28年、30年、令和4年には、取り消しうる不当な勧誘行為の追加、無効となる不当な契約条項の追加等の民事ルールの改正が行われた。

|取消し

➤ 不当な勧誘により締結させられた契約は、後から取り消すことができる。

○ うそを言われた(不実告知)
重要事項について事実と異なることを告げた。

,例えば、真実に反して「溝が大きくすり減っていて、このまま走ると危ない、タイヤ交換が必要」などと告げ、新しいタイヤを販売する行為など。

○ 不利になることを言われなかった(不利益事実の不告知) 
消費者の利益となる旨を告げながら、重要事項について不利益となる事実を故意又は重大な過失によって告げなかった。

例えば、眺望・日照を阻害する隣接マンションの建設計画があることを知りながら、そのことを説明せずに「眺望・日照良好」と説明してマンションを販売する行為など。

○ 必ず値上がりすると言われた等(断定的判断の提供)
将来における変動が不確実な事項について確実であると告げた。

例えば、将来値上がりすることが確実ではない金融商品を「確実に値上がりする」と説明して販売する行為など。

○ 通常の量を著しく超える物の購入を勧誘された(過量契約)
消費者にとっての通常の分量を著しく超えることを知りながら、消費者契約の勧誘をした。

例えば、一人暮らしであまり外出せず、日常的に着物を着用することもない高齢の消費者に対して、事業者がそのことを知りながら、その消費者が店舗に訪れた際に勧誘し、着物を何十着も販売する行為など。

○ お願いしても帰ってくれない(不退去)
消費者が事業者に対し、退去すべき旨の意思を示したにもかかわらず事業者が退去しなかった。

例えば、’消費者の自宅等において、消費者が何度も帰ってほしい旨を告げているのに勧誘を続けて販売する行為など。

○ 帰りたいのに帰してくれない(退去妨害)
消費者が退去する旨の意思を示したにもかかわらず消費者を退去させなかった。

例えば、事業者の販売店等において、消費者が何度も帰りたい旨を告げているのに勧誘を続けて販売する行為など。

○ 退去困難な場所へ同行
勧誘することを告げずに消費者を退去困難な場所へ連れて行き、消費者が退去困難であることを知りながら勧誘をした。

旅行に行こうと告げて消費者を山奥の別荘に連れて行って商品を販売。

○ 威迫する言動を交えて相談の連絡を妨害
消費者が消費者契約を締結するか相談を行うため、電話等によって第三者に連絡したいと言ったが、事業者が威迫する言葉を交えて連絡を妨害して勧誘をした。

ウォーターサーバーを買うか親に相談したいと消費者が言ったのに、それはダメだと相談を妨害して勧誘する行為など。

➤ 不当な勧誘により締結させられた契約は、後から取り消すことができる。

○ 就職セミナー商法等(不安をあおる告知) 
消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから(幻)、願望(※2)の実現に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた。

財就活中の学生の不安を知りつつ、「このままでは一生成功しない、この就職セミナーが必要」と勧誘。

○ デート商法等(好意の感情の不当な利用
消費者が、社会生活上の経験が乏しいことから(幻)勧誘者に好意の感情を抱き、かつ、勧誘者も同様の感情を抱いていると誤信していることを知りながら、契約しなければ関係が破綻すると告げた。

-S N Sで知り合った男性と何度か連絡をして好きになった。宝石展示場に誘われて行ったところ、「買ってくれないと関係を続けられない」と男性から言われ契約。

○ 高齢者等が不安をあおられる((判断力の低下の不当な利用)
加齢や心身の故障により判断力が著しく低下していることから、現在の生活の維持に過大な不安を抱いていることを知りながら、不安をあおり、契約が必要と告げた。

○ 霊感商法等((霊感等による知見を用いた告知)
霊感等の特別な能力により、消費者又はその親族の生命等の現在生じ若しくは将来生じ得る重大な不利益を回避できないとの不安をあおり、又は不安に乗じて、契約が必要と告げた。

○ 契約前なのに強引に損失補償を請求される等(契約締結前に債務の内容を実施等)
契約締結前に、契約による義務の全部若しくは一部を実施し、又は目的物の現状を変更し、実施前の原状の回復を著しく困難にした。

契約締結前に、契約締結を目指した事業活動を実施し、これにより生じた損失の補償を請求する旨等を告げた。

○ 取消権の行使期間
取消権の行使には期間制限があるので要注意。

|無効

➤ 消費者の利益を不当に害する契約条項は、無効

○ 事業者は責任を負わないとする条項
損害賠償責任の全部を免除する条項、事業者の故意又は重過失による場合に損害賠償責任の一部を免除する条項や、事業者が責任の有無や限度を自ら決定する条項は無効。
★ 「当社のコンピューターシステム、ソフトウェアの故障、誤作動により生じた障害については、当社は免責されるものとします」とする条項。
★ 「当社が、当社(こ過失があることを認めた場合(こ限り、当社は損害賠償責任を負うものとします」とする条項。
★ 「当ジムは、会員の施設利用に際し生じた傷害、盗難等の人的・物的ないかなる事故についても一切責任を負いません」とする条項。

○ 消費者はどんな理由でもキャンセルできないとする条項
消費者の解除権を放棄させる条項や事業者が消費者の解除権の有無を自ら決定する条項は無効。
★ 「お客様は、当社に過失があると当社が認める場合を除き、注文のキャンセルはできません」とする条項。
★ 「販売した商品については、いかなる理由があっても、ご契約後のキャンセル・返品はできません」とする条項。

➤ 消費者の利益を不当に害する契約条項は、無効

○ 成年後見制度を利用すると契約が解除されてしまう条項
事業者に対し、消費者が後見開始等の審判を受けたことのみを理由とする解除権を付与する条項は、無効となる。

○ 平均的な損害の額を超えるキャンセル料条項
キャンセル料のうち、契約の解除に伴う平均的な損害額を超える部分や、遅延損害金につき年利14.6%を超える部分についての条項は無効。

○ 消費者の利益を一方的に害する条項
任意規定の適用による場合と比べ消費者の権利を制限し又は義務を加重する条項であって、信義則に反して消費者の利益を一方的に害するものは無効。

|努力義務

➤ 事業者は情報提供や説明に努める必要がある

○ 勧誘時の情報提供等
❶契約条項を定めるに当たって、その解釈について疑義が生じない明確で平易なものになるよう配慮すること
❷勧誘に際し、契約の目的物の性質に応じ、事業者が知ることができた個々の消費者の年齢、心身の状態、知識及び経験を総合的に考慮した上で消費者契約の内容についての必要な情報を提供すること
が明確化された。

○ 定型約款の表示請求権に関する情報
提供事業者は、消費者が民法上の定型約款の表示請求権を行使するために必要な情報を提供するよう努めなければならない。

○ 解約料の算定根拠の説明
事業者は、解約料を請求する際に消費者から求められたら、
解約料の算定根拠の概要を説明するよう努めなければならない。

➤ 事業者は適格消費者団体からの要請対応に努める必要がある

○ 適格消費者団体の要請に対応
事業者は、適格消費者団体から、
①不当条項と疑われる契約条項の開示、
②解約料の算定根拠(営業秘密は除きます。)の説明、
③差止請求を受けて行った措置の内容の説明
を要請されたときは、これに応じるよう努めなければならない。

|おわりに

消費者保護のための法律です。
いろいろな契約上のトラブルが発生したり発生しそうな場合には消費生活センターに相談してみるとよいですね。

参考:https://www.caa.go.jp/policies/policy/consumer_system/consumer_contract_act/public_relations/assets/consumer_system_cms101_231107_01.pdf


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