見出し画像

トレーラーハウスについて

近年ではずいぶんと知名度を上げたトレーラハウス。
牽引車(けんいんしゃ)で引きながらどこへでも移動できるというのがトレーラーハウスの魅力。しかしそれ故に法令上の規制もあるので注意が必要なのです。


|トレーラーハウスとは

トレーラーハウスとは、車でけん引して移動できる家(居住スペース等)のこと。
まさに「トレーラー」であり車両としての位置づけになるが、家として居住することもできるので「ハウス」という表現がされている。

アメリカでは「モーターホーム」とも呼ばれており、キャンプや旅行での拠点としてよく使われている。
そもそもアメリカなどでは、広大な国土で道幅の広い道路があるため、大きな車でトレーラーハウスを牽引して悠々と走行することができる。
そのため、牽引車(引っ張る方の車)のサイズやエンジンのパワー、牽引できる能力、つまり「この車は○○tまでけん引できる」というようなことが記載されている。

|トレーラハウスは車or家?

結論を先にいうと、原則として「車であり家ではない」というのが法令の位置づけといえる。

車輪が付いているなどその形状等からもトレーラーであり、法律用語で言うと「被牽引車両(ひけんいんしゃりょう)」ということになる。
ただし、車輪を取り外し敷地内に固定して使用する場合や電気、上下水道などを取り付けて移動できないようにした場合には「家」ということで建築物として取り扱われることになる。

もちろん居住スペースが付いており、見るからに超豪華なトレーラーハウスといわれる商品もあるが、基本的には場所を移動させて使用する車両の一部を利用した工作物だ。

|基準を超えるサイズの場合にはどうなる?

トレーラーハウスは『道路運送車両の保安基準』に則るべき「自動車(被牽引(ひけんいん)車)」ということになる。
その基準としてはいろいろあるが、一例としてあげればサイズ。
日本の道路の基準に対応して
 「車幅2500mm未満、車高3800mm未満、車長12000mm未満」
とされている。

では、上記のサイズを超えるものは、トレーラーハウスではなく「家」、つまり建築物なのか。道路を移動できないのか?

東日本大震災の後、被災地の方々の居所などに使用するためトレーラーハウスを高速道路などを使って移動・搬送する事案があった。
その際に、前記の保安基準を超える幅や長さの製品も基準内のトレーラーハウスに混在して高速道路などを走行しており、道交法や道路法などの法令に違反する行為であるとして問議されたことがある。

その後『道路運送車両の保安基準』に適合せず、自動車として認められないトレーラーハウスについて、平成24年(2012年)12月27日に『トレーラーハウスの運搬に係わる制度改正』が行われ、基準適合外のトレーラーハウスが道路を走る場合、運輸局に「基準緩和の認定」を申請し、認定を受けたのち2カ月間のみ通行できるようになったのだ。

|自動車税等が必要になる

基準に適合するトレーラーハスは、自動車の区分の一つ「被牽引車両」であり、登録しナンバーを受ける必要ある。
そのため、自動車取得税、自動車重量税、自動車税などが必要であり、自賠責保険に加入することも義務付けられている。

自治体が当該トレーラーハウスが建築物ではなく、車検付きの車と認めれば固定資産税等は不要だが、車としての税金や車検整備費用が発生することになる。

自動車取得税:トレーラーハウスを購入した際に支払う税金。
自動車重量税:重量に応じて、車検時に支払う税金。
自動車税:自動車を所有している方に課税される道府県税(毎年1回)。
これらの税額については購入したトレーラーハウスの金額やサイズ等によって異なる。

基準に適合しない大きいサイズの「車両ではないが『基準緩和』を申請すれば道路を走れるトレーラーハウス」の場合、基準緩和による臨時走行許可車ということで、税金に関する法律等がなく、グレーゾーンであり、適切な法整備が望まれるところだ。

|トレーラーハウスのメリット

トレーラーハウスのメリットとしては、大別すると次の点。

👉 初期費用、ランニングコスト等が家より安価
家を購入すると土地代や建設費などが必要であり高額の出費。ほかに固定資産税や不動産取得税などの納付義務も生じる。

その点、トレーラーハウスは車両であり、スペースがあればどこにでも移動して置けることから、初期費用は車体費用だけ。
メンテナンスは必要だが、維持にかかる費用も安価である。

👉 原則、設置場所を選ばない
建築物ではないことから、家を建築することができない市街化調整区域にも設置でき、土地の選択肢が広がるといえる。
なお一般的に農地の場合には、農地転用許可を得る必要がある。

もしもの災害時にもプライベート空間を確保しやすい。
トレーラーハウスはもしもの災害時の避難所代わりにも役立つといわれている。
ガスや電気、水道なども脱着式で接続することができる。

一般的な仮設住宅と比較して、設置すればすぐ使えるなど即効性があり、撤去時の廃棄物がほとんど発生しないのも大きなメリット。
こうした利点から、最近ではインバウンド需要向けのホテル運営や倉庫などにも活用されている。

|トレーラーハウスのデメリット

トレーラーハウスにはメリットも多いが、実はデメリットもある。
購入を考える場合には、事前のチェックが必要である。

👉 自走できない(牽引が必要)
トレーラーハウスの最大のデメリットは、動力を持たない被牽引車であることから自力で走行して移動することができない。
そのため、移動させるたびに運搬コストが発生する。
例えば所有者が自ら移動するためには、引っ張るための自動車の運転免許のほかに、牽引免許が必要になる。
好きなときに自由に移動できないことも理解しておく必要がある。

👉 通行できない道路がある
まさに「移動する家」であり、体が大きく、重量があることから、日本の道路では自由に移動ができないことも多いという。

特に日本の道路は、道幅が狭い、急カーブや曲がり角も多く、人家出入り口が狭い、地盤が弱い場所があるなど、トレーラーハウスを移動し、通行させたり侵入することが困難場所も多い。
設置したい場所が決まれば、事前に走行経路や侵入口などの下見や搬送事業と相談しておくことが必要だ。

👉 「工作物と車」の両面で定期的なメンテナンスが必要
家として使用する場合には、トレーラーハウスも定期的なメンテナンスが必要。
メンテナンスを怠ると雨漏りや錆などが発生し、住み心地も悪くなるという。

一般的なトレーラーハウスには20~30年住むことができるといわれているが、長く住み続けるためには建築物(家等)としてのメンテナンスは必須。

また、車両としても常時、長時間固定することでタイヤなどの経年劣化なども発生する。そもそも車両として移動させるとすれば車検もあることを忘れないことだ。

|トレーラーハウスは大きく2種類

先述のようにトレーラーハウスは下記の2種類に分けられる。

① 法律(道路運送車両の保安基準)上、自動車として認められているトレーラーハウス
② 自動車ではないけれど「基準緩和」を申請すれば道路を走れるトレーラーハウス
の2種類だが、いずれも、
○ 地面に置いても「随時かつ任意に移動できる」
○ 車輪を有する移動型住宅で、原動機(エンジンなど)を備えずけん引車によりけん引されるもの(車両)
の要件を備えることで「自動車であって建築物ではない」ということになる。
①と②の違いとしては、大きさの基準(車幅2500mm・車高3800mm・車長12000mm)を超えるかどうかであり、①は基準内、②は基準を超えるものということになる。

なお「随時かつ任意に移動できる」かどうかを判断するのは、各自治体の建築主事(建築確認申請を審査する担当者)である。
トレーラーハウスを置いて継続的に利用する場合は「建築基準法」に基づいて判断されることになる。

「トレーラーハウスのうち次の3項目に該当するものは建築物である」とされている。
1.トレーラーハウスの移動に支障のある階段ポーチがあること。
2.給排水・ガス・電気・電話・冷暖房等のための設備配線配管をトレーラーハウスに接続する方式が、着脱式(工具を要さずに取り外すことが可能な方式)でないもの。
3.その他トレーラーハウスの規模(床面積・高さ・階数等)・形態・設置状況から、随時かつ任意に移動できるとは認められないもの。

出典:日本建築行政会議 『基本総則』 (2022年度版) 「車両を利用工作物」第2条

|おわりに

トレーラハウスは震災など防災対策における有用性が認められるものである。
上記記載のように自動車としての扱いをするか建築物としての扱いをするのかは、近年一定の線引きができてきたとは思うが、未だグレーの部分もあるのも事実。
國においてもしっかり基準を定めて移動の安全と建築物としての安全で安心できる環境を確保して欲しいですね。

参考資料:
https://trailer-house.or.jp/wp-content/themes/trailerhouseassociation/images/20240220_tha_manual.pdf


いいなと思ったら応援しよう!