
自転車の単独事故が多いって本当?
令和6年の交通事故統計の自転車乗用者の事故類型別交通事故件数の推移をみてちょっと驚き、自転車事故の総数は減少しているが自転車の単独事故は大幅に増加しているので、簡単によみときます。
|令和6年中の交通事故件数等
「令和6年中の交通事故の発生状況」が公表(令和7年2月27日)された。
この中の自転車事故に関する統計をみていくと、
交通事故件数 290,895件(対前年比 -17,035件、-5.5%)
死傷者数 347,058人(対前年比 -21,215人、-5.8%)
であり、発生件数、死傷者数ともに減少している。
もちろん死亡事故件数、重傷事故件数、軽傷事故件数、死者数、負傷者数も減少している。
|自転車事故の総括
自転車事故に関してみてみると
自転車乗用中死傷者数は65,481人(対前年比-4,820人、-4.9%)
であり、死傷者数に占める自転車の死傷者数の構成率は18.9%と3年ぶりに減少した。
◎ 年齢別の死傷者数
年齢別の死傷者数では
15~19歳が11,997人(構成率18.9%)で最多、次いで10~14歳(構成率7.8%)、20~24歳(同7.3%)となっている。
対前年比で大きく減少しているのは、
4歳以下 361人(対前年比-94人、-20.7%)
70~74歳 2,849人(対前年比-521人、-15.5%)
であり、次いで
35~39歳 3,640人(対前年比-422人、-10.4%)
30~34歳 3,404人(対前年比-382人、-10.1%
となっている。
◎ 自転車ヘルメットの着用状況別死傷者数
令和6年中の自転車乗用中の死傷者をヘルメット着用の有無別でみると、非着用は54、241人と全体の82.8%を占めている。
なお、着用死傷者数は10,004人で対前年比+483件、+5.1%と増加しており、ヘルメットの着用率が向上しているものと推察される。

◎ 事故類型別交通事故件数
自転車乗用者(第1・第2当事者)の事故類型別交通事故件数の推移をみると下図のとおりであり、車両対車両の事故が87.4%で最多であるが、注目すべきは自転車の単独事故である。
自転車で転倒したり、壁などの工作物に衝突するなど自転車の単独事故は、自転車事故の総数が減っている中で、平成28年の1,559件以降年々増加している状況にあり、特に令和元年以降大幅に増加している。
ちなみに令和6年は5,493件(構成率8.1%)と平成28年の3.5倍に増加している状況にある。単独事故の中では「転倒」が44,575件で4.2倍になっている。
○ 単独事故が急増している要因
急増の要因は明確ではないが、2016年12月に自転車活用推進法が制定(2017年5月施行)され、その附則に、「自転車の運行によって人の生命又は身体が害された場合における損害賠 償を保障する制度について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。」と規定された。
これを受けて、2018年6月に第一次自転車活用推進計画が制定され、自転車保険の加入促進、自治体の自転車保険加入義務を内容とする条例の制定の推進などが規定されたことなどを背景に、2018年頃より自転車保険の加入率が徐々に高まり、結果としてこれまで警察に報告されていなかった比較的軽少の自己転倒事故などの届出が急増したことも一因にあると推察されるところである。

◎ 自転車の法令違反
自転車(第1・第2当事者)の法令違反別交通事故件数をみると、
安全不確認 構成率18.8%
交差点安全進行義務違反 構成率15.2%
動静不注視 構成率11.4%
となっており、安全運転義務違反が全体の42.0%を占めている。
また具体的な違反行為としては
一時不停止 構成率5.2%
通行区分 構成率1.7%
信号無視 構成率1.5%
などが多い。

◎ 自転車の相手方(相手当事者別)
自転車(第1・第2当事者)の相手当事者別交通事故件数では、
自動車が76.3%を占め、次いで自転車単独、歩行者、自転車相互
となっている。

やはり注目すべきは、自転車単独事故が多いこと、歩行者事故、自転車事故が多いことである。
ちなみに
自転車対歩行者の事故は3,043件(構成率4.5%)
自転車対自転車2,938件(構成率4.4%)
であり、両者を合わせると構成率は8.9%となり、平成27年と比較すると自転車事故件数は3割ほど減少しているが、対歩行者、対自転車事故の計は1.2倍程増加しているなど、自転車が加害者となる可能性のある事故が増加していることは特に注目すべきことであろう。
|おわりに
交通事故の発生は減少し、自転車事故もこの10年で3分の1ほど減少している。
しかし前記のように単独事故の発生が増加し、比較的軽傷の事故が増加している状況にある。
一方で相手当事者が、歩行者や自転車である割合も増加しており、自転車側に賠償責任が生じる事故が増加していることを踏まえて、そのための備え、つまり自転車保険などに加入しておくことも自転車利用者の義務として大事なことである。
万が一に備えた自転車保険(対人・対物・人身補償(運転者自身のけが等を保障)に加入しておきましょう。
参考資料
https://www.jtsa.or.jp/jitensyakai/index.html
https://www.jtsa.or.jp/jitensyakai/index.html