
就職活動につけ込む悪徳商法
就職活動はいつの世も大変なことだ。
さらに昨今では詐欺まがいの悪徳な業者が就職活動中の学生等を狙っているから注意が必要だ!
在学中はもとより、就職活動中の方、その親の方にも悪徳商法が増えていることを認識して対応して欲しいのでこの記事を掲載することにした。
|若者の就職活動が狙われている
人事担当者の立場では、できるだけ即戦術なるスキルを持った人や、すぐに仕事の内容を理解し動ける人を採用したいところである。
一方、就職活動(以下「就活」という。)のために企業訪問に来る学生等も少しでもスキルを高め、就職試験で優位に立ちたいと思うだろう。
ところで最近では、学生などの若者は、人生経験も少なく、その上卒業を前になかなか内定がもらえないと不安が一層高まってしまうという就活者の心の隙間や,不安につけ込んで金儲けをしようとする悪徳な業者が横行しているのだ。
|成人年齢の引き下げが影響か?
成人年齢の引き下げにより18歳以上の契約行為は、原則として有効なものとして成立する。
未成年者の時は、「未成年者取消権」というものがあり、原則として取消しをすることができた。
しかし、当たり前のことだがこの未成年者取消権は成年になると行使できなくなる。そのことなども影響し、若者、特に学生が狙われているといわれている。
|具体的には?
学生など若者を狙った悪徳商法の代表的な例としては、
・ 「無料カウンセリング」をうたい文句に高額なセミナーやビジネススクールへの勧誘、「無料カウンセリング」の後「面接指導」を受けたら有料だったなど、有料商法への誘い込み。
・ 面接やスキルアップ教材と称して物品を購入させられた
・ クレジットカードを作らせられた
など、金にまつわる悪質な勧誘販売例が多い。
以下は、実際に行われていた詐欺まがいの事例として、全国の消費生活センターや警察などに相談が寄せられたものの一部で、就活中の学生の不安につけ込んだ高額なセミナーやビジネススクール等を契約させられたというものだ。
1.学生の就活の不安につけ込む例
ア Web会議で無料カウンセリングを受けたら、高額な就活セミナーを勧誘された。
就活に悩んでいたAは、SNSで「就活塾」の広告を見て早速サイトに登録をした。
Web会議形式の無料カウンセリングを受けたが、その際に「自己分析や面接対策のセミナーを受ければ大手企業に100%内定する」と言われた。
そして「セミナーを受講するための費用は約50 万円だが、定員等があるので即決して欲しい」とその場で判断するよう迫られた。
「定員が・・・!」ということで考える余裕もなく勧められるままに申し込んでしまった。「まず、セミナーのオリエンテーションのための頭金2万円を支払うように」と言われ、後日振り込んだ。
Web会議でのオリエンテーションでセミナーの説明を受け、電子の契約書面にサインをした。
後日、友人に相談すると「高額だけど大丈夫?」と言われ、無料通話アプリのメッセージで「高額で支払えないのでやめたい」と担当者に伝えると、「今やめるのはもったいない。みんな苦しくてもローンで支払っている」と電話で説得され、結果として解約に応じてもらえなかった。
その後担当者やローン会社からの電話がかかってきたが出ないでいると、無料通話アプリのメッセージで「解約に応じる」と連絡が来た。しかし、解約料として契約金額の20%を請求された。
イ Web会議で就活のアドバイスをもらうはずが、高額なプログラミングスクールを勧誘された。
B子さんは、就活の情報収集をする目的でSNSのアカウントを作成したところ、そのSNSのフォロワーの一人から、「エントリーシートの添削を手伝う」と連絡があったので依頼した。
添削では、私に不足している部分ばかり分析され、「あなたは理論的思考力が足りない。プログラミングの勉強をするべきだ」と言われ、「フォロワーの会社の上司から一度話を聞くように」と勧められた。
Web会議に誘われて3人で話をすると、「あなたには当社のものが最適だ」と突然約50 万円のプログラミングスクールの勧誘を受けた。
お金がなく支払えないため、親に相談したいと伝えたが、「そんなことは事後報告でよい。先に親に話すと絶対に反対される。将来必ず役に立つ」などと言葉巧みに勧められて契約し、代金は預金と親からの仕送りを足して現金で振り込んでしまった。
しかしパソコンの作業は苦手で、プログラミングの技術を習得しても将来どのように生かせるのかわからないのでやめたい。契約書面はもらっていない。
2.就活生へのアドバイス
就活という学生の不安につけ込んだ悪質な営業形態のいわば詐欺まがいのビジネスが行われていることをまずは認識し、その上で、引っかからないように注意して欲しいのだ。
悪徳商法に引っかからないためには、まずは関わらないこと。
以下のような点に注意して判断すると良い。
ア 口コミの活用を ~本当に無料、クレームは・・?
無料カウンセリングと記載していても、その先には高額料金の商品等の契約を迫るおそれがあることを念頭におくべきである。
相手の多くは甘言。これにまどわされてはいけない。
本当に無料なのかをコンテンツ(場面)ごとに確認することが必要だ。
そのためには口コミなどを活用して過去のクレームや受講者などの情報を集めてみることだ。
この場合において余りにも甘言的なコメントが多い場合にも気を付けることが必要。つまりサクラ(偽のダミー)投稿も多いということ。
イ SNSで知り合った人からの誘いには要注意 ~高額な契約の勧誘が目的のおそれが
高額なセミナーやビジネススクール等の勧誘は、以前は就活セミナー会場や事業者の事務所等で行われるケースが多くあったが、最近はSNSで知り合った人、「友だち」登録者やフォロワーなどからの連絡がきっかけでオンラインでのやり取りが始まり、最終的に高額な契約の勧誘につながるケースがみられる。
「相談にのってあげる」「エントリーシートを添削してあげる」など、顔の見えない相手からの一見親切な誘いにも注意が必要。
ウ 断定的な説明や就活生の不安をあおる言葉や即決契約に注意!
事業者が「100%内定」「必ず役に立つ」などと断定的な説明をしたり、「このままでは就活に失敗する」などと就活の不安をあおるようなことを言って勧誘するケースもみられる。
また、「定員がある」などと言って即決契約を求められることがあるが、焦ってその場で契約せずに、自分にとって本当に必要な契約なのか慎重に検討してみることだ。
エ 安易にクレジットの高額決済や借金をしないように!
「お金がない」と断ると、事業者から「クレジット契約や借金をして支払うように」と指示されたり説得されることがある。
しかし、イヤなときや断るときは、「契約しない」とはっきり意思を伝えることが大事。断る勇気をもとう。
オ クーリング・オフや契約の取り消しを活用
勧誘を受けることを知らずにWeb会議や電話で無料カウンセリングを受けて、カウンセリングの中で有料のセミナーやビジネススクール等を勧められて契約した場合には、クーリング・オフができる場合がある。
また、事業者が社会生活上の経験が乏しい就活生に対し、不安をあおって契約が必要と告げた場合には、消費者契約法により契約を取り消すことができる可能性もある。
カ 早めに消費生活センター等に相談を!
契約後に不安に思ったり、トラブルになった場合には、早めに最寄りの消費生活センターや警察の相談窓口等に相談することだ。
消費者ホットラインは「188(いやや!)」番、警察相談は #1109 。
3.消費生活相談センターに寄せられた相談
消費生活相談センターに寄せられた「就活をきっかけにした学生の契約」に関する相談」(2022 年度)の状況を見てみました。
○ 販売購入形態別件数
・ 電話勧誘販売(Web会議での勧誘を含む)が66 件(33.3%)
・ 通信販売が49 件(24.7%)
・ 不明・無関係が32 件(16.2%)
となっており、2021年度と比べると、電話勧誘販売の割合が約2倍に増加している。
○ 契約購入金額は、
・ 50 万円以上100 万円未満が72 件(36.4%)で最も多く、
・ 10 万円以上50 万円未満が61 件(30.8%)
・ 10 万円未満が27 件(13.6%)
となっており、平均購入金額は約48 万円。
50万以上が3割以上を締めている状況にある。
就活中の学生などには大きな負担であろう。
|おわりに
就職は人生を左右する重大な時期!
最近は就職に対する考え方も多様化しており、必ずしも一生涯を貫く仕事というわけではないようだが、それでも人生選択の第一歩だ。
その大切な就職活動で不安になっている心の隙間に土足で踏み入るような悪質で詐欺まがい事案は許せない。徹底して検挙してほしいものだ。
一方、就活生も悪質な業者などがいることを認識して、勧誘や広告などには十分注意を、その内容を確認・検討して、就活を行うことだ。
悪質な事業者にご注意を!