自殺対策白書_(概要)R5年度
自殺対策白書(R5年)が閣議決定され公表された。自殺対策白書からその概要を記します。
|自殺対策白書とは
端的に書くと、総合的な自殺対策を推進するため自殺の現状を把握し、対策を進めるべく作成した白書である。
総合的に自殺対策を推進するため、平成18年に「自殺対策基本法」(平成18年法律 第85号。以下「基本法」という。)が成立した。
基本法は、自殺対策を総合的に推進 して、自殺防止と自殺者の親族等の支援の充実を図り、国民が健康で生きがいを持って暮 らすことのできる社会の実現に寄与すること を目的としている。
この自殺対策基本法に基づき、毎年国会に提出する法定白書という位置づけにある。
|自殺者数と年齢階級別自殺死亡率の年次推移
○ 自殺者数の年次推移をみると、令和2年に11年ぶりに増加に転じた後21,000人台で推移し、令和5年は21,837人と前年より減少した。
男女別にみると、男性は2年連続の増加、女性は4年ぶりに減少した。
○ 年齢階級別の自殺死亡率(10万人当たりの自殺者数)は、令和2年以降多くの年齢階級で上昇しており、特に40歳代は令和5年まで連続して上昇し、50歳代は令和3年から4年にかけて大きく上昇した。
10歳代は近年緩やかな上昇傾向であり、令和5年の小中高生の自殺者数は513人と、過去最多であった前年と同水準であった。
|令和5年の自殺の状況
○ 令和5年の職業別の自殺者数を前年と比較すると、「有職者」が男女ともに増加した。
○ 令和5年の自殺者の自殺の原因・動機を前年と比較すると、「健康問題」が男女ともに減少しており、 「経済・生活問題」が男女ともに増加した。
※ 自殺の多くは多様かつ複合的な原因及び背景を有しており、様々な要因 が連鎖する中で起きている。
※ 自殺の原因・動機は、遺書等の生前の言動を裏付ける資料がある場合に加え、家族等の証言から考えうる場合も含め、自殺者1人につき4つまで計上可能である。このため、原因・動機特定者数と原因・動機の件数の和は一致するとは限らない。
|令和5年度の自殺対策の実施状況
1 地域レベルの実践的な取組への支援を強化する取組
地域自殺対策計画の策定・見直し等の支援
「『地域自殺対策計画』策定・見直しの手引」等の作成・公表 など
2 国民一人ひとりの気付きと見守りを促す取組
●自殺予防週間と自殺対策強化月間の実施
長期休暇の時期を踏まえた大臣連名メッセージの発信
●児童生徒の自殺対策に資する教育の実施
「SOSの出し方に関する教育」の推進 など
3 自殺総合対策の推進に資する調査研究等を推進する取組
●子ども・若者及び女性等の自殺調査、死因究明制度との連動
・児童生徒の自殺予防に向けた調査研究の推進
・こどもの自殺の要因分析の実施 など
4 自殺対策に関わる人材の確保、養成及び資質の向上を図る取組
●大学や専修学校等と連携した自殺対策教育の推進
●かかりつけ医、地域保健スタッフ、公的機関職員等の資質向上 など
5 心の健康を支援する環境の整備と 心の健康づくりを推進する取組
●学校における心の健康づくり推進体制の整備
・スクールカウンセラー等を活用した教育相談体制の充実 児童生徒の抱える様々な問題に対応するため、スクールカウンセ ラー等の配置時間を充実。
●大規模災害における被災者の心のケア、生活再建等の推進 ・能登半島地震におけるDPATの派遣 など
6 適切な精神保健医療福祉サービスを 受けられるようにする取組
●精神科医療、保健、福祉等の連動性の向上、専門職の配置
・各施策の連動性を向上させるための研修等の実施
地方公共団体の職員等を対象に「生きることの包括的支援のため
の基礎研修」を実施するとともに、自殺対策に係る多機関協働によ
る対応事例の情報を収集・整理した事例集を作成・提供。 など
7 社会全体の自殺リスクを低下させる取組
●相談体制の充実と相談窓口情報等の分かりやすい発信、アウトリーチの強化
・孤独・孤立相談ダイヤル(♯9999)の試行実施
窓口体制である「孤独・孤立相談ダイヤル(♯9999)」を試行実施。
●ICT(インターネット・SNS等)の活用
・1人1台端末を効果的に活用したSOSの発信や心身の状況把握
●インターネット上の誹謗中傷及び自殺関連情報対策
●自殺対策に資する居場所づくりの推進
・こどもの居場所づくり支援体制強化事業の実施 など
8 自殺未遂者の再度の自殺企図を防ぐ取組
●救急医療機関における精神科医による診療体制等の充実
・自殺未遂者ケア研修の実施
●医療と地域の連携推進による包括的な未遂者支援の強化 など
9 遺された人への支援を充実する取組
●学校、職場等での事後対応の促進
・児童生徒の自殺が起こった際の事後対応の周知
学校における「子供の自殺が起きたときの緊急対応の手引き」等
の活用支援を実施。
●遺族等の総合的な支援ニーズに対する情報提供の推進等
・遺族のためのリーフレット等の作成・配布 など
10 民間団体との連携を強化する取組
●民間団体の人材育成に対する支援
●民間団体の相談事業に対する支援 など
11 子ども・若者の自殺対策を更に推進する取組
●学生・生徒への支援の充実
・ 「COCOLOプラン」に基づいた取組の実施
●子ども・若者の自殺対策を推進するための体制整備
・「若者の自殺危機対応チーム」の設置の取組の推進 など
12 勤務問題による自殺対策を更に推進する取組
●長時間労働の是正
・労働基準法遵守のための支援等
●職場におけるメンタルヘルス対策の推進 など
13 女性の自殺対策を更に推進する取組
●妊産婦への支援の充実
・妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援体制の構築
●困難な問題を抱える女性への支援
・様々な状況に置かれている女性への実効性ある支援の充実・強化 など
|おわりに
今回は自殺対策白書の概要を簡記しました。
自殺者が多いことにびっくりですね。
以前は「自殺白書」といっていたのですが、自殺者が多く対策を進める必要があると言うことで自殺対策基本法ができ「自殺対策白書」と変わったものです。
その昔、昭和46年頃は交通事故死者数16756人と比較されていたこともあった(自殺者:昭和45年15,728人)が、交通事故死者数は各種対策が講じて今や2,678人と約6分の1に減少している。
自殺も減少させることができるかもしれないですね。
子どもの自殺者については、分離して別途記載します。
参考資料:
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