
特定小型原付も飲酒運転は禁止!
特定小型原付という区分にある「電動キックボード」だが、交通ルールを守らない運転者が目立ち大きな批判をあびている。
利便性も良く簡単に利用できるが、保安基準上の車両区分としては「原付」であり、これを運転する行為は道路交通法の規制を受けることになり厳しい罰則が設けられている。
今回は、電動キックボードを運転中の飲酒運転の罰則や実例などを解説することにした。
|電動キックボードの飲酒運転は禁止
電動キックボードを飲酒して運転することは禁止されている。
手軽に運転できる電動キックボードだが、法律上は「車両」であり、運転に関しては道路交通法で運転のルールが定められている。
電動キックボードの飲酒運転は違法行為であり、罰則の対象である。
また、
・ 飲酒している人に対し電動キックボードを提供する(車両提供罪)
・ 電動キックボードを運転する可能性がある人に酒類を提供し、勧めたりする(酒類提供罪)
・ 電動キックボードに同乗する(同乗罪)
などの行為は禁止されている。
|飲酒運転等の罰則
電動キックボードに係る飲酒運転に関する罰則についてまとめたのが下表。
飲酒運転した本人が結果として「酒気帯び運転違反」になったのか「酒酔い運転違反」になったのかによって、関連三罪(「車両提供、酒類提供罪、同乗罪」をいう。)に該当する違反者の刑事罰は異なる。

|電動キックボードの飲酒運転事例
○ 2023年11月、都内の大学生が飲酒して電動キックボードを運転中に歩行中の高齢者歩行者と衝突して骨折等の重傷を負わせた事故。
交通事故の加害になると、刑事罰はもちろん負傷者(歩行者)に対する損害賠償などの民事上の責任も生じる。
○ 2023年12月、那覇市内で酒を飲んだ状態で電動キックボードを運転したとして、アメリカ兵の男が酒気帯び運転の疑いで現行犯逮捕された。
○ 2021年7月、福岡市内で電動キックボードを飲酒し、無免許で運転した男性が逮捕された。
16歳以上の人は運転免許を有せずに運転が可能な電動キックボードだが、飲酒運転をすると逮捕されたり刑事処分を受けたり、交通事故を起こした場合には相手方に対する損害賠償など民事責任も負うなどの大きなリスクを負うことになる。
|電動キックボードの飲酒運転で免停
電動キックボードで飲酒運転をした場合には、運転免許の停止処分を受ける可能性があるのだ。
電動キックボードの運転に免許を必要としない(16歳以上)が、普通免許など何らかの運転免許をもっている者が電動キックボードで飲酒運転をすると、道路交通法(103条1項8号)に基づき、自動車運転免許の停止処分(180日以内)を受ける可能性がある。
これを「点数によらない行政処分」という。
現に、2024年12月には、大阪府内で電動キックボードを飲酒運転したとして運転免許の行政処分を受けた。他の県警でも同様の事例がある。
|車両の保安基準上のルール
2023年7月(令和5年)の道路交通法改正に併せて道路運送車両の保安基準が改正され、新たに「特定小型原動機付自転車」の保安基準が明確化された。
「特定小型原動機付自転車」として道路運送車両の保安基準により、装備すべき装置や性能の基準等が設けられており、以下の装置が備えられていることおよび適正な性能を有していることが必要とされている。
●前照灯(ヘッドライト)
●警音器(クラクション等)
●バッテリーの安全性
●最高速度表示灯
●制動装置
●方向指示器
●尾灯・制御灯
●走行安全性(段差等の走行)
●スピードリミッター(設定最高速度を超えて加速しない、最高速度がいたずらに変更できないこと)
〈参考〉国土交通省サイト「電動キックボードについて」
URL:https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_fr7_000058.html
|電動キックボードに関する道交法上のルール
電動キックボードは、「特定小型原動機付自転車」となるものやその出力によっては「自動二輪車」となるものがある。
定格出力が0.6kw以下の電動キックボードは特定小型原動機付自転車の区分になるが、それ以外の原動機付自転車を一般原動機付自転車と定義される。
電動キックボードを運転する場合には、上記の飲酒運転以外にも道路交通法でルールが定められている。
運転する場合には事前にルールを確認して違反をしないようにしなければならない。代表的な違反行為と罰則の内容を以下に簡記する。
○ 二人乗り(定員外乗車)
電動キックボードは二人乗りはできない。
【罰則】5万円以下の罰金等
○ 小回り右折(右折方法違反)
小回り右折とは、自動二輪車や普通自動車などと同じ様に、あらかじめ道路中央に寄り交差点の中心の内側を徐行して右折することをいう。
特定小型原動機付自転車は信号機のない交差点では、あらかじめその前からできる限り道路の左側端に寄り、かつ、交差点の側端に沿つて徐行しなければならない。
また信号機のある交差点ではいわゆる「二段階右折」をしなければならない(二段階右折禁止標識がある場合は例外)。
【罰則】5万円以下の罰金
○ 駐車違反
法定及び道路標識より駐車の禁止されている場所に駐車すると違反。
また、交差点や横断歩道、交差点の端から5m以内など法定の駐(停)車禁止場所に駐(停)車することも違反。
【罰則】15万円以下の罰金等
整備不良(整備不良車運転違反)
電動キックボードは原付の区分にあるため車検制度はないが、保安基準に定める装置等が整備され、基準性能を有していないと整備不良車運転違反になる。
【罰則】3ヶ月以下の懲役または万円以下の罰金等
○ ながら運転(運転者の遵守事項違反)
スマートフォンや携帯電話を操作しながらの運転は禁止されている。
【罰則】
・ 交通事故を起こすなど危険を生じさせた場合:1年以下の懲役または30万円以下の罰金
・ 危険を生じさせていない場合:6ヶ月以下の懲役または10万円以下の罰金
そのほかにも、横断歩行者保護義務や信号無視、通行方法、ヘルメット着用義務(努力)などいくつものルールがあるので確認しておくことが大切だ。
もちろん、特定小型原動機付自転車として使用するためには、ナンバープレートの取り付け、自賠責保険に加入することなどの要件も満たす必要がある。
電動キックボードに関する交通ルールは、以下の警察庁サイトに詳しく掲載されているので参考にするとよい。
〈参考〉警察庁サイト「特定小型原動機付自転車に関する交通ルール等について」
URL: https://www.npa.go.jp/bureau/traffic/anzen/tokuteikogata.html
|まとめ
16歳以上の者が電動キックボードを運転する場合には運転免許は不要ですが、特定小型原動機付自転車に該当する電動キックボードにも交通ルールが適用されます。
電動キックボードを運転する際には、道路交通法に則った運転をしましょう。
参考資料