建設業の労働災害発生状況(R5)
厚生労働省が労働災害の発生状況(R5)を発表しているので、建設業に関して調べてみた。
なお使用しているデータは厚生労働省が公表した「令和5年の労働災害発生状況」を使用している。
|建設業界の動向
① 建設業においては、有効求人倍率が依然として高く、人手不足の状況にある。下表は建設業における技術者・技能者の有効求人倍率の推移であるが、依然として高い求人倍率を呈しています。
②-1 令和5年の新設住宅着工戸数は、令和3年、令和4年と増加していたが令和5年は前年比で4.6%減となった。
令和2年以降の着工戸数の推移は下表のとおりである。
②-2 建設工事の受注高の推移は、若干の増減はあるがほぼ横ばいであり、令和5年の建設工事受注高は前年比で2. 7%減である。
|建設業における労災発生状況の概要
建設業における労災事故の発生状況をみるとその概要は以下のとおりである。
① 死亡者数は、前年比で58人 (20.6%)減少している。
② 死傷者数は、前年比で125人 (0.9%)減少している。
③ 事故の型別では、「墜落・転落」が最多であり、全数に占める割合は死亡者数で38.6%、死傷者数で31.6%である。
|死者及び死傷者の推移
このような背景の中、建設業における労働災害による死亡者数 (前年比-58人、20. 6%減)、死傷者数 (前年比-125人、0.9%減)ともに減少した。
|事故の型別
建設業における労働災害の発生状況(事故の型別)については下表のとおりであり、主な特徴は以下のとおりである。
➤業種別の死亡者数では、いずれも減少しており、土木工事業が87人(前年比-21人、19.4%減)、建築工事業で98人 (前年比-19 人、16.2%減)となっている。
➤業種別の死傷者数では、土木工事業が3, 852人 (前年比-90人、2. 3%減)、建築工事業が7,510人 (前年比-96人、1.3%減)と減少しており、その他がの建設業が増加している。
➤ 事故の型別では、依然として死亡者数、死傷者数ともに 「墜落・転落」が最多で、全数に占める割合は死亡者数で38.6%、死傷者数で 31.6%となった。
➤死亡者数では、「飛来・落下」(前年比5人、 31.3%増)、おぼれが増加している。
➤ 死傷者数では、熱中症が含まれる「高温・低温物との接触」が前年比 74人、31.8%増加している。
|派遣労働者の労働災害事故
派遣された労働者が関係する労災事故の死亡者および労働災害による休業4日以上の死傷数は以下の表のとおりである。
なお、死傷者数は、派遣労働者が増加していることもあり、令和元年以降毎年2%程度増加しており、昨年は2.2%の増となっている。
|おわりに
建設業における労災事故の発生状況は状況のような状態である。
特に事故の型別では「墜落・転落」が他と比較して著しく多いという状況にあることから、この種労働災害を防止することが重要であると考える。
令和6年4月に全面施行されたー側足場の使用範囲の明確化や足場の点検者の指名の義務化等を内容とする改正労働安全衛生規則を含め、墜落・転落災害防止に係る労働安全衛生規則の遵守の徹底を図る、フルハーネス型墜落制止用器具の適切な使用の徹底を図ることが求められているといえよう。