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「相続人不存在」って

おひとり様が増えてきて法定相続人がいないという場合がありますよね。例えば死亡時に独身で子どもがおらず、兄弟もいないため相続人がいませんというような場合です。
このような場合に最終的には本人の財産が国庫に帰属されるというが・・・


|相続人不存在とは

一般的には、人が死亡した場合、亡くなった人(被相続人)が保有していた財産は相続人(法定相続人等)に相続されることになる

しかし、身寄りのない高齢者の方が死亡した場合やおひとり様、つまり独身で子どももいない人が死亡した場合など、被相続人に相続人が一人もいない場合があるが、このような相続人が一人もいない状態のことを「相続人不存在」という。

|相続人不存在による国庫帰属金額

相続人不存在の場合、被相続人が保有していた財産は国庫に帰属、つまり国の財産に移ることになる

最高裁判所の資料「令和4年度裁判所省庁別財務書類」をみると、令和4年度に相続人がいないため最終的に国庫に帰属された金額は、過去最高額の770億円であり過去最高額であった。
令和3年度が768億円、平成30年度は628億円であり、この間も年々増加している状況にあり、「相続人不存在」となる事例が増加していることを表している。

|その原因は?

この傾向は、生涯独身である方の増加(未婚化)や少子化により一人っ子の増加、高齢化に伴う独居老人の増加などを背景として、上昇を続けていくものと思われる。

|未婚者の増加傾向

未婚者の増加傾向について、令和5年版厚生労働白書-つながり・支え合いのある地域共生社会の中で、「50歳時の未婚率」の推移予測などを公表している。

この数値は、50歳時点で一度も結婚したことがない人の割合を示しているものであるが、下図左のように50歳時の男女別未婚割合はいずれも、引き続き緩やかに上昇し、高齢世代全体の未婚率も上昇していくものと見込まれている。
2040(令和22)年には男性で29.5%、女性で18.7%になると推計されている。
なお下図右は65歳以上、75歳以上男女別の未婚推計であるが、高齢者は男女とも、今後、未婚率が上昇していくと見込まれている。

出典:令和5年版厚生労働白書

|結構面倒な「相続人不存在」の場合の手続き

相続人不存在となった場合は、被相続人の債権者・特別遺贈を受ける人などの「利害関係人」や検察官の申し立てにより、家庭裁判所が「相続財産清算人」を選任することになる。

その後の主な手続きと公告等の期間については、以下のとおり。

|相続人不存在となると予想される場合の措置

上記のようにおひとり様等法定相続人がいない、法定相続人全員が相続放棄する、欠格・排除などで、相続人不存在となることが予想される場合にはどうしたらよいか。
配偶者と子どもがいない、おひとり様状態では、せっかくの財産が国庫に帰属してしまい次世代に継承していくことができないのだ。

※欠格・排除とは
欠格とは、被相続人を殺害し、もしくは強迫して遺言をさせるというような相続に関する法律を犯す行為をした者は、法定相続人としての資格を失うこと、排除とは、被相続人の意思によって相続権をはく奪することである。

① 遺贈する
被相続人が遺言書を残す。
その中で特定の者に対して遺産を贈与(遺贈)する旨が定めることで遺産がその特定の者に帰属することができる。

遺贈を受ける者は、個人だけではなく法人でもよい。
生前にお世話になった遠縁者や知人、もしくは慈善団体などに寄付することも可能である。

② 特別縁故者がいる
特別縁故者とは、被相続人に法定相続人がいない場合に、被相続人と特別な縁があったことを理由に遺産を受け取る権利が発生する者のこと。
例えば、被相続人と生計を共にしていた、また特別に親しい間柄にあったなど、家庭裁判所によって相当の関係があると認められた場合に特別縁故者となり得る。

なお、特別縁故者となるためには、家庭裁判所への相続財産清算人選任の申し立てなどの手続を自ら進めていく必要がある。

|おわりに

今後は、いわゆる「おひとりさま」の相続に関する割合も増加していくことが予想されている。

相続人不存在となる可能性がある場合には、自身の財産の死後の使い方などを考え必ず遺言書を用意しておくことが望ましい。

参考資料:

https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/2023/R4zaimu.syorui.443KB.pdf