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「AV出演被害防止・救済法」を知ろう

若い女性等が被害に係る強引なAV出演、無修正動画などの流出事案、これに伴う脅迫や詐欺事案などが最近増加傾向にあり、検挙されたという報道も目にする。


|法律制定の背景

成年年齢の引き下げにより新たに成人となった18歳、19歳や芸能界に憧れている若者をターゲットにするAV出演被害が急増しているという実態を背景に、その被害防止や被害者の救済のために2022年6月に制定された法律なのだ。

|契約は自由が原則(契約自由の原則)だが・・

商取引などの契約は本来自由な意思で行うもの、一度行った契約はその内容が公序良俗に抵触しても原則的には有効なものとなる。

ただし未成年者の場合は、親権者の同意なくAV撮影やグラビア撮影の契約を勝手に行った場合は、民法の「未成年者取消権」に基づき契約を無効にすることができる。

一方成人の契約は原則有効、もし解約をしようとすると相手方が応じなかったり高額な違約金をとられたりすることになる。

しかし、この法律ができたことでアダルトビデオの撮影等の契約の解除や販売・配信を止めることができるのだ。

|この法律のポイント

法律のポイントを要約すると次のとおり。

○ 書面での契約を義務付け
アダルトビデオの制作にあたっては、制作者側と出演者との間で制作するアダルトビデオごとに書面で契約を交わし、また制作者はその契約の内容を説明した文書を渡さなければならない。

○ 契約書に記載すべき事項を明示
契約書には、どのようなアダルトビデオなのかを明記し、撮影の日時や場所、映像を公表する期間や方法、出演料や支払いの時期などを記載することとされた。

○ 契約書に記載すべき事項を明示
契約書には、どのようなアダルトビデオなのかを明記し、撮影の日時や場所、映像を公表する期間や方法、出演料や支払いの時期などを記載することとされた。

○ 履行に関する期間の定めと解除権
契約してから撮影までには1か月間を空けること。また、撮影してから4か月間は公表禁止(販売したりwebに流してはいけない)。出演者はこの間無条件で契約を解除できる。

○ 公表後の契約解除権
公表されたあとでも1年間は無条件で契約を解除できる(施行から2年までは2年間)。

○ 差止請求権
AV出演者は、出演契約に基づくことなくAVを制作し公表された場合、または出演契約の取消しや解除をしたときにはAVの公表(ビデオの販売やWebに流すこと)をとめることができる。

○ 損害賠償
出演者が法律に基づいて契約を解除しても、発生した損害を賠償する責任は負わない(報酬としてもらった金額以外の賠償金は支払う必要がない)。

○ 罰則が設けられた
・ 虚偽・強要の禁止契約にあたって.意図的にうその説明をした、脅したなどの場合:法人は1億円以下の罰金、 個人は3年以下の懲役または300万円以下の罰金
・ 契約書交付義務違反等契約の際に書面を渡さない、うその内容の書面を渡したなどの場合:法人は100万円以下の罰金、 個人は6か月以下の懲役または100万円以下の罰金

|明確に「NO」という意思表示を

AV出演契約を迫られたり、出演を強要されたという場合には、まずは明確に「NO」「イヤ」という意思表示を示すことが大事だ。

例えば

○ 契約してしまったが・・やっぱり出たくない

⇒メールやSNSで「イヤ」と伝えましよう。
例えば、「(○月○日に契約した)AVに出演する契約を解除します。今後,このことで連絡をしてこないでください。」
※もちろん撮影には行かない。

○ 撮影日直前でも

明日撮影だけど.やっぱり無理~~ 契約後1か月経って撮影する直前になってしまった。

⇒メールやSNSで「イヤ」と伝えましよう。
例えば「(○月○日に契約した)AVに出演する契約を解除します。今後、このことで連絡をしてこないでください。」
※もちろん撮影に行かない、撮影しない。

○ 撮影してしまった、既に公表された場合でも

断り切れず撮影しちゃった・・、すでに売られているけど・・、怖くて・いやだ~どうしよう・・・。

⇒メールやSNSで「公開はイヤ」と伝えよう。
例えば「(○月○日に契約した)AVに出演する契約を解除します。公表はやめてください。」
とハッキリ相手方に伝えることが大事。

上記のような意思表示をした際に、「あって話をしよう」などと言われるかもしれないが、絶対にあわない!

AV出演被害防止・救済法に基づいて意思表示をすれば契約を解除できる。
解除はメールやFAXでOK。
もし、しつこくつきまとう、家に来るなど不安なことがあれば、「性犯罪・性暴力被客者のためのワンストップ支援センター」(#8891《はやくワンストップ》)や、場合によっては警察に相談を!

|#8891?

「#8891」に電話すると、近くの相談先である「性犯罪・性暴力被害者のためのワンストップ支援センター」につながる。
このセンターでは、例えばアダルトビデオに出る約束をなかったことにすること(契約解除)やアダルトビデオが勝手に売られたり、Web等に流出させられたりすることを止めるための手伝いなどをしてくれる。

参考;https://www.gender.go.jp/policy/no_violence/avjk/index.html

|増えているのは成年年齢の引き下げが影響?

「未成年者取消権」を行使することで、契約を無効にし、業者側に撮影された動画を削除・回収させることができたのだが・・、成年年齢力が18歳に引き下げられたことで、成年年齢に達した18歳、19歳の人はこの取消権を使えなくなった。
また18歳は高校生や大学生で成年年齢における法的な立場なども充分に認識していないことなどから契約上のトラブルや被害が増えたともいわれている。

さらには未成年者を含めアイドルに憧れる、芸能界に入りたいと思う若者が増えている、SNSの普及によりスカウトなどの募集活動が街頭だけではなくWebなどで容易にできるようになり、また応募することが容易にできるようになったことなども挙げられている。

悪質業者からすると、この年代はまさに格好なターゲットなのだ。

|動画等のリスクを認識しよう

出演したAV動画や、自らわいせつ画像に当るような写真や動画を撮影し「裏アカ」などと称してSNS等に投稿した動画等が知らないうちに出回ったり、Web上に流されると走り回りいつまでも消すことができない(「デジタルタトゥー」といわれている。)などのリスクがあることを認識しておこう。

|最後に

街頭でのスカウト、SNS等によるアイドル募集や高額アルバイトを名目にして、若者をくいものにする罠(わな)がはびこっている現状を認識する必要がある。
新しい法律ができ、行政や関係団体などが取締りや警戒活動をしているが、重要なのは被害に遭わないためのこの種犯罪への認識と防衛手段。

スカウトによる芸能界への勧誘や広告、甘い言葉に惑わされることのリスクを認識して、できるだけ近づかない、うまい話には大きな落とし穴があるので飛びつかない、そして断る勇気を持とう。

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