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再婚禁止期間が廃止され、女性も離婚後すぐに再婚できる♫
女性にとってはちょっと不利な再婚禁止期間であり、過去には最高裁まで争われたこともあったが、現在は廃止されたのでちょっとひもときます。
|概要
2023年12月10日に民法が改正されて、「再婚禁止期間」を定める民法733条が削除され、2024年4月1日に施行された。
これにより、女性も男性と同様に、離婚後すぐに再婚できるようになった。
|民法改正(令和6年4月施行)の主なポイント
主な改正点は次のとおりである。
● 離婚後300日以内に子供が生れた場合でも、母親が前夫以外の男性と再婚したあとに生まれた子は再婚後の夫の子供と推定する
● 女性の再婚禁止期間を廃止する
● 今まで夫のみに認められていた嫡出否認権を母親及び子供にも認める
● 嫡出否認の訴えの出訴期間を1年から3年に伸長する
●「懲戒権」の規定を削除し、体罰禁止規定を設ける
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|再婚禁止期間
再婚禁止期間とは、元夫と離婚した日から100日間は再婚できないと女性のみに定められた期間のことをいう。
これは離婚後すぐに女性が再婚して出産した場合に、子どもの父親が前の夫なのか現在の夫なのかという争いを避けるために設けられていた規定である。つまり「扶養義務を負う父親を明確にして子供の利益・権利を保護するため」である。
なお、男性にはそもそも再婚禁止期間はなく、離婚してからすぐにでも再婚が可能である。
|再婚禁止期間に関する最高裁判決
再婚禁止期間に関していくつかの訴訟事案があるが、最高裁において違憲判決を出した事案もあった。
最高裁で争われた訴訟事案は、女性の再婚禁止期間を定めた民法733条1項の規定が違憲かどうかが争われたものである。
最高裁大法廷は、平成27年12月16日に
再婚禁止期間6か月のうち100日を超える部分は違憲である
と判断を示した。
|再婚禁止期間廃止の経緯
再婚禁止期間の規定は、明治憲法下で定められたものであり(1898年(明治31年))再婚禁止期間は6ヶ月とされていた。
その後、最高裁の判決により民法が法改正されたことに伴い、平成28年6月には再婚禁止期間を100日間に短縮された。
そして、今回(令和4年12月)の民法改正により、再婚禁止期間の廃止などを盛り込まれ、令和6年4月1日に施行された。
|再婚禁止期間廃止の背景
制度廃止に至った重要な背景としては以下のようなことがあったという。
〇 DNA鑑定による親子鑑定が可能
昨今では、DNA鑑定による親子関係の特定を行うことができるようになり、子どもの父親の特定が容易になった。
このため再婚禁止期間の定めが不要となった。
〇 子どもの無戸籍防止
再婚禁止期間が設けられていることで、離婚後100日の間に出産した場合、戸籍上は自動的に前夫の子どもと記載されることになる。
それを避けるため、あえて出生届を出さない母親も少なくなく、そのため子どもは無戸籍になってしまったという。
|嫡出否認制度
令和6年4月1日施行の改正民法では、嫡出否認制度も見直された。
従来からの婚姻の解消等の日から300日以内に生まれた子は、前夫の子と推定するとの原則は維持しつつ、無戸籍者問題を解消する観点から、母が前夫以外の男性と再婚した後に生まれた子は、再婚後の夫の子と推定するとの例外が設けられた。 【新民法772条関係】
一方で、嫡出否認制度とは、婚姻中や離婚後300日以内に生まれた子供を自分の子供とせずに親子関係を否定できる制度である。
例えば、婚姻中の妻(母親)の不倫により生まれた子供や、離婚後300日以内に前夫ではない別の男性との間に生まれた子供について、戸籍上の父親の申立てによって「自分の子供ではない」と否定することができるのだ。
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嫡出否認制度に関する規律の見直し
1 否認権者を拡大する方策
・ 否認権者を、子及び母に拡大する。
・ 再婚後の夫の子と推定される子については、母の前夫にも否認権を認める。 【新民法774条、775条、新人訴41条関係】
2 嫡出否認の訴えの出訴期間を伸長する方策
・ 嫡出否認の訴えの出訴期間を、現行法の1年から伸長する。
父が提起する場合:父が子の出生を知った時から3年
子・母が提起する場合:子の出生の時から3年
前夫が提起する場合:前夫が子の出生を知った時から3年
【新民法777条-778条の2関係】
なお、子は、一定の要件を充たす場合には、例外的に、21歳に達するまで、嫡出否認の訴えを提起することができる。
|おわりに
繰り返しになるが、民法改正により
・女性の再婚禁止期間の廃止
・女性が再婚する場合、再婚後は夫の子と推定する
・母や子が事後的に嫡出推定を否認できる仕組みが新設
・子の出生後3年以内なら否認の訴えが可能になる
・体罰禁止規定の新設
などのいわば合理的な内容に改正された。
この改正法が適切に運用されることにより、生まれてくる子が平穏に育成されることを望むものである。
参考資料
https://www.moj.go.jp/content/001395211.pdf