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違約金、損害賠償・・・どう違うの?

契約や取引において、契約内容が履行できなかった場合、契約不履行となるが、その場合に違約金や損害賠償金が発生する。ではその違いは・・・?
その違いをちょっとだけ触れておきます。


|違約金とは

違約金とは、契約内容に違反した当事者が、事前の合意(契約)にしたがって相手方に支払う金銭のことをいう。

通常は、請負契約や取引契約書の中で、違約金条項として、主に違約金の発生条件・額(または計算方法)・支払方法などを定めておくのだ。

違約金の目的は、契約当事者にその義務を適切に履行させること。
契約時に契約違反をした場合のペナルティを明確化しておくことで、当事者にはペナルティを避けようとする心理が働き、結果的に契約違反が発生するリスクを抑えられることになる。

|債務不履行に基づく損害賠償

債務不履行に基づく損害賠償とは、契約上果たすべき義務を守らなかったことにより、相手方に損害を発生させた場合に必要になる損害賠償のこと。

民法第415条1項で「債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。」とされている。

(債務不履行による損害賠償)
第四百十五条 債務者がその債務の本旨に従った履行をしないとき又は債務の履行が不能であるときは、債権者は、これによって生じた損害の賠償を請求することができる。ただし、その債務の不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるものであるときは、この限りでない。

|違約金と損害賠償請求の関係

違約金は、損害賠償額の予定としてる損害賠償の見込み額を基準として定める場合と、違約罰として損害賠償に加えて支払うペナルティとして定めているケースの2通りがある。

つまり違約金の法的性質は、「損害賠償額の予定」であるケースと、「違約罰」である。

なお、契約書において違約罰である旨が明記されていない場合、民法420条3項の規定により「違約金は損害賠償額の予定と推定」されることになる。
つまり、違約金は損害賠償額の予定として取り扱われる可能性が高いということである。

(賠償額の予定)
第四百二十条 当事者は、債務の不履行について損害賠償の額を予定することができる。
 賠償額の予定は、履行の請求又は解除権の行使を妨げない。
 違約金は、賠償額の予定と推定する。

|違約金の額

違約金の額は、一般的には損害賠償の見込額を基準として定めており、不相当に高額過ぎなければ自由に定めることができるとされている。

〇 「損害賠償額の予定」の場合
一般的な損害賠償の見込額を基準として違約金の額を定めることになり、その額は、契約当事者の合意によって自由に定めることができる。

違約金が損害賠償額の予定である場合は、別に損害賠償請求を行わないので、損害賠償の見込額に近い額の違約金が設定されることになる。

〇 「違約罰」の場合
違約金の性質が違約罰である場合には、当事者による契約違反を効果的に防止できるように適切な金額の違約金を定めることになる。もちろん別途損害が生じれば、損害賠償請求することができる。

〇 違約金の上限
不相当に高額過ぎる違約金を定めると、公序良俗違反として違約金の定めが無効になるおそれがあるので注意が必要(民法90条)。

(公序良俗)
第九十条 公の秩序又は善良の風俗に反する法律行為は、無効とする。

また、法律(宅地建物取引業法・消費者契約法・利息制限法などの法令)では、債務不履行や契約の解除に関する違約金について、一定の上限が設けられている場合もあるので注意が必要。

|違約金を請求できない場合

契約の解除に関して違約金が定められいる場合でも、以下のいずれかに該当する場合には、解除された側は相手方に対して違約金を請求はできないとされている。

消費者がクーリングオフをした場合
手付解除が行われた場合

① 消費者がクーリングオフをした場合

クーリングオフとは、契約締結後一定期間に限り、消費者の側から契約を自由に解除できるという消費者保護のための制度。

消費者が事業者に搾取されやすい訪問販売や電話勧誘販売などの類型の契約について、消費者に再考の機会を与えるための制度として設けられたもの。

クーリングオフが行われた場合、事業者は消費者に対して、損害賠償や違約金などを請求することはできないこととされ、また、消費者が事業者に対して返品等を行う際に送料等費用が必要な場合にはその費用は事業者が負担しなければならないこととされている。
※下表参照。

② 手付解除が行われた場合

いわゆる手付販売というもので、売買契約その他の有償契約の際に、あらかじめ、買い手側が売り手側に対して手付金(てつけきん)を交付する(支払う)ことがある。

〇 手付販売の場合に、買い手側は手付金を放棄し、売り手側は手付金の倍額を現実に提供すれば、契約を解除することができるとされている(民法557条1項・559条。ただし、相手方が契約の履行に着手した後は、手付解除はできない)。

(手付)
第五百五十七条 買主が売主に手付を交付したときは、買主はその手付を放棄し、売主はその倍額を現実に提供して、契約の解除をすることができる。ただし、その相手方が契約の履行に着手した後は、この限りでない。
2 第五百四十五条第四項の規定は、前項の場合には、適用しない。

(有償契約への準用)
第五百五十九条 この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

〇 手付解除が行われた場合は、解除された側は相手方に対して損害賠償や違約金などを請求できない(民法557条2項・545条4項)。

(解除の効果)
第五百四十五条 当事者の一方がその解除権を行使したときは、各当事者は、その相手方を原状に復させる義務を負う。ただし、第三者の権利を害することはできない。
2 前項本文の場合において、金銭を返還するときは、その受領の時から利息を付さなければならない。
3 第一項本文の場合において、金銭以外の物を返還するときは、その受領の時以後に生じた果実をも返還しなければならない。
4 解除権の行使は、損害賠償の請求を妨げない。

|契約書における違約金条項の定め方

契約書における違約金条項については、主に以下の事項を定めることがポイント。

① 違約金の発生条件
どのような場合に違約金が発生するのか(条件)を、明確な文言で記載する。
違約金は、債務不履行全般もしくは一部の債務不履行のみを発生条件とすることが可能。

② 違約金の額または計算方法
違約金の額を具体的に定めるか、またはその計算方法を決めておく。
特に金銭債務の不履行については、不履行の額に応じて計算するのが一般的。

③ 違約金の支払方法
銀行振込みなど、違約金の支払方法を明記する。

④ 違約金の性質
違約金の性質を明確にする。損害賠償額の予定なのか、または違約罰なのかを明記する。

【具体的な違約金条項の例文】

損害賠償額の予定である違約金条項の条文例
① 具体的な金額を定める場合
甲が本契約に違反したときは、乙に対して、違約金として金○○万円を支払う。なお、本条に基づく違約金は、賠償額の予定とする。

② 計算方法を定める場合
甲が乙に対する発注を行った後に、当該発注を取り消す場合は、乙に対して、違約金として当該発注に係る金額の20%に相当する額の金員を支払う。なお、本条に基づく違約金は、賠償額の予定とする。

違約罰である違約金条項の条文例
甲が本契約に違反したときは、乙に対して、違約金として金○○万円を支払う。なお、本条に基づく違約金は違約罰とし、甲が乙に対して、別途損害賠償を請求することを妨げない。


契約ウォッチ編集部より転載:https://keiyaku-watch.jp/media/hourei/iyakukin/

|おわりに

違約金と損害賠償について、ざっくり書きました。
知っているつもりでも改めて調べてみるとの意外にも「はて?」と思うこともある。

特に違約金は、発生条件が不明確だと、実際に債務不履行や契約の解除などが発生した際に、違約金を支払うのか、一般的な損害賠償で処理すべきなのか、また両方が請求するのかなど、混乱することが予想される。

経験上、契約上のトラブルは、泥沼化したり、長期化しやすい、一方で弁護士の経費なども必要になったりするので大変である。

契約をする際にはあらかじめ違約金条項についてしっかり検討して、契約当事者間のトラブルの防止に努めたいものだ。



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