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リスクアセスメントによる労働災害防止

いろいろな作業をしているとこれに伴うリスクが生じます。
作業事故についてちょっと考えてみましょう。

労働災害により負傷し後遺症が残ると、大事な人生に大きな禍根を残してしまうことになります。


|注意一秒、怪我一生

「注意一秒 怪我一生」という言葉を知っていると思いますが、リスクマネージメントの中ではよく使われています。

その意味するところは、
事故を防ぐために必要な手間はごく些細なものですが、それを怠ると重大な結果につながることになり、早いうちに手を打てば大事に至らずに済むこともある。

という趣旨ですね。
ほかにも、「油断一秒、ケガ一生」や「万一のための用心」などと同じような意味で使われている言葉もあります。
ときどき労災事故防止や交通事故防止などでも、戒め的なワードとして使われます。

ちょっとした気のゆるみが大事故を発生させています。
災害や事故の報道などを自分の身に置き換えてみると、それは大変恐ろしいものです。
労働災害、交通事故などは何としても防止すべきものですね。

|職場の危険性・有害性(リスク)を評価・分析(アセスメント)

この項からは「リスクアセスメント担当者養成研修受講者テキスト」などを参考に記載します。

職場における危険性や有害性(リスク)を評価・分析(アセスメント)することはとても重要なことです。

労働災害は、「危険性・有害性」と「人(作業者)」の両者の存在があって、発生します。
どちらかの存在だけでは労働災害にはなりません。
例えば
単に刃物があってもそれだけでは災害になりませんね。
刃物を持ち使用することで初めて災害に至るリスクが発生するのです。

ルールを守る、とりあつかいにや作業工程に応じた安全指導を行うなどの安全対策がしっかりしていれば、リスクがあっても災害には至ることはありません。
ルールを無視したり安全対策に不備があると災害が発生するということになります(下図参照)。

|労働災害防止のため

それでは、労働災害を防ぐためにはどうすればよいのでしょうか。
労働災害の未然防止の方法としてリスクアセスメントという手法が広く導入され実施されています。

リスクアセスメントは、前記の労働災害発生の仕組みを踏まえて、「危険性・有害性」と「人(作業者)」が接触してリスクが発生することを事前に
評価し、その予防を図るものです。

具体的には、
❶危険性・有害性を特定する、
❷リスクを見積り、リスクレベル(優先度)を決める、
❸リスク低減措置を検討する、
❹リスク低減措置を実施する、
❺リスク低減措置を記録し、有効性を確認する」の5つの取組みを体系的に進める

ということになります(労働安全衛生法第28条の2)。

職場における労働者の安全と健康の確保をより一層推進するため、労働安全衛生法が平成 18 年4月1日に改正されました。

この改正により、労働安全衛生法に危険性又は有害性等の調査(リスクアセスメント)の実施が努力義務規定として設けられ、安全管理者を選任しなければならない業種の事業者(自動車整備業も含まれます。)によるリスクアセスメントの実施とその結果に基づき必要な措置を講ずることが定められました。

労働安全衛生法
(事業者の行うべき調査等)
第 28 条の2 事業者は、厚生労働省令で定めるところにより、建設物、設備、原材料、ガス、蒸気、粉じん等による、又は作業行動その他業務に起因する危険性又は有害性等を調査し、その結果に基づいて、この法律又はこれに基づく命令の規定による措置を講ずるほか、労働者の危険又は健康障害を防止するため必要な措置を講ずるように努めなければならない。ただし、当該調査のうち、化学物質、化学物質を含有する製剤その他の物で労働者の危険又は健康障害を生ずるおそれのあるものに係るもの以外のものについては、製造業その他厚生労働省令で定める業種に属する事業者に限る。
2 厚生労働大臣は、前条第1項及び第3項に定めるもののほか、前項の措置に関して、その適切かつ有効な実施を図るため必要な指針を公表するものとする。
3 厚生労働大臣は、前項の指針に従い、事業者又はその団体に対し、必要な指導、援 助等を行うことができる

それぞれについてちょっとコメントします。

❶「危険性・有害性」(ハザード)を特定する

作業標準等に基づき、必要な単位で作業を洗い出し、各作業における「危険性・有害性(ハザード)」を特定します。
「危険性・有害性」は、その危険性・有害性によって生じるおそれのある「怪我や疾病の重篤度」と「発生する可能性の度合い」を考慮した「リスク」とは異なるものです。

「危険性・有害性」(ハザード)を特定するための情報源は、毎日の作業手順、ヒヤリハット活動、安全施行サイクル、安全パトロール、事故災害事例、安全目標の達成評価、前年度の災害発生状況などがありますので、それを参考にするとよいでしょう。

❷リスクを見積り、リスクレベル(優先度)を決める

「災害になる可能性」と「災害になった時の怪我の程度(重篤度)」を、各事業場であらかじめ定められた基準に従って区分します。

そのうえでリスクレベル(優先度)を決めます。【下表】

❸リスク低減措置を検討する

リスクの見積りにより決定されたリスクレベル(優先度)に従い、優先度の高いものからそのリスクを低減させる措置を検討します。
リスクを低減させる方法(措置)は、トラを例に【図3】のとおり、
 ①本質的対策(危険な作業の廃止・変更)、
 ②工学的対策、
 ③管理的対策、
 ④個人用保護具の使用

の順に検討します。

❹リスク低減措置を実施する

前記❸の検討により、実施するリスク低減措置を決定し、実施担当者がリスク低減措置を実施します。

❺リスク低減措置を記録し、有効性を確認する

リスク低減措置を実施したら、リスクアセスメントの結果を記録に残し、リスク低減措置が有効であったかを評価します。
効果があった低減措置は、水平展開に活用することができますが、効果がなかった低減措置は見直しを行う必要があります。

これらのリスクアセスメントの実施は、事業者の法令上の努力義務として労働安全衛生法第28条の2に定められているので、職場の「リスクの低減」に向けて、リスクアセスメントに積極的に取り組み、「安全度の高い職場」を実現しましょう。

|おわりに

リスクアセスメントについて厚生労働省のリスクアセスメント研修等の資料をもとに記載させていただきました。
リスクを低減し改善することで安全を確保するよう、また法令で定められた事業者の義務としてリスクアセスメントを行うよう定められていることを忘れないでくださいね。



参考資料:
厚生労働省「リスクアセスメント」関連資料
・リスクアセスメント実施事例集
・リスクアセスメント担当者養成研修受講者用テキスト
  https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000048700.html

・リスクアセスメント担当者養成研修講師用テキスト

など



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