![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/172984464/rectangle_large_type_2_376d3a567f3a3c278d80e04dc5e198ec.jpeg?width=1200)
横断歩道は歩行者優先です。
今更ながらだが、信号機のない横断歩道は「歩行者優先」です。しかし、どうも車の運転者の半数程度しかこのルールを遵守できていないといいます。あなたは、信号機のない横断歩道が設置されている場所でどのような運転をしていますか?
今回は「横断歩行者保護義務」について記します。
|あまり理解されていない「横断歩行者保護義務」
道路交通法に、「横断歩行者保護義務」という規定があること、そしてその義務の内容を正しく理解している人が少ないのではないか、もしくは理解していてもルールを守るという遵法意識が低いのではないかとも言われています。
現実に、信号機のない横断歩道の端に立って横断しようと左右をキョロキョロしている子供や高齢者がいても一時停止して、歩行者を優先的に横断させるということをしない運転者が多い。
ひどいときは歩行者が横断歩道上を横断中であるにもかかわらず、クラクションを鳴らしたり、ハンドル操作で避けていくような運転者も散見します。
でもこれらは明らかに「横断歩行者保護義務違反」であるし、万が一交通事故を発生させると逮捕されたり、民事的にも大なリスクを負うことになります。
|JAFの調査
(1)調査の趣旨
JAF(日本自動車連盟)は、2016年6月に実施した「交通マナーに関するアンケート調査」の設問の中で、「信号機のない横断歩道で歩行者がわたろうとしているのに一時停止しない車が多い」と思う方は86.2%(「とても思う」が43.7%、「やや思う」が42.5%)に達し、このような場面で一時停止しない車が多い傾向にあったことから、その実態を把握するために「信号機のない横断歩道での歩行者横断時における車の一時停止状況全国調査」を実施しています。
(2)調査結果
JAFが実施している横断歩道における横断歩行者保護状況の実態調査(2024年8月~)の結果をみてみると、
信号機が設置されていない横断歩道を通過する車両を対象(6,6477台)に行ったところ、歩行者が渡ろうとしている場面で一時停止した車は3,525台で53.0%という結果でした。
これは、前年の調査時と比べて7.9ポイントの増加となり、初めて50%を超えたようですが、依然として約半数の車が止まらないという結果でした。
![](https://assets.st-note.com/img/1738580662-VFEzns1GmZUxyCKMuw96ePkI.png?width=1200)
(3)都道府県別の結果
都道府県別にみると、一時停止率に県間格差があることがわかります。
○ 一時停止率が高い県
1位:長野県 87.0%、2位:石川県 80.9%、3位:岐阜県 75.2%、4位:熊本県 74.8%、5位:福岡県 74.3%
○ 一時停止率が低い県
1位:富山県 31.6%、2位:北海道 34.1%、3位:福井県 34.7%、4位:茨城県 35.2%、5位:和歌山県 36.2%
ということで、長野県と和歌山県での格差は大きいです。
![](https://assets.st-note.com/img/1738580723-9sKjLBhoX6S7eUJW2Rim0dkD.png?width=1200)
|道路交通法の規定をひもとく
歩行者保護義務に関する規定は、道路交通法第38条にあります。
規定については下記に引用して表記していますが、この規定で歩行者保護義務として以下の三点が規定されています。
① 安全速度接近義務
車両等は、進路前方の信号機のない横断歩道を横断しようとする歩行者等がないことが明確に確認できない場合には、横断歩行者がいた場合に横断歩道の手前の停止位置で止まれるような速度で進行することとされている。
この安全速度接近義務は、横断しようとしている歩行者がいるかどうか確認できない場合の義務であり、明確に確認できない場合としては次のような例が想定できる。
・ 横断歩道の端(入口)付近に人がいるが横断するかどうかは分からない
・ 横断歩道の端(入口)付近に駐車車両や電話ボックス、看板などがあり見とおせないため歩行者の有無が不明である
・ 夜間などで暗く横断歩道はあるが歩行者がいるかどうか分からない
・ カーブの先に横断歩道が設けられているが見通しが悪く歩行者の有無が分からない
などです。
安全速度接近義務は徐行義務ではなく、走行速度と停止距離の関係で横断歩行者を発見した際に停止線手前で停止できるような安全な速度で横断歩道に接近しなければならないのである。(第1項前段)
② 一時停止し通行を妨げない義務
車両等は、横断歩道等により進路前方を横断しまたは横断しようとしている歩行者等があるときはその横断歩道等の直前で一時停止して、その通行を妨げないようにしなければならないのである。(第1項後段)
③ 停止している車両等の側方ある場合の一時停止義務
車両等は、横断歩道直前に停止している車両がある場合に、その側方を通行して前方に出ようとする場合に一時停止をしなければならないのである。
これは、信号機等で歩行者の横断が禁止されていない横断歩道等(歩行者用信号が「赤」で通行が禁止されていない場合など)またはその手前の直前で停止している車両がある場合に、その停止している車両の側方を通過してその前に出ようとするときには一時停止しなければならないこととされています。(第2項)
④ 追い抜きの禁止
車両等は、交通整理が行われていない横断歩道等及びその手前の側端から前に30メートル以内の道路の部分においては、その前方を進行している他の車両等(特定原付を除く)の側方を通過してその前方に出てはならないこととしている。
ここでは、「側方を通過して前に出ては・・」規定しており、追い抜き行為はもとより進路変更を伴う追越し行為も含まれることになります。
ただし追越しは第30条3号で交差点、横断歩道等の手前の側端から前に30メートル以内の部分が追越し禁止場所となっていることから、実務的には同条を適用することになるが、いずれにしても、追い抜き、追越しが禁止されているのです。
道路交通法第38条
(横断歩道等における歩行者等の優先)
第三十八条 車両等は、横断歩道又は自転車横断帯(以下この条において「横断歩道等」という。)に接近する場合には、当該横断歩道等を通過する際に当該横断歩道等によりその進路の前方を横断しようとする歩行者又は自転車(以下この条において「歩行者等」という。)がないことが明らかな場合を除き、当該横断歩道等の直前(道路標識等による停止線が設けられているときは、その停止線の直前。以下この項において同じ。)で停止することができるような速度で進行しなければならない。この場合において、横断歩道等によりその進路の前方を横断し、又は横断しようとする歩行者等があるときは、当該横断歩道等の直前で一時停止し、かつ、その通行を妨げないようにしなければならない。
2 車両等は、横断歩道等(当該車両等が通過する際に信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等により当該横断歩道等による歩行者等の横断が禁止されているものを除く。次項において同じ。)又はその手前の直前で停止している車両等がある場合において、当該停止している車両等の側方を通過してその前方に出ようとするときは、その前方に出る前に一時停止しなければならない。
3 車両等は、横断歩道等及びその手前の側端から前に三十メートル以内の道路の部分においては、第三十条第三号の規定に該当する場合のほか、その前方を進行している他の車両等(特定小型原動機付自転車等を除く。)の側方を通過してその前方に出てはならない。
|道路交通法第13条との関係
時々SNSなどで「対向車の影から横断横行者と接触した。飛び出しで歩行者が悪い」などということがささやかれています。
また「歩道の端から急に横断歩道に出てきた」などということで、歩行者に大きな過失や原因があるというようなことが書かれていることもあります。
しかし、果たしてそうでしょうか?
道路交通法では横断歩道等を横断する歩行者等の保護が大前提になっています。
前述のように車両等には、第38条に規定されているように「一時停止義務」や「安全速度接近義務」などが課せられています。
この規定以外にも第13条(横断の禁止の場所)に次のように規定されています。
(横断の禁止の場所)
第十三条 歩行者等は、車両等の直前又は直後で道路を横断してはならない。ただし、横断歩道によつて道路を横断するとき、又は信号機の表示する信号若しくは警察官等の手信号等に従つて道路を横断するときは、この限りでない。
2 歩行者等は、道路標識等によりその横断が禁止されている道路の部分においては、道路を横断してはならない。
つまり、歩行者等に対して、車両等の直前又は直後で道路を横断することを禁止しているのだが、後段のただし書きで「横断歩道によって道路を横断するとき」「信号機の表示する信号」もしくは「警察官等の手信号等」に従つて横断するときについては、「この限りではない」とされ、横断歩道を横断する歩行者等は除外されているのです。
これは、
○ 横断歩道は、歩行者等の安全を図るための施設であること(第2条第1項4号)
○ 歩行者には、「横断歩道横断義務」を課していること(法第12条第1項)
○ 車両等の運転者には、「横断歩行者保護義務」を課していること(第38条第1項)
によるからです。
|横断歩道の標示は
信号機のない横断歩道の手前には、横断歩道ありの標識と◇ダイヤのマークが二つ路面に標示されています。
道路標識は横断歩道手前もしくは停止線付近に設置されていますが、路面標示は停止線の30m手前に一つとその手間(10~20m手前)の二カ所に設置されています。
これらが見えたら、アクセルから足をはなし横断歩道上やその周辺の歩道などの歩行者の有無や横断しようとしている人の有無などを確認しましょう。
|その他用語について
この文中の記載で
○ 「横断歩道等」は、「横断歩道または自転車横断帯」をいいます。
○ 「歩行者等」は、「歩行者及び自転車横断帯の設けられている場所での普通自転車」が対象となります。
横断歩道だけしか設置されていない場合には、自転車は、横断歩行者等保護義務の対象ではありません。
しかし横断歩道を自転車を運転して通行することができることから運転する場合には自転車にも注意しましょう。
![](https://assets.st-note.com/img/1738592800-kibYU3IJCHvlgwtZGLSs4T8X.png?width=1200)
|横断歩行者保護義務の対象
横断歩道を横断する歩行者保護義務については、車両である自転車や特定小型原付も対象になります。
したがって車道を走行する自転車や特定小型原付が、横断歩道に接近した場合にも第38条の義務が課せられることになります。
例えば、車道を走行中の自転車が、信号機が設置されていない横断歩道を通行する場合に横断歩行者がいる場合には、停止線直前で一時停止して歩行者の通行を妨げないようにしなければなりません。
|おわりに
以上のように、車両等の運転者は、横断歩道等では歩行者等を保護する義務があるので、横断歩道ありの路面標示(◇(ダイヤのマーク))を発見したら横断歩行者等があるかもしれないことを予測しながら速度を調整するとともに横断歩道等の安全を確認して適切に対応しましょう。
参考資料