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自転車の最高速度は?

自転車は車の仲間だと言われているが、その最高速度は如何に?


|はじめに

ご案内のとおり、最近では自転車の速度が60km/h以上もでるような軽量でギヤー比の大きな製品が市販されていることもある。
そのような自転車の最高速度は何キロでしょうか?
法定速度や規制速度(道路標識で指定された速度)に自転車も含まれるのか?
いろいろ見解や議論の分かれるところである。

|法定速度と規制速度

最高速度には法定速度規制速度がある。
法定速度はいうまでもなく道交法及び施行令で定める法定の速度をいう。
法定速度は、道路交通法第22条に規定され「標識がある場合は標識に従い、その他の道路では政令に定める最高速度に従うこと」と定められている。

そして、その政令(道路交通法施行令)には、自動車は60km/h(キロメートル毎時)、原付は30km/hと規定されている。

一方、規制速度は、標識によって最高速度が指定されている道路における最高速度ということになる。

(最高速度)
第二十二条 車両は、道路標識等によりその最高速度が指定されている道路においてはその最高速度を、その他の道路においては政令で定める最高速度をこえる速度で進行してはならない。

e-Gov法令検索:道路交通法

|自転車の法定速度

さて、道路交通法及び道路交通法施行令をひもといてみても、自転車の法定速度についての定めは見当たらない。

道路交通法施行令第11条に規定する自動車の最高速度は、
一般道路の場合、 原付は30km/h
それ以外の車両については60km/h
高速道路については80km/h
ということになっている。

そしてこの場合の最高速度の対象となるのは「原付及び自動車」と定められており、自転車は対象となっていないのである。

道交法施行令
(最高速度)
第十一条法 第二十二条第一項の政令で定める最高速度(以下この条、次条及び第二十七条において「最高速度」という。)のうち、自動車及び原動機付自転車が高速自動車国道の本線車道(第二十七条の二に規定する本線車道を除く。次条第三項及び第二十七条において同じ。)並びにこれに接する加速車線及び減速車線以外の道路を通行する場合の最高速度は、自動車にあつては六十キロメートル毎時、原動機付自転車にあつては三十キロメートル毎時とする。

e-Gov法令検索:道路交通法施行令

|なぜ自転車の法定速度の定めがないのか

自転車の法定速度については上記のように道交法及び道路交通法施行令を探しても規定がない。
なぜ自転車の法定速度の規定がないのかというと、いわば想定外。

そもそも自転車は車両であり、車の仲間ではあるが、原付や自動車とは車両装置としても異なるものである。
エンジンや電動なので動力を使用することなく、人力でペダルをこぐことで走行するというものである。
したがって原付や自動車よりも速い速度で走行するということが、法令が制定された当時は想定されてなかったということである。

自転車は人力で走行することからそれほど高速度で走行するものではないという考え方である。

そのため自転車については、その装置として速度計の装備が義務づけられていないのである。

|公安委員会が行う交通規制

交通規制は都道府県公安委員会が交通の実態等に応じて個別に行うことが行うことができるものである。
最高速度を規制する道路標識としては、標識標示令に定める最高速度を指定する標識「323」を設置して行われる。

また、交通規制は車両などの種類と交通規制の内容を指定して行うことができ、例えば自転車専用道路というのは「自転車」という特定の車両と自転車専用通行帯(道路)という規制の内容を指定して、道路標識を設置して行われることになる。

また、本題の最高速度については、特定の種類を特定して最高速度を指定することができることとされており、そのために道路標識として「323の2」が設けられている。

したがって、自転車という特定の車両の種類を特定して最高速度規制を行うことができるのだ。
特定の種類を特定して交通規制を行う場合には、標識の補助板で「自転車」と車両の種類を特定することになる。

最高速度
(323)
交通法第二十二条の道路標識により、車両(原動機付自転車、自動車(緊急自動車を除く。以下この項において同じ。)が他の車両を牽けん引している場合(牽けん引するための構造及び装置を有する自動車(道路交通法施行令(昭和三十五年政令第二百七十号。以下「交通法施行令」という。)第十二条第一項に規定する普通自動二輪車を除く。)によつて牽けん引されるための構造及び装置を有する車両を牽けん引する場合を除く。)における当該自動車(以下「他の車両を牽けん引している自動車」という。)及び緊急自動車を除く。)及び路面電車の最高速度を指定し、原動機付自転車及び他の車両を牽けん引している自動車の最高速度につき交通法施行令に規定する最高速度以下の速度とする場合における当該最高速度を指定し、並びに緊急自動車の最高速度につき交通法施行令に規定する最高速度以上の速度とする場合における当該最高速度を指定すること。

特定の種類の車両の最高速度
(323の2)
交通法第二十二条の道路標識により、車両の種類を特定して最高速度を指定すること。

e-Gov法令検索:道路標識標示令  

法定速度として自転車の最高速度は想定していないものの、交通規制として都道府県公安委員会が道路交通の実態等に応じて行うことができることになるのである。

|自転車はどう走る?

一般的な道路標識での規制速度(道路標識323)には、自転車は含まれないことになる。
したがって特定の種類として「自転車」が指定されていない場合には自転車の速度規制はないということになる。

とはいえ、自転車は車両の一種であり、自動車や原付自転車が最高速度を指定されているような場合には、道路標識が示す一般的な規制速度の範囲内で走行することが望ましいことはいうまでもない。

|おわりに

SNSなどでも自転車の最高速度について、様々な解釈や種々の意見などが掲載されている。
自転車の最高速度については上記のようなことから、法定速度はなく、一方で必要により都道府県公安委員会は交通規制として、特定の種類を指定して最高速度の規制を行うことができる(道交法第4条)ということになる。
また、警察署長等も「適用期間の短いもの」について交通規制を行うことができる(道交法第5条)こととされている。

法令上想定されていない、いや法定として定める必要が無かったものでも、交通の安全と円滑などの道路交通法の目的を達成するために必要な交通を行うことができるのである。

(公安委員会の交通規制)
第四条 都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)は、道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、又は交通公害その他の道路の交通に起因する障害を防止するため必要があると認めるときは、政令で定めるところにより、信号機又は道路標識等を設置し、及び管理して、交通整理、歩行者又は車両等の通行の禁止その他の道路における交通の規制をすることができる。この場合において、緊急を要するため道路標識等を設置するいとまがないとき、その他道路標識等による交通の規制をすることが困難であると認めるときは、公安委員会は、その管理に属する都道府県警察の警察官の現場における指示により、道路標識等の設置及び管理による交通の規制に相当する交通の規制をすることができる。

(警察署長等への委任)
第五条 公安委員会は、政令で定めるところにより、前条第一項に規定する歩行者又は車両等の通行の禁止その他の交通の規制のうち、適用期間の短いものを警察署長に行なわせることができる。
2 公安委員会は、信号機の設置又は管理に係る事務を政令で定める者に委任することができる。

e-Gov法令検索:道路交通法

参考資料

道路交通法
道路交通法施行令
道路標識、区画線及び道路標示に関する命令

https://laws.e-gov.go.jp/law/335AC0000000105/20201201_502AC0000000042#Mp-Ch_1