道路交通法をひも解く ~黄色信号~
信号の意味は知っているよ!と皆さんはいう。
でも本当に大丈夫かな?
黄色信号をちゃ~んと守っているかな?
運転中に青から黄色に信号が変わると・・・・、
判断を迷いがちな黄信号についてちょっと説明します。
|意外に多い黄色信号のトラブル
交差点の信号に関して、よくトラブルのもとになるのが「黄色信号」である。
たとえば、ドライバーが対面する信号が、ちょうど青から黄に変わるところだったので、赤にならないうちに通りすぎようと思ってアクセルを踏んで通過したら警察官に停止を求められた。
警察官は、「赤」で交差点を進行したという。
しかしドライバーは、交差点に入るときは黄色だったので、黄信号で交差点に入ったつもりであり「黄色になったので進んだ」と主張。
水掛け論になったが、結局のところ信号無視違反として切符を切られてしまったという。この種の話はよく聞く。
|黄色信号の意味
ドライバーが「黄色だったので進んだ」というが、それでよいのか?
道路交通法施行令第2条に信号の意味が示されているが、車両に関しては「二」に
と書いてある。
黄色信号(黄色の灯火)の意味としては
「停止線を越えて進行してはならないこと」
というのが本則。
つまり赤信号と並んで「止まれ」を意味しているのだ。
車は一定の速度で進行していることから、「車は急には止まれない」のでいわゆる急ブレーキになるような操作をしなければならないなど「安全に停止できない場合を除く」という除外事由をただし書きにしている。
したがって、青から黄色に信号が変わった時点でブレーキを踏めば停止できる距離にあるのならば停止しなければならないのだ。
横断歩行者用信号が赤と青の二灯火式で、車両の信号の「黄色」の代わりに青の点滅があり、青点滅時は「歩行者は横断を始めてはならない」というのとほぼ同義である。
|黄色信号はジレンマ?
ドライバーの中には、「黄色の信号は意味があいまい」と思っている人がいるかもしれない。確かに信号が、「青」の「進むことができる」か「赤」の「停止位置を超えて進行してはならない」の二極であればわかりやすいかもしれないが、それでも現実的ではなく、あいまいでジレンマが生じるのだ。
それは車両は急には止まれないからなのである。
いまだ交差点に入っていない車にとって、「黄信号」は、進んでよいのか、止まるベきなのか迷うところであるのかもしれないが、その意味する根本は「止まれ(進行してはならない)」なのだ。
黄色信号及びその後に続く全赤信号(対面する信号が黄色から赤色、交差道路も赤である全方向赤色になること)の数秒間に交差点から車を一掃し、交差する方向の車を安全に通過させるための準備時間なのである(いわゆる「クリアランス時間」なのだ)から、「黄信号だから早く交差点へ進入して、早く渡りきらなければ・・」と考えるのはこの信号の根本的な意味・趣旨の考え方から外れているといわざる得ないのだ。
|信号の黄色は「注意」ではない
「黄色」はいろいろなところで「注意」という意味でつかわれていることが多い。
黄色は視認性の高い色なので、一般的に「警戒色(警告色)」に使用され、交通の場でも子供たちの安全のための黄色いワッペンや黄色い帽子、ランドセルカバーなど、注意を呼びかけるものとして使用されていることも多い。
また、「黄色信号」という信号を比喩した使い方がされている例がある。
金融危機への「黄信号」が灯る
米国銀行が灯す黄色信号
などがそうだが、金融や経済などいろいろ場面で「注意」を示すワードとして信号を比喩して使われていることから
「黄色信号」=「注意」
という意識が潜在的にあるのかもしれない。
黄色信号は、注意を呼び掛けるのではなく、すでに交差点に入っている車などを排除・排出するための信号なのだ。
|道路交通法制定時の議論
道交法や道交法施行令の制定される当時その法案の立法作業を担当した当時の交通局長で人事院総裁をされた内海倫先生の著書には
と記されている。
|おわりに
冒頭の例の場合には、ドライバ-からみた信号が青から黄色に変わった時が安全に停止できる位置にいたのかが一つのポイントにもなるだろう。
とはいえ黄色信号の意味の根本は「止まること」にあることを再確認し、信号の変わり目には特に注意をしたいものだ。
(信号機の信号等に従う義務)
第七条 道路を通行する歩行者等又は車両等は、信号機の表示する信号又は警察官等の手信号等(前条第一項後段の場合においては、当該手信号等)に従わなければならない。
(罰則 第百十九条第一項第二号、同条第三項、第百二十一条第一項第一号及び第二号)