国民年金保険料の強制徴収について
正社員として会社に勤務している人及びその扶養家族をのぞき、国民年金保険料を納付する必要があるが、実は未納者も多く日本年金機構が督促や強制徴収を行っていると聞いたのでリサーチしてみました。
|年金保険料を納付する義務
公的年金制度として「国民年金制度」と「厚生年金」があります。
このことについては以前に記事にしていますので参照してください。
公的年金制度について簡記すると、
➤ 国民年金制度(基礎年金)
日本国内に住んでいる20歳以上60歳未満の方で、厚生年金保険に加入していない方は、すべて国民年金の第1号被保険者または第3号被保険者となります。
➤ 厚生年金制度
会社に勤めている人、公務員、団体職員などで70歳未満の人が加入する年金制度です。
制度上、厚生年金保険に加入している人は自動的に国民年金にも加入していることになり、第2号被保険者になります(扶養家族も含む)。
|年金保険料の納付
国民年金第1号被保険者は国民年金保険料を納付する義務があります。
また、国民年金第1号被保険者の世帯主および配偶者は国民年金保険料を連帯して納付する義務があります。
国民年金保険料は、基本的には各個人毎に納付することになりますが、収入のない学生の場合などには、一般的にはその親権者が支払っている場合が多いのではないかと思います。
一方、厚生年金保険の保険料は、給与天引きで企業(勤務先)を通じて支払われています。
この支払っている厚生年金保険料の中に国民年金保険料も含まれているのです。そして第2号被保険者となり老齢年金や障害年金の制度の対象にもなるのです。
厚生年金保険料は、勤務先経由で納付されることから基本的には未納はありませんので以下国民年金保険を中心に記載します。
|納付期限までに納付されない場合
➤ 納付勧奨
国民年金保険料が納付期限までに納付されない場合、納付勧奨を行います。
納付勧奨は日本年金機構職員が実施するほか、電話や文書による納付の案内をします(当該業務は民間事業者に委託しているとのこと)。
➤ 督促
国民年金保険料を支払う能力がありながら、たび重なる納付勧奨を実施しても国民年金保険料が納付されない場合、最終催告状を送付します。
最終催告状に記載した指定期限までに未納の国民年金保険料を納付されない場合、督促状が送付されます。
督促状は赤い封筒を用いて行われることから、督促状のことを「赤封筒」ともいわれています。
なお、被保険者に連帯納付義務者(世帯主および配偶者)がいる場合、連帯納付義務者に対しても督促状が送付されます。
督促状に記載した指定期限までに必ず納付しないと次の手続きに移行します。
➤ 差押え
督促状で指定した期限までに未納の国民年金保険料が納付されない場合、「財産の差押え」という手続きになります。
差押え手続きは、被保険者に連帯納付義務者(世帯主および配偶者)がいる場合、連帯納付義務者に対しても財産の差押えが行われます。
➤ 差押えの対象
一般的に差押えの対象となるのは、「給与の一定額」、「預貯金」、「自宅などの不動産」、「生活必需品以外の動産」、「自動車」などです。
➤ 延滞金
督促状で指定した期限までに未納の国民年金保険料が納付されない場合は、延滞金を支払わなければなりません。
|国民年金保険料の最終通告数等
日本年金機構が公表したと、2023年度の「国民年金保険料強制徴収の実施状況」では
年金保険料未納による「最終督促状送付件数」は約18万件、
「強制執行件数」は約3万件
に及んでいるということです。
つまり、国民年金保険料を支払わず年に約3万人もの人が「差押執行」、つまり強制執行を受けているというのです。
これは国民の公平感の解消を目指し、強制徴収の実施が強化されているのです。
直近の「差押執行」件数は、
2021年度46件(新型コロナウィルス関係で戸別訪問等控えた)
2022年度1万2,784件
2023年度3万0,789件
とのことです。
誰もが差押えの対象になるわけではなく、現状では「控除後所得が300万円以上かつ7月以上保険料を滞納している未納者」が対象ということです。
今後厳しくなる可能性はあります。
一方で、免除等の制度もあります(下図参照)。
|おわりに
国民全体の義務である公的年金制度、いろいろ問題を指摘する人がいるかもしれないが、皆が等しく保険料を負担することで制度が回っています。
今後も制度の改正等は伴うかもしれないが適切に回っていくべきものと推察しています。
そのことが国民全員の老齢時の生活を保障することにつながっていくのです。
[参照]
厚生労働省『令和5年度の国民年金の加入・保険料納付状況について』
日本年金機構『国民年金保険料を納付していない期間がある方にお知らせをお送りしま
す』