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「放置違反金制度」をご存じ?

放置駐車違反は車両から離れていて、直ちに移動できない状態にある駐車違反をいうが、この違反処理には二つのパターンがある。
出頭して交通反則制度に基づき青切符処理+反則金を納めるという方法と、警察に出頭しないで後日車両の使用者宛に送付されてくる放置違反金の納付命令に基づいて違反金を納付納付するというパターンである。
前者は一般の交通違反処理とほぼ同様なので、今回は後者について説明します。


|放置違反金制度とは

放置車両確認標章を取り付けられた場合、車両を運転し駐車した者がこの違反について、警察署等に出頭して、交通反則制度に基づくいわゆる青切符処理をし反則金の納付をした場合又は公訴を提起され、若しくは家庭裁判所の審判に付された場合以外は、車両の使用者に対して放置違反金の納付を命ぜられることがある。

つまり放置車両の運転者(違反者)が何らかの処分等を受けて放置駐車違反の処理が完結していない場合には、違反者でなく車両の使用者にその責任を負ってもらう(放置違反金を納めるなど)という制度。
下図が比較的わかりやすいが、右側が一般的な「交通反則制度」によるもの、右側が「放置違反金制度」の流れである。

資料:警視庁HPより転載

|放置車両の確認・確認標章の取付け

 下図のような駐車違反の告知ステッカーをみたことがあると思う。
これは、警察官又は駐車監視員が放置車両を確認した場合、確認をした旨などを告知する放置車両確認標章(黄色いシール)を車両の見やすいところに取り付けるものなのだ。

(放置違反金)
第五十一条の四 警察署長は、警察官等に、違法駐車と認められる場合における車両(軽車両にあつては、牽けん引されるための構造及び装置を有し、かつ、車両総重量(道路運送車両法第四十条第三号の車両総重量をいう。)が七百五十キログラムを超えるもの(以下「重被牽けん引車」という。)に限る。以下この条において同じ。)であつて、その運転者がこれを離れて直ちに運転することができない状態にあるもの(以下「放置車両」という。)の確認をさせ、内閣府令で定めるところにより、当該確認をした旨及び当該車両に係る違法駐車行為(違法駐車と認められる場合に係る車両の運転者の行為をいう。第四項及び第十六項において同じ。)をした者について第四項ただし書に規定する場合に該当しないときは同項本文の規定により当該車両の使用者が放置違反金の納付を命ぜられることがある旨を告知する標章を当該車両の見やすい箇所に取り付けさせることができる

|放置車両とは

放置車両とは、違法駐車と認められる車両であって、運転者がその車両を離れて直ちに運転することができない状態にあるものをいう。

この放置車両の考え方について、違反者からはいろいろ弁解なども言われるようだが、
駐車時間の長短、車両から離れた距離の遠近、エンジンを止めているか否か、ハザードランプを点けているか否か、腹痛でトイレに駆け込んでいた、ダッシュボードの上に用件・連絡先を掲示していた
など理由の如何には関係なく、宅配などの配達や貨物の積み卸しのためであっても、
 車両を離れ直ちに運転することができない状態
になれば、放置車両ということになる。

|使用者責任の追求

「放置車両確認標章」を取りつけられた放置車両の運転者が警察に出頭してこないときなど、運転者の責任を追及することが困難な場合に、その車両の使用者に「放置違反金」の納付を命ずる制度である。

これは駐車違反の未然防止と、多くの場合車両の運転者と車検証上の使用者が同じであること、車両の使用者はその運行に関して適切な管理をしなければならないことなどから駐車違反をした運転者等の逃げ得を許さないという考え方で、車両の使用者の責任を追求することになったものである。

なお、車両の使用者とは、車両を使用する権限(権原)を有し、その運行を支配し管理する者をいい、通常は車検証の使用者の欄に記載されている者である。

|弁明の機会の付与とは

公安委員会が、放置違反金の納付命令を行うことになるが、納付命令を行う前に、放置駐車違反の「運転者」ではなく、車両の「使用者」(自動車検査証に記載の「使用者」等)弁明通知書を送付し、弁明書及び有利な証拠を提出する機会を付与するものである。

弁明書の提出は任意であり、車両の使用者として弁明の事由がない場合は提出する必要はない。

|弁明が認められる場合
・事実誤認等により違反が成立していない場合
・違反日において、放置車両の使用者でなかった場合
・違法駐車行為が天災等の不可抗力に起因するなど、当該車両に係る違反を当該車両の使用者の責に帰すことが著しく相当性を欠くことが明らかである場合
である。
つまり、上記ような事由がない限り弁明は認められないということになるので弁明書で回答してもほぼ無理!

|弁明審査結果

審査結果は、弁明書の提出者に対して回答はしていない
弁明書の内容を審査し、その内容が認められた場合は、放置違反金の納付命令は行われないことになる。

一方、弁明書の内容が認められなかった場合は、放置違反金納付命令書が郵送されることになり審査結果の通知と同様であろう。

もしも審査結果内容が認められた場合は、回答がないことから、いつまでも音沙汰なしのまま不安定な状態でいつまでも置かれることになる。

|放置違反金の仮納付

早期に手続きを終結したい車両の使用者は、弁明通知書に同封されている「納付(寄託)書及び領収証書」により放置違反金を仮納付することができる。

仮納付された放置違反金は、公安委員会の掲示板に公示されることで放置違反金の納付とみなされることになる。

弁明通知書に同封されている
 「納付(寄託)書及び領収証書」
により放置違反金の仮納付又は、反則金の納付が確認されない場合は、その後あらためて郵送される放置違反金納付命令書等に同封されている
 「納入通知(納付)書及び領収証書」
により放置違反金を納付することができる。

|放置違反金の納付命令

放置車両確認標章が取り付けられた車両について
・違反した運転者による反則金の納付
・違反した運転者に対する公訴の提起
・違反した運転者(少年)に対する家庭裁判所の付審判

がなく、運転者責任が追及できない場合は、公安委員会は車両の使用者に対して、放置違反金の納付を命令することとなる。

|放置違反金の額

放置違反金の額は、その放置違反金の納付を命ぜられる原因となった違法駐車行為をした者が納付すべき反則金の額と同額である。
なお、違反点数は、交通反則制度により運転者が告知(青切符処理)された場合の違反点数であり、放置違反金制度の対象の場合には付加されない。

筆者作成

|車両の使用制限

放置違反金の納付命令を受けても車両の運行管理を改善せず、常習的に違反を繰り返すような車両の使用者には、一定期間、車両の使用制限が命じられることになる。

公安委員会が、車両の使用者に対し放置違反金の納付命令をした場合、その使用者が納付命令の原因となる違反が行われた日(標章取付日)を起算日として、過去6か月以内に、使用制限の前歴の回数に応じて表1の納付命令の回数を受けていると、表2の期間の範囲内で車両の使用が制限されることになる。

なお、前歴の回数とは、納付命令の原因となる違反が行われた日(標章取付日)を起算日として過去1年以内に車両の使用制限命令を受けた回数をいいう。

参考資料・警視庁HPより:使用制限命令の対象(前歴なしの例)
参考資料・警視庁HPより

|滞納処分

放置違反金の納付命令を受けた者(使用者)が、納付の期限を経過しても納付しないときは、督促状が送付される。

この督促を受けた者が、その納付の期限までに放置違反金を納付しないときは、財産の差押さえなど強制的に放置違反金及び延滞金を徴収することになる。

|車検拒否

放置違反金を滞納して公安委員会による督促を受けた者は、車検時に、放置違反金を納付したこと又は徴収されたことを証する書面を提示しなければ自動車検査証の返付を受けることができない。

つまり放置駐車違反について、放置違反金が未納で督促状が届いても納付しない人は、車検を受けても車検証の更新ができないという「車検拒否」制度により、放置違反金を納付させるということなのだ。

(放置違反金等の納付等を証する書面の提示)
第五十一条の七 自動車検査証の返付(道路運送車両法第六十二条第二項(同法第六十七条第四項において準用する場合を含む。)又は総合特別区域法(平成二十三年法律第八十一号)第二十二条の二第三項の規定による自動車検査証の返付をいう。以下この条において同じ。)を受けようとする者は、その自動車(道路運送車両法第五十八条第一項に規定する自動車をいう。)が最後に同法第六十条第一項若しくは第七十一条第四項の規定による自動車検査証の交付又は自動車検査証の返付を受けた後に第五十一条の四第十三項の規定による督促(当該自動車が原因となつた納付命令(同条第十六項の規定により取り消されたものを除く。)に係るものに限る。)を受けたことがあるときは、国土交通大臣等に対して、当該督促に係る放置違反金等を納付したこと又はこれを徴収されたことを証する書面を提示しなければならない。
2 国土交通大臣等は、前項の規定により同項の書面を提示しなければならないこととされる者(前条第二項前段の通知に係る者に限る。)による当該書面の提示がないときは、自動車検査証の返付をしないものとする。

|制度に関する雑感

以上放置違反金制度について記載した。
私見ではあるが、この制度には若干問題を感じている。

放置車両確認標章(黄色いシール)を取り付けられた場合に、警察署等に出頭した場合の違反者に対する措置と出頭しなかった場合の違反者に対する措置(車両の使用者の責任追及)では、
 反則金と放置違反金の額は同じ
であっても、前者(違反者が出頭した場合)には点数が付加されるが、後者(使用者責任追求)は
違反者には点数が付加されないこと
違反者自身が違反金を納めない場合があること(車両の使用者が違反者でない場合)
があり公平性を問題を感じ得ない。

しかしながら多数発生している放置駐車違反を抑止する効果や違反者未納付事案を減らす、逃げ得を許さないための方策であるという考え方にも賛同できる。
ただ、放置違反金制度を理解せず、素直・正直に出頭した違反者が馬鹿をみることのないよう制度の周知を徹底して欲しいものである。

|おわりに

若干の私見・雑感を記載したが、いろいろな考え方があるかと思う。とはいえ放置駐車違反をしないことが一番。
街中でよくみるのは、有料または無料駐車場に接した道路上に駐車している車だ。
道路上は、道路利用者が共有する場所であり、ぜひ最寄りの駐車場に駐車して欲しいものだ。

参考資料:


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