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結婚詐欺 その3

2日に渡り結婚詐欺について、その概要や刑法上の位置づけなどについて書いてきましたが、さて、ではもし被害にあったら,被害にあいそうに感じたらどうしたらよいでしょか?今回はそのことに関して簡単に記載します。


|結婚詐欺にあった場合

結婚詐欺にあった場合に、被害者の取り得る対応は 大きく2つあります。
それは
 ・刑事告訴する
 ・民事事件として返還請求訴訟を提起する

ということになります。

もしも被害金額が大きい場合には、民事事件として貸金返還請求を、刑事告発(被害届)と並行して行うことをお勧めします。
被害にあった場合やどうもおかしい、詐欺ではないかと感じた時は、警察や弁護士などに相談してみるのがよいでしょう。

| 詐欺罪で刑事告訴    

➤ 告訴相談等
結婚詐欺の被害に遭った場合、詐欺罪として刑事告訴することになりましょう。
被害にあったかなと感じたら速やかに警察署等の生活相談窓口などに「告訴相談」をしましょう。

刑事告訴とは警察や検察などに対し、被害者が遭った犯罪事実を申告し、加害者に対する処罰を求める申し立てです。

告訴が認められると、警察は申告のあった犯罪に関する捜査をし、犯罪行為に該当すると認めると、結婚詐欺師は逮捕されることになるでしょう。

告訴や民事訴訟を提起することにより、加害者は起訴されるのを防ぐため、刑事告訴での捜査途中でも、被害額の弁償・慰謝料等の支払いを約束する形で示談が求めてくる場合があります。

➤ 民事事件
民事では、被害者は結婚詐欺師(相手方)に貸した金額に対する「貸金返還請求」を起こすことができます。

民事はあくまで被害者と加害者間の当事者同士での争いとなるため、処罰の実施を警察等の判断にゆだねる刑事告訴とは異なり、結婚詐欺師に対して直接被害額や慰謝料を請求することになります。

〇 民事の流れ
一般的には、まず交渉で貸した金銭等について返してもらえるよう交渉します。交渉して返金に応じてもらえなかった場合に、支払’督促や訴訟を起こすことになります。

調停や訴訟を通じて、裁判所の判決が出たにもかかわらず、貸したお金を返済してもらえない場合は、相手の財産を差し押さえる強制執行の手続きを取ることも可能です。

また、民事での貸金返還請求は、刑事告訴と並行して行うことが可能です。
もし結婚詐欺により金銭的被害を受けた場合は、基本、返還請求の手続きを並行して行うことを考える方が良いでしょう。

➤ 詐欺師が逮捕されたら
一般的に詐欺(結婚詐欺)で逮捕されると、刑事裁判で有罪判決を受け、刑事処罰を受ける可能性があります。

詐欺罪の刑罰は「10年以下の懲役」になります。
罰金刑は定められていないため、悪質な結婚詐欺であれば、初犯でも刑務所に収容される可能性も十分に考えられます。つまり詐欺罪は重罪といえます。

|必要な資料

刑事事件や民事事件として対応する場合においても、被害者は、被害状況を明らかにするための資料、例えば送金(相手に渡したお金)した事実を証明する資料、通帳や送金伝票、現金の交付が多いので引き出したことを証明できる資料、領収書、契約書などの証拠となる資料類を求められます。
結婚詐欺にかかわらず、金の貸し出しの場合にはこれらの資料等をしっかり保管しておくことが必要です。

また、相手とのやり取りがある場合には、使用したLINEやメールなどのSNSでのやり取りがわかる資料なども保管しておくことが大事です。

| 結婚詐欺の成立要件

前回説明したことの繰り返しになりますが、結婚詐欺は刑法上の詐欺罪に該当します。詐欺罪の成立要件は、次の4つです。
➤ 語網(ぎもう)行為があること     
➤ 錯誤((さくご)に陥っていること     
➤ 交付行為があったこと    
➤ 財産の移転があったこと
これら全ての要件を満たした場合に限り詐欺罪が成立します。

つまり、たとえば結婚詐欺の目的で相手にお金を貸して欲しいと頼んだとしても、相手に怪しまれて結局お金を貸してもらえなかった場合、交付行為・財産の移転は行われていないため、詐欺罪は成立しません。

ただし、この場合において結婚詐欺の未遂が成立する可能性はあります。
裁判例などをみると、結婚詐欺を遂行する過程で相手に金銭を要求した時点で、詐欺未遂罪が成立する可能性はあるということです。

|詐欺行為で人が騙され損害が発生すること

詐欺罪の成立要件のポイントは、「欺罔行為で相手が騙されて損害が発生すること」です。
結婚詐欺の場合で言えば「結婚する気が無いのに相手(こ結婚を匂わせて、結婚を期待させた上で嘘を付いて金銭を,騙し取ること」が成立要件となります。

|おわりに

いずれにしても詐欺罪が疑われた場合には、これまでの関係資料を持って警察などに相談することです。
そのうえで詐欺事件となる可能性を見極め被害届を出すことになりますし、必要であれば民事事件として返還訴訟を行うとよいでしょう。

次回は事例をいくつか示しますね。

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