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国民生活センター発表「乗車用ヘルメット‐安全性に係る規格等への適合状況と1歳未満の子どもの着用について‐」

国民生活センターは「乗車用ヘルメット‐安全性に係る規格等への適合状況と1歳未満の子どもの着用について‐」を発表しましたので一部転載します。


|ヘルメット着用義務

道路交通法の一部改正により、令和5年4月1日からすべての自転車利用者に乗車用ヘルメットの着用の努力義務が課された。
また、令和5年7月1日からは、特定小型原動機付自転車の利用者にも乗車用ヘルメットの着用の努力義務が課された。

|乗車用ヘルメットの基準

道交法を始め関係法令をみても、国内では、自転車と特定小型原動機付自転車に乗車する際に着用する乗車用ヘルメットが満たすべき安全性等に関する公的な規格基準は定められていない。

現状における自転車乗車用ヘルメットの国内市場では、国内の任意規格である一般財団法人製品安全協会が定めた基準への適合を示すSGマーク、公益財団法人日本自転車競技連盟が定めた基準への適合を示すJCFマークや、欧州の規格への適合を示すCEマークなどを表示した商品が販売されている。

一方で、いずれの規格等への適合を示すマークも表示されていない商品も販売されているのだ。

自転車と同様に着用の努力義務が課された特定小型原動機付自転車に乗車する場合にも、自転車の乗車用ヘルメットを着用することが想定される。

|安全性の確認

このほか、自転車へ同乗させることも考えられる1歳未満の子どもを対象とする乗車用ヘルメットは国内市場では販売されていないという。
ということでやや大きめな1歳児以上の年齢に適合する製品を使用する可能性もある。

そこでッ国民生活センターでは、安全性に関する規格等への適合マークが表示されていない乗車用ヘルメット(9銘柄)の性能と、1歳未満の子どもの乗車用ヘルメット着用について調査を行い、消費者に情報提供、注意喚起することとしたのだ。

|医療機関ネットワークに寄せられた事故情報

消費者庁と国民生活センターとの共同事業で、参画医療機関と医療機関ネットワークを設けて事故情報を収集している。
2018 年 4 月から 2023 年 4 月末日までに、自転車利用中に「頭部」または「顔面」をけがした事例のうち、「自転車」、「ロードバイク」、「サイクリング」、「軽車両」のいずれかの文字列を含む事例が 752 件寄せらている。以下はその中の事例である。

【事例1】 自転車で走行中、反対方向から走行してきた 2 トントラックのドアミラーと衝突し転倒し た。ヘルメットなし。左前頭部に擦過傷あり、後頭部に擦過傷あり。左下顎骨(がっこつ)骨 折あり。口唇裂創あり。 (事故発生年月:2023 年 3 月、10 歳 0 カ月・男児)

【事例2】 補助輪付き自転車で下り坂を走行中に自転車ごと転倒した。ヘルメットは着用していなか った。アスファルトで顔面を打撲して出血し嘔吐(おうと)を繰り返した。頭部 CT に異常は なく、脳振とうと診断されたが嘔吐が改善しないため、輸液を行い 2 日間入院した。 (事故発生年月:2022 年 10 月、7 歳 4 カ月・女児)

【事例3】 自転車の前席に座っていた。後ろにきょうだいが乗ろうとしたときに自転車が倒れた。止ま った状態から横向きに自転車ごと転倒してコンクリートに頭部打撲、ヘルメットはしていな かった。シートベルトは着用していた。右前額部に擦過痕あり、複数回嘔吐した。頭部打撲、 脳振とうにより 2 日間入院した。 (事故発生年月:2019 年 9 月、2 歳 8 カ月・男児)

【事例4】 自転車のカギに付けていたキーホルダーが後車輪に入り込み、コントロールを失って停車 中の自動車にぶつかった後、自転車ごと 2m ほどの溝に転落した。ヘルメットはしていなかっ た。自力で保護者に連絡後、救急搬送された。左顔面に擦過傷あり。CT では左眼窩底(ひだ りがんかてい)ふきぬけ骨折あり同日より入院。 (事故発生年月:2018 年 10 月、18 歳 3 カ月・女性)

|テスト結果(概要)

👉 規格等への適合マークが表示されていなかったヘルメットに関する調査
〇 衝撃吸収性について、9銘柄すべてで国内の任意の安全基準であるSG基準を満たしていなかった。
〇 保持装置(締結具を含むあごひも)の強さについて、9銘柄中8銘柄が国内の任意の安全基準であるSG基準を満たしていなかった。
〇 保持装置の性能(脱落しにくさ)について、9銘柄中6銘柄が国内の任意の安全基準であるSG基準を満たしていなかった。
〇 9銘柄中4銘柄でヘルメット本体に使用上の注意などの表示がみられなかった。
〇 9銘柄中7銘柄で取扱説明書などが付属していなかった。

👉 1歳未満児へのヘルメットの着用について
〇 4カ月児にヘルメットを適切に着用させることはできなかった。
〇 4カ月児をおんぶした状態でヘルメットを着用させることはできなかった。

|消費者へのアドバイス

〇 すべての自転車と特定小型原動機付自転車の利用者に、乗車用ヘルメット着用の努力義務が課されたので、安全のため着用に努める。
〇 自転車の乗車用ヘルメットは、乗車用としての安全性に係る規格等への適合が確認されている旨のマークが表示されているものを選ぶ。
※ SGマーク、JCFマーク、CEマークなど
〇 取扱説明書を読んでただしく使用する。
〇 1歳未満の子どもを安全に自転車に同乗させることは現状では困難である。別の移動方法を検討しましょう。
月齢の小さいうちは頭囲の寸法が小さいため、市販の自転車の乗車用ヘ
ルメットを適切に着用させることは困難。また、おんぶした状態ではヘルメットが背負っている者の背中や抱っこひもと干渉するため着用が不可。

|諸費生活センターの啓発資料

👉 YouTube

👉 自転車と特定小型原動機付自転車で着用が努力義務化された乗車用ヘルメット

自転車と特定小型原動機付自転車で着用が努力義務化された乗車用ヘルメット https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230712_1_lf.pdf

|おわりに

国民生活センターの資料を基に掲載したが、努力義務ではあるが、1歳未満の幼児を乗せる場合には、対象年齢の市販のヘルメットがないことから義務を果たすのが困難であること、マーク表示のない製品が衝撃吸収性がSGマーク等の基準以下であることなどが実証できた。

インターネットショッピングなどで販売されている製品には、マークの表示の無いものがあるので、購入前に確認をすることが必須。
あなたやあなたの家族の命をしっかり守ってくれる製品を使いましょう。

参考資料
国民生活センター:
自転車と特定小型原動機付自転車で着用が努力義務化された乗車用ヘルメット ‐安全性に係る規格等への適合状況と1歳未満の子どもの着用について‐
https://www.kokusen.go.jp/pdf/n-20230712_1.pdf