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歩行者優先と正しい横断の徹底に向けた取組の継続強化について

昨年(2024年)10月、警察庁は歩行者優先の意識を運転者に醸成させること、歩行者に対する交通ルールの周知などを内容とする通達を都道府県警察に向けて発出しました。その内容をひも解いてみます。


|通達の背景

○ 歩行中の交通事故死者が平成20年以降の状態別の死者で最も多い状況が続いており、その構成率にすると35%前後の横ばいの状態で推移していること。
○ 2024年8月末現在では、全交通事故死者が前年同期比で減少している中、歩行中の死者は増加している状況にあったこと。
など、歩行者の安全確保は喫緊の課題となっていることから、改めて、歩行者優先と正しい横断の徹底に向けた取組を継続的に強化していくために通達を発出したものである。

|都道府県警察が取り組む内容

各都道府県警察にあっては、歩行者の安全を確保するため、次項以下に記載した具体の通達内容に基づいて、
 運転者及び歩行者双方に対する交通安全教育や広報啓発横断歩行者等妨 
 害等に対する的確な指導取締り、交通安全施設等の整備等

を総合的かつ継続的に推進して、交通事故死者の更なる減少を図ることとした。

|本通達の内容

1.推進事項
(1) 運転者に対する交通安全教育及び指導取締りの推進
ア 安全運転意識の向上による歩行者保護の徹底
事業所等における交通安全教育や各種広報啓発において、運転者には次のような義務があり、歩行者を保護するために、これらを遵守することが重要であることを再認識させること。

横断歩道では、横断しようとする歩行者がないことが明らかな場合を除き、直前で停止可能な速度で進行しなければならず、歩行者があるときは、横断歩道の直前で一時停止し、その通行を妨げないようにしなければならない義務
横断歩道が設けられていない交差点において、横断歩行者がいるときは、
その通行を妨げてはならない義務
○ 視覚障害者を始めとする身体障害者、保護責任者が付き添わない児童・幼
児、高齢の歩行者等その通行に支障がある者の通行等を妨げてはならない
義務

また、運転免許証の更新時講習においても、
歩行者の保護に関し運転者が遵守すべき事項について説明するとともに、更新時講習等に使用する教本や地方版資料等に、これら特に周知すべき事項を分かりやすく記載するよう努めること。

イ 横断歩行者等妨害等に対する指導取締りの効果的な実施
横断歩行者の交通事故実態はもとより、横断歩行者等妨害等の違反実態や地域住 民からの取締り要望等を踏まえ、歩行者の安全確保に資する指導取締りを推進する こと。

(2) 歩行者に対する交通安全教育及び指導啓発の推進
ア 歩行者としての基本的な交通ルールの周知と自らの安全を守るための交通行動を促す交通安全教育等の推進

歩行者に対し、信号機の信号に従う義務、横断歩道がある場所付近における横断 歩道の横断義務及び歩道や路側帯の通行義務があることのほか、道路における斜め 横断や車両の直前直後横断が禁止されていることなど、歩行者としての基本的な交 通ルールの周知に加え、自らの安全を守るための交通行動として、横断歩道を横断 する際には、

○ 手を上げる・差し出す、運転者に顔を向けるなどして運転者に対して横  
  断する意思を明確に伝えること。
○ 安全を確認してから横断を始めること。
○ 横断中も周りに気を付けること。

等を促すこと。

また、交通のひんぱんな道路等において、児童・幼児に遊戯をさせたり、付き添わないで歩行させてはならない義務が保護責任者等にはあるほか、児童・幼児が通学・通園のため通行している場合や、高齢者や身体障害者等が道路を横断し、又は横断しようとしている場合には、警察官のほかその場に居合わせた者には、安全の ために必要なときは誘導を行うなど適当な措置をとる努力義務があることについても周知し、これら歩行者に対する保護意識の醸成を図ること。

イ 参加・体験・実践型の交通安全教育の実施
シミュレーター等の各種教育機材を活用するなど、参加・体験・実践型の交通安全教育を学校等の関係機関・団体と連携して積極的に実施し、横断歩道外横断や車両の直前直後横断等の危険性について理解させ、歩行者が遵守すべき交通ルールの 周知を図ること。

ウ  時代に即した手法による交通安全教育・広報啓発の推進
交通安全教育や広報啓発を実施するに当たっては、交通安全に資するアプリや動 画を活用した学習機会の提供、SNSやウェブサイト、情報提供メールを活用した 交通安全のための積極的な情報発信を行うなど時代に即した効果的な手法を積極的 に取り入れ、「正しい横断」の実践の促進に努めること。

(3)交通安全施設等の整備等
ア 道路標識・道路標示の適切な維持管理

横断歩行者の優先のためには、その前提として、横断歩道の道路標識・道路標示 が適正に設置されていることが極めて重要であることから、破損、滅失、褪色、摩耗その他の理由によりその効用が損なわれることのないよう適正な維持管理に努めること。

特に、道路標示が摩耗等により消えかかった横断歩道をそのまま放置することは、 横断歩行者を危険にさらすものであることから、「横断歩道をはじめとする道路標示 の維持管理について(通達)」(令和2年5月28日付け警察庁丁規発第61号)を参考 に、交通実態等を勘案して、摩耗率が高いものから早急に更新を行うこと。

なお、横断歩道を表示する道路標示の耐久性を向上させるなどの観点から、車両等の通行を避けて白線を配置できるよう道路標示の白線の設置間隔を拡大することを許容することとした道路標識、区画線及び道路標示に関する命令の一部を改正する命令(令和6年内閣府・国土交通省令第4号)が施行されたことから、横断歩道の道路標示の新設や更新に当たっては道路形状や交通状況等に応じた適切な白線の設置間隔を選択し、合理的な横断歩道の道路標示の設置を行うこと。

イ ゾーン30プラスの推進
生活道路におけるゾーン対策については、「生活道路の交通安全に係る新たな連携施策「ゾーン30プラス」の推進について(通達)」(令和3年8月26日付け警察庁丁第128号)により、最高速度30キロメートル毎時の区域規制と物理的デバイスとの適切な組合せにより交通安全の向上を図ろうとする区域を「ゾーン30プラス」として設定し、生活道路における人優先の安全・安心な通行空間の整備の更なる推進を図ることとしたところであり、道路管理者と緊密に連携し、地域住民及び道路利用者等の合意形成を図りながら、スムーズ横断歩道の整備をはじめ、実効性のある交通安全対策に取り組むこと。

2 推進上の留意事項
(1)季節や昼夜間の状況に応じたきめ細かな交通安全活動の展開

例えば、
○ 春には、周囲を取り巻く環境が大きく変わり、通行する道路交通環境にも不慣れな新入学児童等を始めとする児童・幼児の歩行中事故を防止するため、特に通学時間帯における活動を強化する。
○ 日没時間が早まる秋口以降は、薄暮時間帯や夜間における交通死亡事故が増加し、特に歩行中死者が増加する傾向があるため、反射材用品の着用や自動車等の早めのライト点灯、ハイビームの活用等を推進する。
○ 夜間には、飲酒を伴う路上横臥に起因する死亡事故が増加する傾向にあることから、飲酒の機会が増える時期において、この種事案防止に関する広報啓発活動を推進する。
など、季節や昼夜間の状況に応じたきめ細かな交通安全活動を展開すること。

(2) 関係機関・団体と連携した取組の推進
 対象に応じて関係機関・団体と適切な役割分担を図るとともに、交通事故発生状況を始めとする必要な情報の提供や積極的な支援を行うなどし、連携を強化すること。

 テレビ、ラジオ、新聞、広報誌(紙)、ポスター・リーフレット等各種媒体を活用して対象に応じた広報啓発活動を活発に展開するとともに、これらの各種メディアに対し、本取組を効果的に推進するための情報提供を積極的に行うこと。

(3) 受傷事故防止
交通指導取締りを始めとする街頭活動に当たっては、装備資機材を効果的に活用し、現場責任者の適切な指揮の下、受傷事故防止に万全を期すること。また、街頭活動等を共に行う関係機関・団体や交通ボランティア等の参加者の安全確保等にも十分配意すること。

|おわりに

以上のような通達が警察庁から都道府県警察に向けて出されています。
JAFの横断歩行者保護の状態を調査した結果でも昨年は53%程度とまだまだ低い状態でした。
運転者及び歩行者双方が横断歩行者保護義務などの道路交通法で定めるルールを遵守することで、交通事故の減少につながることを期待したいですね。

参考資料

https://www.npa.go.jp/laws/notification/koutuu/kouki/20241017hokousyayuusen.pdf