【掌編小説】巨大ショッピングセンター(1252字)
西塔の家からほど遠くないところに、郊外型の巨大ショッピングセンターが誕生した。かつてないほどの規模のショッピングセンターであった。西塔も行ってみようと思ったが、開店当初はものすごい混みようで、簡単に駐車場に入ることもできなかったらしい。
新開店してからしばらく過ぎた頃、西塔は家族共々そのショッピングセンターへ出かけることにした。早い時間帯に行ったが、それでもかなり駐車場への車の列は長かった。早い時間帯と言っても、そのショッピングセンターは24時間営業だ。
駐車専用の棟が売場の棟に隣接して建てられている。非常に多くの台数が駐車できるが、それでも西塔は駐車スペースをなかなか見つけることができなかった。駐車棟をあちこちぐるぐると回り、空いた場所を見つけるのに棟に入ってから20分ほどもかかってしまった。
ショッピングセンターの売場自体は全4階となっており階数は多くないが、1フロアの面積はこれまでのショッピングセンターと比較にならないほど広かった。西塔は家族といっしょにとりあえず売場探索に出た。レストランは、北海道の特産を扱った店から沖縄料理の店まで、様々な料理の店がある。もちろん、洋食の店も中華の店もある。洋服やバッグはブランド品の直営店が入っており、若い女性で賑わっている。食料品売場も半端じゃない。世界から直輸入の果物も販売されていた。これだけ大きければ、客の数も半端ではない。
歩いていると、休憩所の一画のベンチに疲れ切った様子のお父さん族がとぐろを巻いているのが目に入った。ほとんどが居眠りをしているようだ。多分、ショッピングセンターを回り疲れてしまって、家族を待っているのだろう。
西塔もさすがに疲れてきた。まだ、ショッピングセンターの全容を見てはいないが、またの機会にするということになり帰ることになった。
駐車棟も巨大だ。自分が何階に駐めたのかもはっきり記憶していない。1時間あまり探して、やっと自分の車を見つけることができた。西塔は自動車に乗り込み発進したが、今度は出口がどこかわからない。案内標識に従って運転しているのだが、同じような場所をぐるぐる回っているような気がする。仕方がないので、西塔は家族をバスで帰らせることにした。そしてもう一度、車に乗って出口を探した。しかし、やはり見つからない。ついには、もう一度車を適当な場所に駐めて、車の中で一夜を明かすことにした。
翌日も朝から出口を探し回ったが、やはり見つからない。西塔は探し回ることに疲れた。トイレにも行きたい。お腹も空いた。西塔はとりあえず、ショッピングセンターのフロアにある休憩所に向かい、そこのベンチの一つに腰掛けて休むことにした。すると、西塔と同じように疲れた顔をした男が声をかけてきた。
「あなたも駐車場から出ることができなかったんですね。ここはね、このショッピングセンターから出ることができない人達のたまり場なんですよ。」
その休憩所の一画のベンチには、疲れ切ったお父さん族の数が昨日よりもさらに増えていた。