見出し画像

【連載小説】あの時、僕は二人になった[3/10](7707字/総約8万字)

【2022年ポプラ社小説新人賞の(問答無用の)落選作】
 登場する人物および名称は、すべて架空のものであり、実在するものと一切関係有りません。
 また、差別的と感じたり公序良俗に反すると思われる記述がありましたらお知らせ下さい。

(五)

 実音が防寒用の長袖のシャツに袖を通してから視線を前に向けると、そこに倫也の姿がなかった。
「えっ、なんで?」
 ついさっきまで、二、三歩先を歩いていたはずだなのに、倫也の姿がない。後ろにいるのかと振り返ってみても、倫也は見えない。脇道にそれたのかと思って、左右をキョロキョロしてみるが、そんな脇道は見当たらない。じゃあ、もっと先に行ったのかと少し急ぎ足で歩いてみるが、先を歩く他の人の背中が見えるだけだ。通路が狭いから、体を横にしなければ前の見学者を追い越すことが出来ない所もある。しかし追い越してみても、実音の視界に倫也の姿は見えない。
 鍾乳洞の通路の地面はうねっているし、所々岩が飛び出していて天井が低い。急ぎ足で前に進むと怪我する危険がある。しかしそれでも、訳もなく不安に駆られ、実音は先を急ぐしか出来なかった。
 倫也の第一印象は最悪だった。神輿の状態を確認するために、下に潜り込んでいたというが、それを口実に人のスカートの中を覗き込んだ奴。思わず蹴ってしまったことを申し訳ないと思ったが、実音はこれでお相子あいこという気持ちの方が強かった。しかし、そんな出来事は些末であるかのように、どうしても祭りをやりたいという倫也の熱い思いが伝わってきたことは確かだ。倫也の情熱に感化された訳でもないが、神輿を修理するという非日常的なイベントは、実音にとってもそう簡単に体験できるようなことではない。だから、その話に乗っかるのも悪くはない。そんな他愛もない思いが、神輿の修理を手伝うことに実音が手を挙げた理由だった。
 実音の目に涙がにじんでいたかも知れない。何がどうして、倫也の姿が見えなくなったのか。ついさっきまでチームメイトとして共に自転車を漕ぎ、必死でいっしょに山道を登ってきた。山道を登る辛さと登り切った後の心地よい疲労感、そして爽快感、目的地に到達した達成感を共有したばかりのはずなのに。そんな相棒が急に目の前から消えてしまって、初めて足を踏み入れた地に、ひとりで残されたみたいな気がした。実音の心はとても乱され、いろいろな思いが渦巻いていた。もし、わざと置いてけぼりをされたのであれば腹が立つ。いっしょに歩くのが嫌になって先に行ってしまったのであれば、寂しい思いがする。一瞬でも掛け替えがないチームメイトと思い込んだことがバカみたいな気がする。まさか、神隠しに遭ったわけではないだろう。倫也と出会ってからまだ二日も経っていないのに、なぜこんなに心が乱れるのだろうか。
 旅行先でレンタサイクルを借りて観光施設を回り、美味しい物を片手に映える写真を撮ったり、そんなワクワクする一コマを実音は想像していた。だから、山道を自転車で登ることを軽い気持ちで口にしたのだ。しかし、実際は大違いだった。電動アシストがないとわかっても、実音は引くに引けなかった。そのコースだって、想像していたような華やかな観光地らしい景色ではなく、単なる田舎の山道、きついだけの上り坂だった。もう止めよう、車に乗せてもらおう、こんなしんどい思いはかっこ悪い、と心が折れそうになった。そんなとき、自らも疲れているだろうに、懸命に声を上げて発破をかけ続けた倫也の存在に励まされた。チームとしての一体感があった。ラクロス部というチームスポーツに身を置く者に取って、チームメイトからのエールは、これ以上ないほどの力の源だ。『あきらめたら、そこで試合終了だよ。』という名言も頭に浮かんだ。
 実音の同級生に言わせれば、キモい出会いかも知れない。でも、実音にとってはエモい出会いに思われた。
「すみません、通して下さい。」
 何度もそう言いながら、実音は奥へ奥へと急いだ。ライトに浮かび上がる、鍾乳洞の幻想的な光景も実音の目には映らない。せっかくの、それも初めて来た鍾乳洞であるのに、その美しさや幻想的な光景が実音の目に焼き付くことはなかった。ただただ、先行く人の背中ばかりを見つめながら歩いている。この背中は違う。これも違う。あっ、この背中は……。肩に手をかけ声をかける。しかし、振り向いた顔は見知らぬ人ばかりだ。
 やがて、第一洞の出口に辿りつく。奥へ進むか、この出口から出て外を探すか、実音は一瞬迷ったが、藁をもつかむ思いで先に進むことにする。ここからはさらに通路が狭く、上り勾配になっている。第二洞の出口も過ぎ、第三洞の最終出口に辿りついても、倫也を見つけることはできなかった。気温が冬並みの洞窟の中で、実音の顔は汗がしたたり落ちている。
 仕方なく実音は、最終出口から逆向きに鍾乳洞を歩くことにした。今度はゆっくり、倫也を見逃さないように、すれ違う人の顔を一人一人確かめながら落ち着いて足を進めた。横穴がないか、分岐した通路はないか、それも確認しながら進んだ。あらためて鍾乳洞の中は、幻想的な光景が続いていることに気づいた。しかし今、それに動かされるような余裕は今の実音にはない。倫也が、鍾乳洞の中の横穴に迷い込んだり、落とし穴に嵌まってしまったりしているのなら、単純に心配だ。
 出口、いや本来の入り口に辿りつく頃には、一時間を優に超える時間が経過していた。実音の目から涙が溢れていたかも知れない。ひどく気落ちしたまま、実音は入口側から鍾乳洞を出た。
 ふと見ると、倫也は元のベンチに座っていた。実音に気づくと、倫也は軽く手を挙げばつが悪そうな表情で、やあ、と言った。怒りとも不安とも安堵とも判別できない感情が、実音の心にふつふつと込み上げる。
「どこ行ってたのよ!」
「どこって……」
 言い訳をしようとした倫也の頬を、実音はひっぱたいた。
 倫也の姿が突然見えなくなったこと、その理由がわからなかったことがとても不安だったのは確かだ。しかし、昨日初めて会ったばかりの倫也に対して、なぜこんなに感情的になるのか、実音自身も理解できなかった。自転車でいっしょに山を登ってきた相棒なんだから心配するのは当然よ、と実音は心の中で自らに言い訳をした。
「ちゃんと説明してもらうわよ!」
 一時間以上もあちこちと探しまくったのだ。説明してもらう権利はある、と実音は思う。倫也は少し迷った後、
「ちょっとその前に、母さんに電話してもいいかな。」
と言って、携帯電話を耳に当てた。
「あぁ、母さん……うん、楽しくやってるよ。それより、今日の午後、どっか出かけるの?……サダムラとヤスモトってどういう知り合い?……それ、やめた方がいいよ……そんなことわかってるよ。でも、やめといた方がいい……わかってるって。でも、今日のセミナーは絶対に行かない方がいい……一生に一度のお願いってわけでもないけど……ぶっちゃけ言って、その二人やばい人たちだよ。粗悪品を高く売りつけるグループの人たちみたいだから。ネットで調べてみるといいよ……そうだなあ……息子が大怪我したみたいだから百川へ行く、とか言ってさ……今度ちゃんとデパートに付き合うから……うん、姉貴にも付き合わせる……うん、絶対付き合うから……今日、絶対だめだよ。サダムラからの電話には出ないでな。いい。絶対だよ。」
 電話を終えると、倫也は一つ大きなため息をつく。遠くを見るように焦点が定まらない視線で宙を見ている。
「電話、終わった?」
「うん、ああ。」
「じゃあ、ちゃんと事情を説明して。」
「うん……。でも、話しても信じてもらえないと思うし……」
 倫也は虚ろな目をしている。
「信じるか信じないかは、私が決めるわ!」
 実音にそう言われて、倫也は困った表情で実音を見つめた。しかし、決心したように倫也は事情を説明し始めた。

(六)

 昨日の昼にも、この世界線に跳んだばかりだ。なのに、また跳んできてしまった。跳んで来る場所は大概トモナリ倫也の病室の前。
 倫也は、あの時から二人になっていた。いや、正確に言うなら、実音と共にいる今の倫也は、二つの世界線を行き来するようになっていた。
 地震により生じた事故の現場に倫也はいた。アディクスの靴にしようと右に向かったおかげで、工事資材の下敷きになることを免れた。もしあの時、アシッダスの靴にしようとして左に足を進めていたら、崩れ落ちてきた資材の下敷きになったことだろう。
 崩れ落ちて路上に乱雑に散らばる資材を、倫也は驚愕の面持ちで見た。突然、奇妙な違和感に囚われる。胃を下から持ち上げられ空中を落ちていく感覚だった。その直後、資材のすき間から少年の手が出ているのに倫也は気がついた。その手を見て、倫也はなぜかとても心が騒いだ。まだ、他の物が落ちてくる危険があったが、倫也はその少年の所へ駆け寄る。少年の体の上に無秩序に積み重なった資材を力の限りどかし、その少年を資材の下から引っ張り出そうとした。ひどい大怪我をしていた。資材が頭にぶつかったらしく、頭から血が流れ出していた。大量の血にまみれる少年の姿は目を背けたくなるほど悲惨だった。しかし、それ以上に驚いたのは、その少年の顔姿が倫也そのものだったことだ。
 あの少年はいったい誰だったのだろうか。
 後でニュースを聞くと、その事故に巻き込まれた人は多数いたようだ。人通りの多い繁華街で起きた事故。その上、その日は倫也と同じように試験が終わって、多くの高校生が街に繰り出していた。だから、事故に巻き込まれた人の中には高校生もいた。亡くなった人もいた。あの少年と同じように、大怪我をして入院している人もいるらしい。
 その時から、突然その少年のそばに跳んでいくことが何度も生じた。いつも少年が入院している病室の前の廊下。その少年は倫也自身だった。正しく表現するなら、もう一つの世界線パラレルワールドトモナリ倫也だったのだろう。トモナリの世界線へ跳んでしまうタイミングや、何が引き金になるのかは、倫也にはさっぱりわからない。
 最初は、ただ単に夢を見ているだけだと思っていた。しかし、自分の世界線に戻ってきたとき、いつも「お前、どこに行ってた?」と質問された。トモナリの世界線に跳んでいるとき、元々の世界線に倫也は存在していないことは明らかだ。
 あの事故の時、何が起きたのだろうか。地震が起きる直前、倫也は確かにひどく迷っていた。右に行けばアディクスの店、左に行けばアシッダスの店。どちらの靴が欲しいのか、その思いに優劣を付け難かった。その迷いと地震発生とが絡み合って、「あの時、僕は二人になった」のだと倫也は思う。もう一つの世界線が生じてしまったのだろう、と倫也は想像している。それがどういう理屈なのかを理解できないが、倫也はそう確信している。右に行って難を逃れたのが倫也、そして左に行って事故に巻き込まれたのがトモナリなのだろうと。
 これまではいつも、病室に入ってトモナリを見舞った。トモナリが目を開けることはなく、怪我のために意識が戻らないままだ。命の危険からは脱しICU集中治療室から一般病棟に移っているが、いろいろとチューブがつながれたままの状態だった。
 病室では母のユキエが懸命に看病を続けている。ユキエは、倫也の母の友紀枝と何も変わらない。同じ顔、同じ声、同じ癖。しかし、倫也を倫也として認識してくれることはない。倫也とトモナリは全く同じ顔をしているはずなのに、ユキエは他人を見るような目で倫也を見る。言ってみれば、多くの人が記憶に残すことがないその他大勢に過ぎないのだろう。言ってみれば、道ですれ違った人、満員電車でたまたま乗り合わせた人、イベント会場でたまたま席が隣り合った人のような存在なのだろう。
「中之内倫也です。」
と名乗っても、ユキエは、
「はあ、そうですか。トモナリのお友だちですか。」
と訊き返すだけだ。ユキエはトモナリの友人が見舞いに来たとしか思えないようだ。この世界線のユキエにとって、『中之内倫也』と自分の息子である『ナカノウチトモナリ』とは別人に過ぎない。何回来ても、名前も顔も覚えていない。その他大勢の一人に過ぎないから仕方がないことだ。そして、倫也は仕方なくトモナリの友人として、ユキエを励ますのだった。
「大丈夫です。トモナリくんは絶対元気になります。元気になって、百川の祭りで神輿を担ぐことが出来ますよ!」
 時間があれば、トモナリの世界線を確かめたかった。倫也の世界線とどう違うのかを確認したかったが、倫也の持つスマホには圏外の文字が表示されている。だから、ネットもつながらないし電話をかけることも出来ない。写真や動画を撮ることは出来るが、スマホは情報端末として役に立たない。そしてまた残念なことには、トモナリの世界線に倫也が存在できる時間が短く、病院の玄関を出る頃には、元の世界線に戻ってしまうのが決まりのようだった。
 しかし、鍾乳洞の中で実音の前から消えてトモナリの世界線へ跳んだとき、いつもと少し違っていた。トモナリの病室の入り口の脇で、三人の女性がお互いに挨拶を交わしている。何度もお辞儀をするユキエの背中が見える。その背中越しに、ユキエと同じ年回りの二人の女性が、ユキエと同じようにお辞儀をしているのが見えた。挨拶を終えると、ユキエは倫也に気づくことなく病室に入っていった。倫也はトモナリを見舞おうかとも思ったが、二人の女性が気にかかった。倫也が知らない女性たちであったし、ユキエが病室に入った後の、二人の表情が引っかかったからだ。苦虫を噛み潰したような表情を浮かべたのだ。意識が戻らない息子を懸命に看病している母親の友人として、非常に似つかわしくない表情を浮かべたのだ。
 トモナリの病室には入らずに、倫也は二人の後に付いていった。二人がユキエとどういう知り合いかを確かめたかったからだ。ただ、どうせいつものように玄関を出る頃には自分の世界線に引き戻されるのだろう、とほとんど諦めてはいた。
 二人は病院の近くのカフェへ入り、倫也は二人の隣の席に座った。二人はオーダーを済ませると、顔を寄せ合い声を潜める。
「とっても残念ね、サダムラさん。」
「ほんとそうよ~。今日の夕方なのよ、もう……。そのために、いろいろと準備してたのにさあ。こんなんじゃ、ボスにお叱りを受けちゃうわよ。」
「まあ、しょうがないわよ。」
「ヤスモトさんはいいわよ。ヤスモトさんのお客さん、今日のセミナーには来るんでしょ。」
「でも、あの人ほどの上客じゃないから、私の儲けはそれほどでもないわ。」
「確かにねえ、あのナカノウチさんなら、雰囲気に流されそうだし、結構いろいろと買ってくれそうだったものねえ。よりによって、息子が大怪我するなんてさあ……。全く私はついてないわ。」
 二人の会話は、倫也にとってあまり気持ちがいいものではなかった。大怪我をして入院している者を気遣うのではなく、自分のビジネスの邪魔物として非難しているからだ。
 飲み物が運ばれてきた後、二人はテーブルの上にパンフレットらしき冊子を広げた。化粧品セミナー、実演即売会、などの文字が見える。栄近くのビルの貸し会議室で開かれるらしい。サダムラの方は、ユキエに代わる獲物を探すことの大変さをひとしきり嘆いていた。しばらくして二人は気を取り直し、さあ夕方の準備があるわよ、というヤスモトの言葉を先途に二人は立ち上がり、カフェを出ていく。倫也は後を付いて行こうとしたが、カフェを出たところで自分の世界線へ戻ってしまった。

「いい加減な言い訳をしているわけじゃない。別に信じてもらえなくてもいい。」
 そう言って、倫也は横目で実音を見た。驚いているのか、呆れているのか、倫也にはわからなかった。しばらく実音は、目を丸くして倫也を見ていたが、
「信じるわ。」
ときっぱりとした口調で言った。実音のその言葉は、倫也にはとても意外だった。
「まあ確かに、全面的に信用するのかと言われると、怪しい話よね。でも、私を騙しても何の得もないし、騙しているのなら、それはそれで事情があるのだろうと察することにします。」
 倫也の母、友紀枝への電話の内容も話と矛盾していない。
「それにさ、急にいなくなった……ううん、消えてしまった理由って、そんな突拍子もない話じゃないと、納得できないからね。」
 思ったよりもサバサバしている女の子だ、と倫也は思う。
「だから、今後も消えることがあるかも知れないということよね。」
「まあ、可能性はある。でも、いつ、世界線を跳ぶのかも僕にもわからない。その仕組みやルールがどうなっているのか、全くわからない。」
 そしていつ終わるのか、終わるときというのは、もしかすると最悪の状況を意味するのではないか、と想像すると倫也はたまらない気持ちになる。
「そのセミナーってのはあれよね。何だっけ……『催眠商法』とか『餌づけ商法』とか呼ばれるやつじゃない?」
「僕にはよくわからないけど、少なくともあの二人の会話を聞く限りは、母さんの友だちとは思えなかった。」
「そっか、なるほど。トモくんが大怪我した世界線では、お母さんは看病のため、そのセミナーへは行けなくなったけど、この世界線では行けない理由がないわけか。だから、電話して行かないように説得したんだ。」
 実音はとても納得したように、そっか、そっか、と言いながら何度も頷いた。
 倫也は自分の身に起こっている怪現象、パラレルワールドに迷い込んでいる自分に得も言われぬ不安を感じていた。先行きが見通せない不安を一人で抱え込み、怯えていた。家族にも言えない。話したところで、お前、夢でも見てるのじゃないのか、と言われるだけだった。
「あの病室のトモナリのベッドには、この世界線では誰が寝ているのだろうか、と考えてしまうことがある。それを知るのが恐くて、病院には行ってないんだ。」
 そんな不安を紛らわせるために、神輿を担ぎ祭りを盛り上げることに倫也は心を向けていた。
「それは行ってみるべきよ。今度、名古屋に戻ったら、病院に行って絶対に確認するべきだと思うわ。」
 実音の言う通りだろう。わからない不安があるなら、はっきりさせればいいことだ。
「それと、あっちの世界線のトモナリがこのまま死んでしまったら、今のこの僕はどうなるんだろうか、ってのもすっごく不安なんだ。」
「なるようになるよ。だって、私の目の前にいるトモくんは、元気だもん!」
 誰かにきちんと悩みを話して理解してもらえることでこんなに心が安まるものなのか、と言葉で表せないほどに倫也は安堵した。実音に話したことで、その時はその時だ、と居直ることができた。この世界線で僕は生きているんだ、と前を向くことができた。
 ベンチに座る倫也と実音の元へ、勇雄と朱莉が戻ってきた。
「あれ、お前たち、展示館は行ってないの?」
 鍾乳洞のそばには、鍾乳洞発見者のコレクションを展示した建物がある。
「うん、ちょっと……。」
 倫也は曖昧な返事しかできない。
「私は、また今度来たときに見ます!」
 実音は、笑顔で元気な声で応えた。
「じゃあ、ご飯を食べて帰りますか!」
 朱莉がそう言うと、四人は駐車場脇に並ぶ食堂に向かった。


いいなと思ったら応援しよう!

鳴島立雄
よろしければサポートお願いします! いただいたサポートはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!