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本の感想 NEO HUMAN ピーター・スコット・モーガン

作者のピーターは、元コンサルタントで、ロボット研究者で、ゲイで、ALSを患っています。AIの進む方向性について、一面を知ることができるかなと思って読んでみました。

ピーターはALSを患う前に出版していた本に、AIの進む道を2つ示していました。1つ目は、AIが高度化し人間を凌駕していくストーリー、もう一つは、人間を拡張するためにAIを使っていくというストーリー。

ALSを患ったことで、人間を拡張するためにAIを使っていくストーリーを自ら証明するため、さまざまなテクノロジーをつかって、自分をサイボーグ化していこうとします。しかし、自分が望んでもできることではないということが語られています。たとえば、飲み込む力が弱くなると見込まれていて、そのために嚥下障害で命をなくすリスクを減らすために、声帯を取って人工呼吸器をはめてしまう手術をしたい、と、ピーターが望んでも、まだ話せるうちは「健康な部分にメスを入れる」手術をしてくれる医師が見つからず、また、話せなくなってからでは麻酔を使っての手術は予見できない危険が伴うから引き受けたくないなど、「前例がないからやれない」という人たち・体制との戦いと、それを乗り越えてくれるために助けてくれる人たちとの話、そして、未来の世界の話。

すごいなと思ったのは…

・あらゆることが初めて尽くしの人生。パートナーとして法的に認められること、ALS患者としての先駆的な手術・テクノロジーの使い方を提示したことなど、すべてが初めてのため、「壁」がたくさんあるのに、ポジティブ

・サイボーグ化は、できないことを補うというよりは、それよりも生活の質が高い状態を目指している話。

・作者を支えるパートナーとがし合い、支え合う力のすごさ。

・ボイスシンセサイザー(ピーターが語ってきたことをすべて学び、ピーターが次に言いそうなことを、間を埋めるためにAIが代わりに話したり、ピーターが話しそうなことを選択肢として提示したりする機能)などのAIが学習を重ねることで、ピーターらしいAIが完成していき、それを容認するピーターのAIへの信頼。

AIの精度が上がったあと、ピーターが亡くなったら、フランシスはそのAIを残すのか、残さないのかの話

この本の中でいいなと思った部分は、

「あなたは、私たち家族のインスピレーションと希望を与えてくれいる」というALS患者の家族からの手紙。

悲しいお話ですが、ピーターさんは、2022年6月にお亡くなりになったとのこと。余命2年と言われていたところ、5年過ごされていました。「ALSは閉じ込められる病」と言われていたところに、様々な取り組みをして、ALS以外の人たちにも希望を与えていったことは、何か、思い込みすぎることはよくない、と、強く伝えられた気がしています。

自分の知らない話すぎて、読むことで自分を少し拡張できたのでは、と、思える本でした。


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