「大事にしたいのは子どもたちが持つ選択権」 多様性の時代にこそ貫きたい、フリースクールにかける想い
今回は、サイボウズの楽校のスタッフとしてカリキュラムを制作し、授業を行っている慶徳大介さんのインタビューをご紹介。
慶徳さんは、もともと東京都内の教員として社会人生活をスタートさせました。
どんな思いで教師を目指し、日々子どもたちに向き合っているのか。
そこには、経験に裏打ちされ貫いてきた”ある思い”がありました。
◾︎子どもたちの1年は重く、大切。 深く寄り添いたい
慶徳さんが教師を目指したきっかけを教えてください。
「中学3年の時の先生に憧れ、学校の先生になろうと思いました。『隠し事はするな、堂々と生きるのが大切だ』と言っていて、生きる上で何が大切かを教えてくれる先生だったんです。
最初は、自分が憧れた先生と同じ、中学校の先生になろうと思ったんですが、中学って教科ごとに担当が決まっている『教科担任制』なんです。
大切な子どもの時間の中でも特に、小学校の1年は今後の成長に関わる大切な時期。『深く一人一人に寄り添いたい』という思いがあったので『せっかくなら大きく影響を与えるところで頑張りたい』と思ったんです。」
こうして、大学院を卒業後、念願の教師となった慶徳さん。最初に配属されたのは、新宿区にある特別支援学校でした。
◾︎新米の僕を育ててくれた 特別支援学校の子どもたち
特別支援学校での日々は、今の慶徳さんを作ってくれた大切な時間だったと言います。
「肢体不自由の子たちが通う学校だったので、”話せる前提の学級経営”を学んできた僕は、最初は戸惑いました。反応が返ってくるかどうか、どんな意思表示をするかもお子さんによって異なるし、学習内容も全然違っていましたから。最初の出勤日の帰りに本屋さんに直行し、特別支援学校やそこに通う子どもたちを理解するため、たくさんの本を読み漁るところから始めました。」
最初に赴任した学校で、初めてだらけの経験に毎日奮闘していた慶徳さん。ある日、児童のトイレのお手伝いをしていたところ、保護者の方に『こんなことさせてしまってごめんね』と声をかけられたこともあったそうです。
慶徳さんは『僕自身が、子どもたちとお家の方に育ててもらったんです』と真っ直ぐな目で話してくれました。
「特別支援学校の子どもたちは、時々思いがけない行動をします。『ダメ』という言葉が通じなかったり、僕がメッセージを読み取れずに意思疎通ができなかったり、ということも多々ありました。ただこれは、彼ら彼女らが『できる選択肢で表現しているだけ』。特別支援学級に通う子だから”特別”なのではなくて、他の子と同じ、自分ができる方法で表現や意思疎通を図っているだけなんです。それを実体験として知ることができました。」
その後、小笠原諸島にある父島でも教員として働いた慶徳さん。
読み書きに困難があったり対人関係に難しさがあるなど、それぞれの課題を抱える子どもたちと日々を過ごします。その中で、いつしか既存の学校という枠を飛び出し、子どもたちが自由にのびのび過ごせる『学校経営』に関心を寄せるようになったと言います。
そして2018年より、「人生一回きりだと思って」学校を辞め、3rdschool(サードスクール)へ。現在はサイボウズの楽校のスタッフとしても活動しています。
「3rdschoolでは、教員時代よりも子どもの数が少ないので、もっと密に一人一人とコミュニケーションがとれるようになりました。どちらにも良さがありますが、不登校の子どもも増えていて、”既存の学校”に通うのが難しかったり、合わなかったりする子たちがたくさんいる中で、居場所の選択肢の1つとなれていることを、とても嬉しく感じています。
サイボウズの楽校のお話をもらった時も、僕が持っている『深く一人一人に寄り添いたい』という思いや姿勢が活かせると思うととてもワクワクしました。多様な子どもたちに出会い、一緒に学び場を作っていくことを楽しんでいきたいと思っています。」
◾︎子どもが持つ選択権を大事にしたい
最後に、サイボウズの楽校で大事にしたいことは何ですか?と尋ねました。
「サイボウズの楽校では、子どもに選択権があることを知ってほしいんです。いろんな決断や決定って、人生や学校生活の中で何度もなされていくじゃないですか。小さなことでも大きなことでも、できるだけ子どもたち自身が決める場にいて欲しいと思っています。」
中学時代に教員を志し、『深く一人一人に寄り添いたい』という思いを持って子どもたちに向き合ってきた慶徳さん。公立学校の教員として働いてきた頃から、新しい世界に飛び込んだ現在も、その信念を胸に取り組み続けていることが伝わってきました。
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