あの日のブルーハーツ。~映画『リンダリンダリンダ』~

いま凄い話題のThe Linda Lindasの存在とバンド名の由来を知ってから、映画『リンダリンダリンダ』のことを思い出しました。公開年は2005年。その当時、16年前にシネマパニック宮古島での上映に寄せて地元の新聞に投稿した文章を転載します。

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 1980年代後半、宮古島の一高校生だった。その頃、ブルーハーツというバンドがすごい人気で、周囲にはコピーバンドもたくさんいた。ボーカリストのカリスマ性もさることながら、シンプルな音とストレートな歌詞、それが私たちの心臓を撃ち抜いたのだ。


 そんなブルーハーツの曲を題材にした映画『リンダリンダリンダ』が宮古島で公開されている。主人公は女子高校生4人組。高校生活最後の文化祭を前に、仲たがいしたバンドのメンバーが新しいボーカリストを探すことになる。演奏する曲さえ決まっていなかったが、軽音楽部室の片隅の段ボール箱に詰まった80年代の資料の中から、たまたまブルーハーツのテープを見つける。誰もが知っている「リンダリンダ」。最初は特に思い入れもなく、この曲をコピーしようか、という話になるのだ。
 そんな彼女たちがたまたま声を掛けたのは、韓国からの留学生・ソン。初めて聞くブルーハーツの衝撃に思わず涙したソンは、ボーカルを引き受ける。本番まであと3日。彼女たちの猛練習が始まり、そして、次第に新しい友情が育っていく…。
 少女たちは主人公ということで、甘いお話かと思う方もいるかもしれない。しかし、この映画は違う。たいしてドラマティックなことが起こるわけでもなく、文化祭を軸に淡々と3日間の生活を描写しているだけだ。その空気感がなんとも愛おしい。夜の部室に忍び込んで、おしゃべりしながら朝を迎える主人公たち。祭のどさくさにまぎれ、好きな相手に告白する生徒。体育館の舞台で演奏するメンバーを、まぶしそうに遠巻きに見詰める生徒たち、それを見守る大人たち。誰もが、映画の中に“あの日の自分”を見つけることができるだろう。
 劇中には元スマッシング・パンプキンズのジェームス・イハの繊細なギターが流れ、映画を美しく彩っている。エンディングでブルーハーツの「終わらない歌」を聞く頃には、思わず笑みが浮かんでしまった。それから、ブルーハーツのボーカル、甲本ヒロトの実弟が軽音楽部顧問の先生役で出演しているのもファンにはお楽しみだ。


 この映画は、今年、全国の小規模映画館でスマッシュヒットを飛ばした。実は、この映画が宮古にいきますよ、と教えてくれたのは東京在住の友人だ。彼女は、配給元である会社に勤めており、思い入れを込めて関わった作品だという。また、本作品を公開しているシネマパニック宮古島支配人の下地昌伸さんの強い希望で、宮古島での上映が実現したという。この良質な青春映画を、多くの島の方々にも観てほしいと、投稿を思い立った次第。ぜひ、友人やカップル同士、あるいは親子で、映画館に足を運んでほしいです。
▽映画『リンダリンダリンダ』は、シネマパニック宮古島にて、11月上旬まで上映予定。【注:2005年当時】

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