高齢者の異常性欲は認知症の症状のひとつ

特養に入所して1年が経つ父ですが、同じユニット内の隣の女性利用者の部屋に入って全裸でその女性のベッドに入っているところを、施設の職員の方が早朝に発見したとの連絡がありました。その女性に呼ばれたから部屋に入ったとか説明しているそうですが、施設側で緊急会議が開かれ、当面の間、父は入浴以外で自分の部屋から外へ出ることができない施錠措置がとられたとのことです。

この事件を受けて、ちょうど読んでいた本に「高齢者の異常性欲は認知症の症状の一つ」と言う部分があり、父がスケベじじいになったことを悔やむのではなく、薬で治すしかない認知症という病気なのだな、と思うようにしました。

取り敢えず、特養から放出されないよう早めに薬を処方してもらうべきかと思います。自分の30年後を考えた時も、異常性欲の症状が出たらメマリーを処方してもらうよう、家族にはそうなる前に伝えておこうと思います。

法務省の「令和元年版 犯罪白書』によると、55歳以上の高齢者による性犯罪の増加が明らかになっています。

高齢者の性犯罪を「脳の働き」からひも解くと、性に対して歯止めが利かなくなる原因のひとつとして、「前頭葉の機能の低下」が挙げられます。
前頭葉には、理性を保つという重要な役割があります。
この前頭葉の機能が低下すれば、理性(=性欲)をコントロールできなくなるため、「異常性欲」の症状が出やすくなります。

性欲は、異性に対する「意欲」と解釈できるため、性に(異性に)関心を持つことは、脳の機能としては正常です。
「いつまでも若々しくありたい」
「いつまでもモテていたい」
といった感情は、扁桃体に「快」の刺激を与えるため、好ましいもののはずです。しかし、性欲が度を越えている場合は、「異常性欲」と判断します。

それまで理性的だった高齢者がセクハラ行為を働いたり、公の場で自慰行為をしたり、何十年も性交渉のなかった妻を押し倒したり、朝も昼も夜も配偶者に性交渉を求めるという症例を私は何度も診てきました。

異常性欲は認知症の症状であり、認知機能が保たれている初期段階でも出現することがあります(異常性欲は男性だけでなく、女性にも見られる症状です)。

【中略】

抗認知症薬の中には、異常性欲に効果が認められた薬があります。

「メマリー」(一般名はメマンチン塩酸塩)は、もともとは認知症の進行予防に効果のある薬ですが、患者さんの性衝動にブレーキをかける働き(イライラした感情を抑え、気持ちを穏やかにする働き)が期待できます。

80歳を超えたご婦人から、「主人の性欲が強くて困っています」と相談を受けたことがあります。認知症のご主人は、朝も昼も夜も奥様を求めてきたそうです。

さっそくメマリーを処方したところ、4週間後には性欲を訴えることはなくなりました。長年、誠実に、まじめに生きてこられた方が晩年に「異常性欲者」として扱われてしまうと、患者さんの尊厳が失われます。

どれほどの名士でも、それまで築いてきた社会的信頼や実績がなくなってしまいます。

仮に私が認知症を患い 「異常性欲」 を発症したら、家族には 「恥ずかしがらずに担当医に症状を伝え、メマリーで治療してほしい」と思います。

一生稼げる脳の作り方
長谷川 嘉哉 (著)


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