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自分は「凡人」、他人は「達人」

野村克也さんが亡くなられた。

僕は野球には全く興味がないのだけど、野村監督の言葉はなんとなく心に残っていたので、考え方を知りたくて5年前くらいにこの本を買っていました。

買っていたのですが、他にも読みたい本があり、なかなか優先度が上がらず、今に至り野村監督の訃報を知るという…。このままいくと、いつまでも読まない気がしたのでやっとこさ本を開き、そして冒頭の文章に首がもげるほど頷きました。

人が、理由なく大きく成長することはない。成長の裏には必ず理由がある。持って生まれた天性、器用さである程度のところまでいっても、大きく成長しないのは、何となく日々をおくってきたからだ。不器用な人が、不器用なままで終わってしまうのは、成長するために何が必要かを学ばなかったからだ。
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得

この本の内容は、この一文に凝縮されていると言っても良いです。

自分が本を絶えず読むようになったのはいつからだろう?
20代は全くと言っていいほど本は読んでいなかった。読んでも雑誌くらい?
今思い返すと、30代に入って仕事を誰からも教わることがなくなってからかなと思う。

それはなぜか?

会社でまだ誰も手をつけていないことをぼっちで始めたからだと思う。

同僚、上司、誰に聞いても明確な答えはない。

これはとても途方に暮れます。
まるで出口の見えない真っ暗なトンネルに入り込んだようになる。

そんな中で頼れるのは、同じ悩みを抱えながらも出口を探し出し、その人生体験を書き記してくれた「本」ということに気づくのに時間はかからなかったです。

最近自分が渇望しているのは「結果的に成長すること」だなと気づきました。

自分の知らないことは世の中に山ほどあります。
そんな答えのない状態で、自分が導き出したい成果を出すためにはどうしたら良いか?
その状態を乗り越えた時、人から称賛をいただけることがあります。
その時に初めて「成長した」と思える。
自分では成長したことはわからない。
正当な評価は他人にしてもらうことだから。
しかもそれが自分とあまり接点がない人からの言葉だと尚更だと思う。

僕はグラフィック系の専門学校卒で大学は出ていません。
会社の同僚は偏差値がとても高い大学を出ている人たちが多いです。
もちろんエンジニア8割の会社ということもあるんだろうけど、理系脳で頭の回転の速い人たちばかりなんです…。
自分はエンジニアではないので、コードを書くことはできません。
そんな環境で一緒に働いていると「自分ができることはなんだろう?」という問いかけを日常茶飯事することになる。
人は他人と比較してしまう悲しい性を持っていますが、要するに僕は「凡人」で周りは「達人」に見えるのです。

だからこそ「凡人を達人に変える77の心得」というこの本のタイトルが刺さったのかもしれない。

本を読み進めていくと野村監督も同じ悩みを抱えていたことを知ります。
え!??あの野村監督が!??ビックリすることがたくさん書いてありました。

そんな凡人の僕の心に刺さった野村監督の言葉をいくつか抜粋したいと思います。

「テーマのない努力」ほど無駄なものはない

人より努力をしたのに、結果を出せない人は多い。
正しい努力は、「練習の過程で成長するヒントを見つける」ことだ。
努力の先にあるものに価値があるのであり、努力そのものには価値はないのだ。

野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得

昭和のど真ん中を生きてきた人たちは「がむしゃらにがんばることが正しい」という考えを刷り込まれている人が山ほどいると感じます。
きっと高度経済成長期の成功体験があるからだと思いますが、現代ではそんなことは通用しません。がんばったって成果に繋がらなければ評価もされない。がんばらなくても要領の良い人が評価されることもあります。

でも努力しなければ、自分が目指したいゴールに辿り着くことはできません。

じゃあどうすればいいの??
野村監督はこうおっしゃっています。

目指したいゴールに辿り着くために必要なテーマを設定し、それらを一つ一つ解決していくことで、人は段階的に成長していく。練習をたくさんしたという努力そのものを目的にしてはいけない。時に立ち止まり、努力がゴールに辿り着けるのか考察が必要。

と。

この文章を読んだ時、ソフトウェア開発の手法であるアジャイルに繋がっているなと思いました。アジャイル開発は目指したいゴールに向かうために、何度も状況を確認するステップを踏むんですね。(アジャイル開発ってなんぞや?という人はこちらをご覧ください。開発の仕事をしていない人はお気になさらずスルーしてください。)

努力の仕方というのは、スポーツでもビジネスでも変わらない。
人間の成長過程には、段階的にちょっとずつ上がることが大事なんだと思います。

困難は「我慢する力」を育てる機会

困難に耐え続けることで、大きな武器を手に入れることができる。それは「我慢する力」である。私がプロ野球の世界で成功できた最大の要因は、この我慢する力の存在である。人より我慢できたから地道な努力を継続できた。
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得

仕事でどうしようもない困難にぶつかった時、諦めたくなりますよね。
でもその困難は成長するまたとない機会だったりします。
なので、野村監督の「我慢することで成功できた」という言葉に勇気をもらえます。

野村監督はどうやって我慢する力を持てたのか?は少年時代の家庭環境にあるとおっしゃっており、現代では考えられない戦後のお話が本の中で語られています。

若い頃の労苦というのは中年時代を迎えた時、力になるんですよね。

「なぜ自分ばっかりこんな目にあうのか」

そういう時が訪れたら、我慢する力を手に入れる時がきたと思えれば少しは前向きになれるかもしれません。そしてそこから抜け出すために、正しい努力を重ねることも大事だと思います。

夢や目標を叶えるために、現実に向き合う

「こんな仕事がしたい」「この会社に入りたい」といった夢や目標をもつことは良いことだ。しかし、その前には、自分自身の力では動かすことのできない現実が立ちはだかっていることを忘れてはならない。また、時には、何かを捨てて、何かを得ることも必要だろう。私がプロ野球選手になれたのは、「憧れの巨人軍」を捨てた結果なのだ。
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得

人は誰かに憧れ、ああなりたい、こうなりたいという思いを馳せます。
しかしロールモデルがあるところと同じ立場に立つというのは、既に前任者がいるということです。
前任者と取って代わるというのは、現実問題なかなか難しいでしょう。
一つの目標に固執することなく、自分が何になりたいのか、何をしたいのかを自問自答し、現実的な落としどころを見つけてまずはそこに立てるようにする。ステップを踏むことでなりたい自分に近づくことは、いきなりなりたい自分になることよりも難しくないと思います。

小さなことを気にすることが、大きな飛躍に繋がる

鈍感な選手の特徴は、同じ失敗を繰り返すということである。感性がにぶいから、失敗しても失敗と気づけないし、たとえ失敗したと自覚しても、なぜそれが起こったかを自己分析できない。失敗を繰り返す人間は周囲からの信頼を得ることはできない。感性を磨くには、自分自身で感性を磨こうと日々、努力するしかない。具体的には、人と会った時に自分がどのように見られているかに敏感になる、小さなミスについても同じ過ちを繰り返さないよう気をつけるなどである。
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得 

自分が壁にぶつかった時、当時の上司から言われた言葉が「周りを見よう」という言葉でした。その時の僕は自分の成果にばかりこだわっていたんですね。成果が出せないことを周りのせいにしていたこともあります。そういう気持ちは言葉や態度に表れてしまい、結果周りからの信頼を失っていました。

周りが見えていなかった。

自分のエゴを抑え、周りの人を知っていくことは、自分自身を客観的に分析することにも繋がります。
相手が何を考え、何を大事にしているのか。
一緒に仕事をしている人の気持ちを知ることは、成果に繋がる第一歩だと思います。

「現状に満足」したとたん、成長は止まる

あからさまに手を抜いているわけではないが、どこかで「これくらいやれば十分だろう」「これ以上はできない」といったブレーキを踏んでいる。その結果、その人の可能性は限定され、閉ざされてしまう。これを突破してステージを上げるには、限界をもうけないことだ。「ここまででいい」と考えず、今もっているすべての力を仕事に捧げる覚悟が必要である。
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得

限界という線引きは他人が引くものではなく、自分で引くもの。
周囲から「無理だ」「できるわけがない」といった言葉をかけられても、自分の中の情熱の炎が消えない限りは、行動に移すことができるはずと思っています。

ウォルト・ディズニーも「現状維持は後退するばかりである」と言っています。

この言葉はよく自分の中で繰り返しますね。
「現状維持は終わりの始まりだぞ」と。

「今持っているすべての力を仕事に捧げる」というのも、常に思っています。

全力を出さないでできる仕事は、あまり大変じゃないということなので、現状維持と変わらないんですよね。

昨日の自分を少しでも越えるためには、現状に満足しない。
今出せる力を最大限惜しまずに出し切る。
その気持ちが結果を引き寄せ、思い描く未来に少しずつ近づけるのだと思います。

終わりに:筆記は確実なる人をつくる

今回抜粋したのは77の心得のうち、ほんの一部です。この5つだけでも、自分のやってきたことが間違っていないという確かな道標となりましたが、それ以外にも心に刺さった金言たちがたくさんありました。このnoteを読んでもうちょっと知りたいな?と思われた方は是非手に取ってみてください。野村監督から優しく、時に厳しく背中を押された気分になります。
野村監督ありがとうございました。自分も悩みにぶつかったら、またこの本を開きたいと思います。謹んでご冥福をお祈りいたします。

最後にこのnoteを書こうと思うキッカケになった言葉を綴って終わりたいと思います。

読書は博学なる人をつくり、
会話は機敏になる人をつくり、
筆記は確実なる人をつくる
野村 克也. 凡人を達人に変える77の心得 

noteを書く。
心に思ったことを文章にするというのは、とても時間がかかる作業です。
平日は仕事をしていて時間が取れない。
休日はゲームしたいし、家事もしなきゃだし、家族との時間も過ごしたい。
だからなかなかnoteを書くという行動に起こせませんでした。

しかしこの「筆記は確実なる人をつくる」という言葉を目にした時、自分の中で一気に何かが変わりました。

自分の考えていることを言語化することは、自分の脳に考えを定着させる活動だと思えるようになったのです。
自分の中での行動規範が定まる。
行動規範が定まれば、判断に迷うシチュエーションが減ります。
咄嗟の判断や行動に繋がりやすくなるなります。
それが確実なる人ということかなと。

確実なる人になるため、一旦大好きなゲームをするのはやめましたw
さて、次は何をnoteしようかな。

最後までお読みいただき、ありがとうございました。