
災害に強いアフガニスタンに向けて
こんにちは、事務局長の小美野です。厳しい状況が続いているアフガニスタンですが、防災力向上の取り組みを続けています。アフガニスタンは、洪水や地震といった災害に何度も襲われてきた国です。政治的な不安定さが続く中、災害から命を守ることは、とても大切な課題となっています。外務省NGO連携無償資金協力で続いている取り組みから、今回は最新の成果とともに現地の状況をお伝えします。
前回の記事はこちらから▼
インフラ整備と技術の伝承
プロジェクトの大きな成果の一つは、ラグマン県のHussain Abad村に建設された500メートルの防護壁です。この防護壁は、特に暴れ川(洪水や越水が多い河川)から村を守るだけでなく、現地の地形データと洪水データに基づいた設計を実現しました。災害リスクを精査してからインフラの計画を作るというプロセスは日本人にとっては普通のことですが、アフガニスタンではまだ定着していません。実例を持って、ノウハウを広めていきたいと思っています。

さらに、災害対策の専門家育成にも大きな進展がありました。ハザードマップ作成の技術者を128名、防災インフラ計画の専門家を54名、育成することができました。QGISやリスク分析の研修を通じて、政府機関、NGO、大学の関係者の能力を大きく引き上げることに寄与できました。

教育への投資
さらに大きな達成点としては、カブール大学に防災専門の修士課程カリキュラムを設立できたことです。高等教育省からの承認も得て、驚くべきことに、市場調査では98%の人が防災修士号へ強い関心を示してくれました。これはアフガニスタンの未来を担う人材を育てるための、多くの人の努力の結晶です。

試練を乗り越えて
2024年2月に発生した豪雨災害は、大きな試練でした。以前に完成した防災インフラが損傷を受けたのです。しかし、事業チームはすぐに対応し、外務省のご理解も頂き、予算を組み替えて迅速に修復しました。

パキスタンからの強制帰還や、さらに厳しさを増す政治情勢。そんな困難な状況の中でも、現地のパートナー団体、政府機関、地域コミュニティとの強い絆により、プロジェクトは計画通りに進められました。
ともに学ぶこと
この事業が示したのは、外部から「教える」のではなく、現地の人々と「共に学ぶ」アプローチの大切さです。災害対策の知識やスキルを伝えるだけでなく、自分たちの力で課題に立ち向かう力を育んでいます。
アフガニスタンが直面する災害リスクを考えれば、この取り組みはまだ小さな一歩だと思います。しかし、これが大きな「うねり」になるように、仲間を増やし、アフガニスタンの防災力向上へ引き続き取り組んで参ります。
(文:事務局長 小美野剛)